長安二十四時5話,6話,7話感想/李白憶秦娥,欄干に寄りかかると落ちるぞ

BS-NHKで2025年2月22日に放映された『よみがえる長安～遣唐使が見た古代中国～』。丁度タイムリーな番組だったので興味深かった。

長安の大きさが山手線より大きくその中に人口百万が住んでおり、復元図の宮殿のスケールの大きさよ。皇帝だけが通る離宮への道な夾城に、街の中央には五つの橋もあったのね。ゾロアスター教も出てきた！武恵妃の冠も精巧だが、歯ブラシの形状が今と変わらない親近感～～。

さて、ドラマは登場人物が増え続け、なにがなんやらだけど、繋がっていっているのはなんとなく感じる。

５話感想

昌明坊李記。龍波（周一囲）登場！冷酷で仕事デキます感が伝わってくる～。延州の物の受け取りが最重要事項。このブツとやらが毎回、ＥＤ前に映っているモノかしらん。
しかし街で見かけた魚腸（李媛）さんと、この魚腸さんはなんだか思っていたのと違う……ベールを被っていたからか。え？女装してたの？影で坊主頭になる演出がニクイわ。

午の六刻（午後12時半）日は中天にあり【牛日中】。

思思客は祆教（けんきょう/ゾロアスター教）の祠付近の民家で見つけられ、平康坊の妓楼でなじみ客だけに渡す札。張小敬が檀棋に伝言を頼もうとした女子とは？

工部役人 封大倫（葛兆恩）が熊火幇に、張小敬への報復を命じている。これが張小敬の上官殺しに繋がっている……と。

右相証人に関するお香の銘は降芸神香、闘志を湧かせる【金戈铁马】香りで長く消えない。この香を作る店主は20歳の聞染。王宗汜大将軍の娘 王韞秀が連れて行った。
　聞染と王韞秀が連れ立ち、こちらはこちらで軍の機密を流す熊火幇を捕えに行く模様。大丈夫か？しかし王韞秀も思っていたのと違ってガラ悪い～～。深窓の令嬢を想像してたんだけど。桑干河戦の作戦図の燃え残りというのが、聞染はこの戦に関わりのある父親がいる……おや？　やっぱり出てきた曹破延。そして聞染（王鶴潤）は『明蘭』盛華蘭、『蓮花楼』角麗谯だ。

張小敬に「年寄りみたい」と言われて、姚汝能（芦芳生）が徹夜仕事ばかりさせると言っているのがちょっとコミカル、姚汝能の家は長安では有名な笑いぐさ。姚汝能は張小敬に「34人殺し、上官の譚同寿までも手にかけた怒りとは？」と問いかけ、小説を書きたいのだと話す、ふむふむ。

妓楼の女 李香香さんも色っぽい。札の蓮の花には左から2枚目の花弁に爪の痕があり、一曲区域で蓮の図案を使う妓女の物。
　張小敬が李香香に注意した「窓の柵に寄りかかると落ちるぞ」は、右相から離れろという警告かしらと思いつつ、李白『清平調其三』の【沈香亭北倚闌干】も連想したり。この詩で欄干にもたれているのは玄宗の寵愛真っ盛りな楊貴妃。

牛の七刻（午後12時45分）。李必は右相邸を訪れる。
（つづく）

放映時間も約30分程度で最短じゃないか。
5話のＥＤは歌詞はなし。ちなみに第1話～第4話のＥＤは李白『清平楽其の一』、第2話で李必が李白をディスっていた詩で、玄宗皇帝と楊貴妃を詠ったもの。

６話感想

牛の刻日正。

張小敬は「底辺で生きている者と朝廷ではどちらが汚さで勝るかな」と平康坊へと向かう。平康坊はエキゾチックな雰囲気だけど、『風起洛陽』で言えば不良井みたいな所かな。張小敬はかつて頭領でもあったのね。

葛の旦那は神龍年間長安に売られ、次官の下人から妓楼に売られた崑崙奴（黒人奴隷）で、心を読み何を求め何を恐れるか察知することができる。おぉ、スゴい。2年で地下の長安を築きあげ、情報の対価で求められるのは己の一番大切なもの。

地下都市の主 葛の旦那登場！思いがけずジャイモン・フンスーが現れてなぜだかシリアスな緊張感が切れてしまった。半刻（15分）で情報を与えると言い、一曲の趙団児の札と話す。

駆け落ちしようとして捕えられていた書生秦征に妓女 丁瞳児（王思思）は詠う。
「玉蕭の音悲しく響き、夢から目覚め秦楼にかかる明月」。

李白（唐代）《忆秦娥》
箫声咽，秦娥梦断秦楼月。
秦楼月，年年柳色，灞陵伤别。
乐游原上清秋节，咸阳古道音尘绝。
音尘绝，西风残照，汉家陵阙。

一方龍波の元に荷物が届けられ、商人は江淮産の薄荷を渡している。「火の勢いは？」「燃え盛る」と動き出す龍波の一員たち。この商人消されそうだなと思っていたら、後半でやっぱり刺されてた。魚腸が坊主頭で殺戮するの、洋画の誰かを思い出すんだけど誰だったっけ？

一方、李必は右相の屋敷で待ちぼうけくらってる。右相の家臣から「「唐律疏議」第312条では官兵を殴ると懲役1年で兵に触れたら殴ったとみなす」って、そりゃ法律を守ってないやんか。

牛の刻はすでに過ぎ、未の初刻が近づく。

葛の旦那の条件は、張小敬が間者の名を口にすること。せっかく自ら名乗り出て殺されたのに、死に損だった間者さん。

かつて葛の旦那が育てた名妓が郭利仕の蔵の鍵を持つ男を手なずけ、男は蔵から1356個の金器を持ち出し埋めた。そもそも金器は皇家だけが使えるもの。何家村という情報を伝えられたが、存在せず全員殺された。郭利仕の汚点を掴もうと2年かけていた葛の旦那は一番の希望を失う。

ここで迫られ張小敬が苦悩するのは、張小敬にとって万年県不良人（捕吏）が大事なことが伝わってくる。小乙って妓楼から案内してくれた子？葛の旦那もショックを受けてる、息子同然として可愛がっていたのかな。小乙の父は隴右道石城鎮で戦死。小乙（郑伟）は『大宋宮詞』趙禎役。

小乙は小乙なりに世話したかったようだが、葛の旦那は言う「分かるまい、孤独な者は年を取らぬ」が沁みるわ……。

万年県不良人 林小乙と主師に挨拶、「私の成果にはご満足ですか？」と問いかけ「満足だ」に涙……。弩を放つ張小敬。優秀で忠実な配下を育てるには、配下に崇拝させ、自分のような立派な人間になれると信じさせること。うんうん、不良人の師弟関係は『繁城の殺人』でも見たよ。

小乙の目を記念としたいと言い、大切なものを守るか善人になるかの選択をせまる葛の旦那。自分の小指を詰め、小乙の骸は守った張小敬。

丁瞳児は詠う
「白日なんと短く、すぐに満ちる百年の苦。蒼穹は無限に広がり万劫は茫々たる、あまりに長くも。天公と玉女にはしかず、大笑いしては億千回」。

李白（唐代）《短歌行》
白日何短短，百年苦易满。
苍穹浩茫茫，万劫太极长。
（略）

（回想）万年県の不良人。弩の話をしている中に小乙もいる。頭領はかつて安西鉄軍の弩の名手だった。葛の旦那の間者になろうと、小指を自ら切断し、張小敬は「親にもらった体だぞ」と激昂している。

この絵の人物は誰だっけ？
（つづく）

なんなんこのエピソード（涙）。
小乙、2話分しか出ていないのに強烈な印象を残して去って行った。

７話感想

未の初刻（午後1時）昧、物事が見通せぬこと。

李必はようやく右相に謁見か……と思ったら、右相の周りには左羽林大将軍 郭英義、右羽林大将軍 安崇章、右驍衛 甘守誠将軍、御史中丞黄真、新豊県県丞吉温と揃い踏み～右相の権力が伝わってくる。そんな右相相手に交渉できる李必も強いわ。

本来、三衛を動かせるのは兵部尚書の左相 李適子だけなんだけど酩酊してるらしぃ。法を盾にとる右相は「礼は太綱、文は形式、法は本質」と言うが、李必は「陛下が重んじるのは礼か法か」と問いかけ「礼」と答えさせ、何監は金の魚袋があれば花萼楼に出入りできる所までこぎつけた！
　右相の尹铸胜、『一念関山』で礼王たちを待たせ身代金をふっかけてきた安国皇帝なので、ここでもまたか……という気になるが、体育座りしているのはナゼなの？お茶目やん。

さて一方、丁瞳児の条件は「自分達を解放し追ってこないこと」だが、葛の旦那は無情にも「ひとりだけ」と。お互いを指名して「賢者の贈り物」チックになるのね……と思っていたら、オィオィ秦さま、そりゃないやんけと、解放を目の前にすると丁瞳児は取り残され……涙涙の足抜け物語があっさり終わってもうた。

「男の言葉など信じるな、行動だけを見ろ」と葛の旦那もイイ事言うけど、やってる事がえげつないですやん。
　そして丁瞳児さん、ホントに17歳で許嫁と長安に来て、売り飛ばされていた。美人さんで頭もキレそうなのに、なぜ男を見る目がない……。
　「私は愚かかしら」に、張小敬が「違う、夢を選んだだけさ」と言うのがグッと来た。思いを断ち切った丁瞳児が、葛の旦那相手に平康坊一の屋敷までGetしてる強かさが好き。

平康坊三曲に黄色の門がある邸宅は右相府、修政坊十字街西南横丁に入り3軒目へと赴く張小敬。

張小敬に話しかけるこの女性は誰なんだろ。「長安の不良人と間者たちは小乙を売った裏切り者なので協力できない」と、万年県不良人 康友国に別れを告げられる。『風起洛陽』では主人公がずっと恨まれていたから、まぁその内真意が伝わってまた協力してくれるだろうと楽観視……でも48話もあるから大分先の話か。

靖安司を乗っ取られている所に李必が帰ってきて右相の特命をかざす。それまでは龍武軍が憎たらしかったけど、右驍衛の参軍、腹立つな。こちらは何かやらかす度に李必の罪が増えていくシステム。あぁ、時間のリミットに、罪状が加算していく物語になるのね……。

李必は檀棋を奴隷の戸籍から抜くと言うが、檀棋も選択して責任を負うと宣言！聞染が馬車で丑の正刻に長安を離れると知らせている。

この白黒映像は過去の戦場面かな。
（つづく）

小乙に続いて、丁瞳児のエピソードもなかなかにすさまじかった。
張小敬も李必もあとがない状況に追い込まれて事件を追っている。

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