笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」アニメ「魔道祖師Q」に始まり、ドラマの漢詩やグルメを記したブログ。最近は「長安二十四時」「如懿伝」「致命遊戯」「一念関山」「寧安如夢」を更新中。⇩カテゴリー選択はスマホでは左にフリックしてください。外部リンクはプロモーションを含みます。

ロングシーズン長く遠い殺人考察/タイタニックとポンヌフの恋人より読み解く

初見時の思い

全12話と中国ドラマとしては短いながら、濃厚なドラマだった~。時系列はバラバラだったけれど。

物語からしてコワイ展開になるのは想像していたので、毎回ビクビクしながら見ていたのよ。それが案外、どこかアメリカ西海岸的な乾いた色合いの映像で、また三人組のわちゃわちゃな様子に救われながら序盤、見ていた。

そして各話を見終わるとなんとなくこの世界に惹きつけられるのだけれど、1週間経つと過去篇のコワイ場面がいつ来るかと、覚悟を決めてソロリソロリと見始める、の繰り返しでしたね。

役者さんは素晴らしかったが、最後のストーリーが哀しくてしばらく見返す気になれず……。
現在の王響に思い入れていたので、やはり息子である王陽には生きていてほしかったんだ。
そうなると、なぜに今まで王陽は連絡を取らなかったんだ?とか、戸籍なしでどうするんだ?とかあるんだけど。


かなりツラくてドラマを見返すつもりもなかったのだけれど、感想めぐりをしていたら、あの蘆さんが工場が操業停止となった要因の香港人と同一人物だと分かる。え?そうなの?

おまけに李巧雲の子供が白血病で……ともあり、結構ドラマで見落としている部分があると思えてきた。


私的には王陽ママや龔彪にも生きていてほしかったので、ナゼにそのような展開になったのかつらつら考え……。
王響の元に王北がやって来た場面で、王陽ママが生きていたら、情が深いので王北を一所懸命育てただろうにと思ったのだけれど、王陽ママにはきっと王北ではダメで、王陽しかいなかった。その事がなんとなく自分の中で繋がり、ではどうして龔彪は亡くなったのか?
これは最初から見るしかないと、周回した次第。

2周目視聴して

見直すと、会話のひとつひとつに関連があり、これは2回見ないとその関係性は見えては来ないタイプのドラマ。なので配信向けのドラマではある。
 周回して、物語に散りばめられたものを拾い集め連想すると、かなりメタ的に表現されているとも思えてきて、すると自分の中のモヤモヤが昇華できてきた。


王響の名前である「名前は王響、響きの響 / 我叫王响(wáng xiǎng),响亮(xiǎng liàng)的响」が何度か繰り返されているのが印象的。
息子の王陽は詩人を志し、沈棟梁に蹂躙されてきた沈墨を助けようとして亡くなり、義子である王北は北京で絵を学ぼうとしている。王響はふたりの息子から赤いセーターを贈られており、ずっと王陽のセーターを着ていたが、沈墨を助けようとしてそのセーターは燃えてしまい、王北のセーターを身に着けるようになった。
王陽ママ 羅美素は王北に出会うことなく、王陽のあとを追って逝ってしまう。

龔彪は90年代の大卒であり、経済力はあまりないのだが、品性がありイイヤツなのだ。でも若き黄麗茄は「大人の男性が好き」と話しており、大人が何を指し示すのかはさておき、龔彪が大人かというとそうも思われず。正直、ふたりの相性は合っていなかったかな。
このふたりのカラーは黄色なのね。

その後、李巧雲はどうなったのだろう。呉先生と続いていてもおかしくはないが、なんとなく王響の感じだと、呉先生がフラれているような気もする。

 

沈棟梁の息子である沈輝、少年時代に腕を折られており、第7話でひき逃げ犯疑いで龔彪に捕えられた時の「腕に後遺症がある」には、2周目では傅衛軍たちによるあの時の……と思いながら見ていたよ。
 クジ運はイイらしいが、腕折られるし、ひき逃げ犯と疑われるし、とばっちりは受けてるよね。
 年齢的に沈墨と父親との関係については気付いていなかったのだろう。でも傅衛軍と沈輝は面識なかったのかな。一応 親戚だし以前に会っててもおかしくないのだけれど。


そして傅衛軍、初め出てきた時は近付いたらアブナいお兄さんだったのに、こんなに不憫枠になるとは……。姉弟助け合ってきたけれど、沈墨も虐待の事は言わなかったのだろう。傅衛軍が知ったら、確実に沈棟梁を手にかけただろうから。

諸悪の根源は沈棟梁なので、沈棟梁の事に気付いた馬徳勝に、沈墨のSOSが届けば良かったのだが……。そうなるには王陽は沈墨を司法の手に委ねなければならず、となると難しいのかな。しかし棟梁という名前なんだね……。

そして見て見ぬフリを続けた伯母の存在というのも大きく、傍観者の罪深さも描かれている。

馬徳勝李群、馬徳勝はペットの犬に「小李」と名付けるあたり、李局長が気になる存在ではあるんだろうね。
 馬徳勝の刑事としての執念はさすがではあるのだが、蘆さんがあの失踪した香港人と分かると、馬徳勝が局長から香港人捜査に乗り出していたら……とじれったい思いにもなった。
なにかとツラい……。

 

ドラマ自体は中国での評価が高く、また中国の晩会などを見ていると、いまだにドラマ名や俳優さんが出てくるドラマであり、見る価値はあるとは思うが、私はにはかなりツラい展開だったし、初回視聴時にはその入り組んだ作りがあざとく感じられもした。

しかり周回してそれぞれ登場人物の背景が分かると、評価が高いのもうなずけるドラマとなった。

タイタニックとの考察

そんなツラさを中和してくれたのは、ドラマに出てきた映画『タイタニックである。『タイタニック』も一度見たが、実話という事もあり見返す気になれない映画の一つ。

王陽と沈墨の最後についても、映画『タイタニック』のジャックとローズの関係を思い出せば、王陽が沈墨を助けて……なのは何となく想像できていた。

ちなみに映画『タイタニック』でも、フロイトうんぬんはローズが口にしている。

「青き美しきドナウ」は映画『タイタニック』の沈み行く時に音楽隊が演奏した音楽として流れており、2周目にはそんなイメージでドラマを見ていた。
沈むはずのないと思われていた国営鉄鋼工場の閉鎖と、沈まない船と称されていた豪華客船の沈没を重ねたのはなかなかなものである。

そして映画『タイタニック』をひもとくと、あの映画のヒロインであるローズは、借金のカタに貴族に嫁がされる絶望にいた中でジャックと出会い恋に落ち船が沈んだことで、人生を新しくやり直した話なのでもある。

タイタニック』ではそんな希望もあったローズだが、沈墨はどうだったのだろう。
なりすましてウイグルの砂工場で勤務していた、という事から、かなり厳しい状況で生きてきたことがうかがえる。そもそも名前からしローズは薔薇色を思わせるが、沈墨は墨色なのだ。正反対ではないか。

王陽がジャックならば生き残ることはかなり難しい上に、ネタばれになるので書かなかったが、第10話で王陽が破ったポスターの韓国映画グリーンフィッシュ』も、ファムファタルな女性に出会い、闇社会へと身を投じて破滅する男性の物語なのである。王陽……。

そもそも沈墨を陥れたのが同性の殷紅であったというのは、見ていてしんどかった。わりとドラマ『コールドケース』で見たパターン。そういえばこのドラマの物語はコールドケースでもあったね。

第5話で王陽と沈墨が映画『タイタニック』を見た後、タイタニックの看板と反対側には『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナアメリカ天地風雲』の看板が掲げられていた。あの映画はシリーズ作の主人公が記憶喪失になってアメリカで活躍する、という物語であったのだ。沈墨も記憶喪失にならないと、新しくやり直すことは難しかったのだろうか。

ポンヌフの恋人との考察

第11話で仏映画『ポンヌフの恋人が出てきた時に『ポンヌフ』か~!となったヒトコマ、なかなか強烈で印象深い映画なんですよね。

小凉河の橋はポンヌフの橋に似ていると記したが、あの映画でも最後、ミシェルが橋から飛び込むんですよね。映画では助かるのだけれど、それはジュリエット・ビノシュの意向で、カラックス監督は悲劇的なラストを予定していたというハナシ。

そして映画『ポンヌフの恋人』では花火が打ち上がる場面が印象的であった。王陽が沈墨に「花火を見せる」と言って、工場の煙突の炎を示していたのは、そのオマージュなのかな?と思ったり。

でもどちらかというと『ポンヌフの恋人』は龔彪への意味合いが大きいと思われる。「青き美しきドナウ」は映画『タイタニック』でも流れたが、この映画の花火の場面でも流れているのである。そしてこの花火は1989年のフランス革命200周年を記念したものなのだ。

そして黄色い服を着た龔彪が鳩を一斉に放った場面も印象的であった。鳩は中国では信義や家庭円満の象徴なのだとか。

俳優陣のビジュアルについて

俳優陣が1997,1998年と、2016年でビジュアルを変えて演じているのも圧巻である。
なんとなく2016年に親しみを感じるせいか、2016年の老けメイクの方が今現在の俳優さん達のリアルビジュアルな気がしてしまい(実際は逆)、授賞式などで登壇されているのを見かけると「おぉ、若い」なんて思ってしまうこともしばしば。女優陣には若い時の方が現在と認識して、そんな風には思わないのですけれど。

授賞式と言えば、劉奕鉄@王陽と史彭元@王北が一緒に登壇して、秦昊@龔彪が歌っているのを観た時は、感慨深かったデス。

毎回EDが変わる音楽選曲や、当時のトリビア的なものが入るのは、調べていて楽しかったドラマ。

中国レビューサイト 豆瓣での評価の高さは、このドラマはどこか時代を映し出した側面があり、この90年代から今に至るまでの中国の現代史を過ごしてきた人々の集団深層心理が呼応するドラマなのではないだろうか。

個人的には日本のドラマ『海に眠るダイヤモンド』と少し通じるものを感じていた。

メインビジュアルについて

この登場人物たちが揃っているこの集合写真。実際には会っていない王陽と王北が並んでいるのが切ないのだが、随分、沈墨と傅衛軍が離れているなぁと思ってじっと見ていたら、何となく三角形が結ばれるような気がしてきた。

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王響ー王陽ー王北
王響ー王陽ー羅美素
王響ー王北ー李巧雲
王陽ー沈墨ー傅衛軍
龔彪ー黄麗茄ー羅美素

そんな中、王響ー馬徳勝ー龔彪は直線……のように見える。


だからなんだと言われると特にそれ以上の事はないのだが、なんとなくじっと見入ってしまったので記しておきます。

 

 


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