笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「君花海棠の紅にあらず」とアニメ「天官賜福」、漢詩で「山河令」もはじめました。

君、花海棠の紅にあらず 感想 1,2,3,4話/京劇演目キャスト声優

現在放映中の中国ドラマ『君、花海棠の紅にあらず』。

このドラマのスチールは昨年によく見かけていて気になっていた。日本語訳化されないかなぁと思っていたら、折しもBS12にて週5で2021年5月19日から放送され、早速見始めると面白くてハマるハマる。今や毎晩の楽しみである。

劇中の京劇と、物語の展開がリンクしているのが、実にマニア心をくすぐり、わかる範囲で感想に付け加えてみた。京劇については全くの手探りです。劇中歌詞については、また余力のある時に追記できる……かな? 勘違いもあるやもしれませんがそこはご容赦を。

私にしては珍しく初回から録画を残しており、感想も書きためてはいたのだが、記事の情報収集の際に、ネタばれに被弾したくなくあまり動けなかった。話もだいぶ進んだので、そろそろ大丈夫かと思ったが、少々遭ってしまう……。
劇中の戯曲演目名、歌詞、中国関連と色分けしています。

原作小説

原作小説は『鬓边不是海棠红』。作者は水如天児(水如天儿)で、爱奇艺阅读で2010年12月11日~2017年4月12日まで連載されていた。全131章。長く連載されていたのね。単行本は全2巻。

ドラマ中国放送

ドラマも同名で、英語タイトルは『Winter begonia』。45分程の放送で、全49話。中国では2020年3月20日から爱奇芸で、8月7日から北京衛視で放送された。

以下、それぞれ視聴回までのネタばれとなります。主に印象に残った台詞や京劇について記していきます。

第1話 邂逅

舞台は1930年代の北平(北京)。
京劇とその後ろ楯になったパトロン主人公たちに、この時代を取り囲む背景も織り込まれるのかなと予想しながら見始める。物語もだいぶ進んでからこの1話冒頭を観ると、なんだか胸が熱くなる思いがした。

京劇会をすっぽかす商細蕊(尹正)と、商会に殴り込みをかける程鳳台(黄暁明)との対比から始まる。

商細蕊(商老板)は山東の名優。会長の宴で「梅妃の公演に、楊貴妃をぶつけてきた」と噂されている。宴をすっぽかして行った先は遊郭で、女役の色気を披露し、「寝たがるのは単なる欲情。愛したいと思うーそれが風情だ」となんとも艶っぽい発言をしている。そして『玉堂春』の蘇三の役がつかめないと話す。

一方、殴り込みをかけた程鳳台(二旦那)は、車中で化粧筆のようなのを取り出しおしろいでも塗るのかと思いきや、ワイルドに髭を剃りだした!

お屋敷で出てきた女性は二旦那の姉・程美心(劉敏)で、二旦那奥方・范湘児(佘詩曼)、笵漣(米熱)は奥方の弟。最初は姉の若いツバメかと思っていた。妹・察察児(張訳兮)は兄贔屓。程鳳台の家族関係もだいたい把握。

商老板は、蘇州刺繍の衣装を丹念にチェックしており、「梁紅玉が出征する前に甲冑がほつれると思うか?」と返している。

爆撃をかけられている平陽城郭の上で、虞美人の「四方から聞こえる楚の歌声~」と煙の中で歌う演出も魅せてくれてている。刺繍の織り込まれた美しい衣装も素敵

舞台で楊貴妃の歌詞を「月はこの島から遠ざかり」と変えて歌うと、客席は大騒ぎ。
程鳳台が肌身離さず持っているロケットの中の女性が気になる。

第1話を観た感想は、とにかく黄暁明がカッコイィ!! 新・上海グランドの許文強の生き別れた兄貴ですか?というような風貌。黄暁明は1930~40年代の雰囲気がよく似合う。少し体制とははぐれていて、でも力は持っているリーダー格、という役どころがドンピシャリでハマり役。

いっぽう、商細蕊役は仕草も妖艶でないとならないので難しい役どころだと思ったが、色気がありよきよき。

早く二人、会ってくれ~~と、二旦那が商先生の舞台を鑑賞するところで終わり。この原作はBLなのか。

1話の京劇メモ

・北平:1929年に国民党は北京を「北平」と変え、京劇も「平劇」と呼ばれていたらしい。1949年に新中国が成立し、北京に戻り、京劇と呼ばれるようになる。

・『玉春堂』:妓女・蘇三の物語。無実の罪で捕まり、裁判を受けるがその裁判長がかつて恋におちた青年で、そうとは知らない蘇三は裁判で過去を語る。その後感動の再会を果たし、無罪となり、幸せに暮らした。

・梁紅玉:『戦金山』の主人公・宋の女武者。金に攻められ、戦場に赴く。

・虞美人:梅派『覇王別姫』の項羽の妃。梅蘭芳の代表作品。魚鱗甲という虞姫の衣裳はこの作品にしか使われない。

楊貴妃:梅派『百花亭』。玄宗皇帝と楊貴妃は百花亭で花見の約束をしたが、皇帝は梅妃のところへ行ってしまった。楊貴妃は嫉妬で酒を飲み酩酊した。
楊貴妃は頭飾りが特徴的に見える。

歌詞変更:原文 冰轮离海岛,乾坤分外明,皓月当空,恰便是嫦娥离月宫。
変更後:冰轮离海岛,乾坤阴阳分外明,皓月当空,恰犹如嫦娥离月宫。


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第2話 掟破りの英雄

商老板が楊貴妃の歌詞を変えて歌ったところ、大ブーイングを受ける。

ふたりの出会いは舞台の客席。楽屋で話す様子は意外と普通な対応の商老板。なんとなく映画『覇王別姫』のレスリー・チャン演じる程蝶衣役のイメージを重ねて観ていたが、商細蕊は高圧的な権力者からの脅しに対しても淡々としており、自分が相手を怒らせたからだと冷静にとらえている太さがある。

寝室で、二旦那は洋風パジャマ、奥方は中国服と、描きわけられている。

商老版は「雲はなく風は爽やかで、花が鮮やかに咲き乱れる」と書生姿で『虞小翠』を歌っており、早速、二旦那と再会するふたり。お茶をしながら、商老板が『梅龍鎮』を演じている時に裏方が花の飾りをくれ、お礼にと二旦那にあげている。

衣装チェックで出来映えを尋ねられ、商先生が「これを受けるは恥じ入るが、拒むは不恭なり~」と京劇節で答えるのも〇。

商先生は慈善公演の演目では『二進宮』を演じる予定。寧九郎や玉魁が出ないことにガッカリしている。

奏者が飲酒したことを商先生が罵倒し、奏者は怒って帰ってしまい、二旦那が助け船を出すが、商細蕊は「美女を救う英雄の役が板についているが私は女ではない。僕も英雄だ」というのがカッコイィ。

義弟・笵漣役の道楽息子な感じも合っていて、見ていて楽しい面子。商座長の劇団の女の子・小来(李春嫒)も可愛い。

舞台前にはすね肉【醤大肘子】を所望する。上演前の役者には癖があり、玉魁はタバコ、寧九郎は白キクラゲ入りの砂糖水、原小荻は「老子」を読むとか。

おおよそのキャラは掴めるが、商細蕊だけがまだ定まらず気になる。

2話の京劇メモ

・虞小翠:徐派。『聊斎志異』の小翠の物語。狐を助けた王太常。息子・王元豊のもとに、美しい娘・虞小翠があらわれる。小翠は実は狐の子で、助けられた恩返しをする。二旦那に助けられた商老板の恩返しという意か。

・梅龍鎮:別名『遊龍戯鳳』とも言うらしい。正徳帝がお忍びで旅した折、李龍哥の家に泊り、妹・鳳姐を見そめすっかり虜となり、最後は身分と心情を明かして妃に迎えいれめでたしめでたし。
一応、帝が二旦那、鳳姐が商老板という認識でいいのかな?…と最初は思ったが、帝が商細蕊、鳳姐が名前の通りに程鳳台というがもしてきた。2021.7.12追記。

拒むは不恭:『珠帘寨』八場、李克用の唱。程敬思は沙陀国王の李克用に救援の兵を求める。

・二進宮:皇后李艶妃が政権を握るが、父の李良が権力を奪おうと企む。忠臣の徐彦昭が知らせるが皇后は聞かない。さいごは企みもわかり、忠臣たちも取り立てられる。3人の歌の掛け合いが見どころ。
皇后が商細蕊で、父が姜栄寿、忠臣は二旦那ということか?

3話 敵と味方

モノにするには10年は必要という京胡の弾き歌いをする商老板。演目は『人面桃花』で「蜂が騒ぎ蝶が舞う~」。姜栄寿(金士傑)に「奴の強情な気性が必ずや仇となる」と言われているが、大丈夫なのかな……。

金部長の前で歌いだしたのは、京劇『打厳嵩』。逃げだした商老板を二旦那が助けている。

回想曹司令官(黒子)は「もし虞美人のような女がいれば、この人生に悔いはない」とひとりごちる。専属になるよう迫られ商老板は「私の志は舞台の上です。誰の称賛もなくヤジを飛ばされても本望です」と言うのが印象的。この旦役姿がまた美しい。ここで毎回歌うよう言われていたのが『打漁殺家』。


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第1話に出てきていた奥方の従兄・常之新(遅帥)と師姉・蒋夢萍(白冰)が出てきて、常之新は「ネズミさんがランプに登り、こっそり油を舐めた」とわらべ唄を歌っている。従兄が嫁の師姉をものすごく好きというか執着を見せており、その様子を見た奥方が引いているのかと思いきや、羨ましかったご様子で……。

戯曲の「女として愛することも愛されることもない人生に何の意味が?」を口にする奥方。姉は作り話とバッサリ。そして妖艶な二旦那の姉は、曹司令官の妻だったのか!肩の毛皮がお似合いです。

二旦那の子供を祝う宴で、司令官は「秦腔」を求める。紅娘の衣装で包公を演じては笑い者と言う商老板。二旦那は奥方も司令官もコロコロと手の平で転がすが、商細蕊は転がされない。その芯の強さも魅力なのか。

映画『覇王別姫』での、レスリー・チャンの程蝶衣も芸にこだわりがあったが、彼は硝子細工のような繊細さやピュアさがあった。それをなんとなく重ねていたのだが、商細蕊は、また違ったもっと太く強靱なピュアさがあり、なんとなくカワイイ感じがしてくる。

3話の京劇メモ

人面桃花:朱琴心。歌詞のみの場面は、歌詞が物語の情景を映し出しているのかな。蜂は姜会長、蝶が商老版とか? 四字熟語にもなっており、美しい娘と桃の花咲く所で出会い、娘は男に焦がれて亡くなるが、生き返る不思議な話。

打厳嵩:麒派。賄賂政治をしていた厳嵩は、鄒応龍弾劾される。直球な表現だ。

・打漁殺家:『水滸伝』関連。侠客であった蕭恩は、いまは漁師となっているが、土豪から漁税をとりたてられる。役所に訴えるが刑に処され、土豪を皆殺しにする。

・ネズミさんがランプ:中国の童謡『小老鼠上灯台

・秦腔陝西地方の劇。

・紅娘:『西廂記』に出てくる侍女で、正義を大胆に説く場面がある。

・包公包拯とも言い、中国北宋の政治家。清廉潔白な官吏として名高く、よく物語化されている。

第4話 真実から生まれる物語

今回は商細蕊がなぜ師姉に執着するか、を二旦那に切々と訴えるの巻。

宴に師姉と夫の常之新が来ていると知り、商細蕊は急遽曲を変えて『救風塵』を歌う「この男のうわべに騙されて嫁ぐも、すぐに見捨てられなす術もない」。

激高して我を通す割には、ションボリとした様子を見せる商細蕊。
二旦那奥方は従兄夫婦を「心が通じ合っている」と羨ましいようだが、従兄の執着がコワイとしか思えないんですけど。

二旦那はせっかくの場を台無しにされ、商老板の忘れ物を届けに行く。二旦那は商細蕊を車に乗せ、人気のない山の中へ……。

商細蕊は5歳の時に売られ、師姉が親切に面倒を見てくれていた。怒っていた二旦那も、子どもの言い分のように切々と師姉の裏切りを訴える商細蕊を、興味深く思った様子。そこで映し出される青蛇(商老板)白蛇(師姉)の美しいことよ。役者でもない彼に許仙を演じさせたと。師姉は商細蕊を「細伢子」と呼ぶんだな。

商細蕊は言う「師姉は一番近い家族です」「養父に言われました。人が生きる上で最も大事なのは信頼だと」。
范張鶏黍(はんちょうけいしょ)」を述べ、「約束を果たすためなら超えられる」と話す。「嘘っぱち」と言う二旦那に「物語は真実から生まれます」と。確かに。雪が激しく降りしきっている。寒いだろうになぁ。商細蕊の剣幕に押されている二旦那も面白い。そして変わり者の商細蕊に、変わり者呼ばわりされている二旦那。

イン・ジョン(尹正)くんは、化粧をしていないとふっくらお顔なのに、京劇顔になるとものすごく端麗になるのがスゴイ。意固地だけれど筋は通っていて、面白いキャラである。しかしここからどうやって原作では二旦那が恋愛モードになるのか?

京劇や家族場面は楽しいが、軍が出てくるとああ……と思ってしまう。このダンスを踊る司令官息子・曹貴修(唐曾)がどう動くのか。

4話の京劇メモ

救風塵:崑曲。芸妓知事の息子にもらわれるが、結婚すると芸妓を顧みなくなり、芸妓の妹分が離縁状を書かせて救い出す。これは妹分が商細蕊という事ですよね、それは場がザワザワするゎ。

許仙:『白蛇伝』。白蛇と妹分の青蛇はそれぞれ白素貞青児に変身する。白素貞と許仙は夫婦となるも、許仙が言葉を軽々しく信じて裏切り離ればなれとなるが、再び相まみえる。

范張鶏黍張元伯は約束の日に、鶏ときびのご馳走を備えて待ち、范巨卿は千里を赴き約束を果たすという話。日本にもこの物語のバリエーションがあるようだ。

ドラマ『鬓边不是海棠红』の声優

そしてなんといっても素晴らしいのが、主人公ふたり俳優の声が使われているということ!(京劇パートはのぞく) 曹親子姜会長常之新もそのようですね。

范湘儿(苏柏丽)や范涟(赵毅)、察察儿(于鸣鹿)は声優さんのようです。
苏柏丽は、佘詩曼(カーメイン・シェー)の声優さんらしい。香港の女優さんの吹替をすることが多いようで、映画『花様年華』のマギー・チャン役の声もしていたのにはビックリ。


今回は4話の京劇まで一気に書きたくてまとめました。

 

 

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▼コチラでも「牡丹亭」「人面桃花」の漢詩が出てきます。

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