中国名作ドラマ『明蘭~才媛の春~』がTOKYO MX1で2023年6月6日(火)から月~金に1話ずつ再放送されていた。全73話。
中国語タイトルは《知否知否應是緑肥紅痩》。
面白いドラマとは耳にしていたが、なんせ物語最初で起こる悲劇が耐えきれずに最初の方をすっ飛ばして見ていた。それでもめげずに見続け、10話過ぎてドラマの感じが掴めてからはすっかり面白くなり、所々ツラい気持ちになりつつも第20話辺りからはWOWOWオンデマンドはノーカット版だしと見始めたら、毎放送話終わりには続きが気になるようになっている!あれよあれよと見続け完走済み。
視聴しながら話がよく分からない部分が出て来たので、最初の方だけ再視聴し、気になる漢詩も調べていたドラマ。当時かなりハマり記事を書きためたままになっていたが、今回BS11で2025年11月17日(月)からドラマ『如懿伝』の後続として再放送されており、加筆しながらアップしました。
その回以降のネタばれはしていませんが、周回した感想は加えています。
1話感想
冒頭、「卯の刻だぞ。お月様がお天頭様に代わる。雪まだ解けず、衣を着込むべし/ 卯时正刻 新日换旧月 积雪未化 注意添衣」は、宋代の道士が時間を知らせるもので、卯の刻は午前5時~7時。
泣いている子が幼い明蘭かと思いきや、侍女 小桃(何昕芮)なのがニクイところ。
第1話の炭のやり取りに早速イライラしながらも、幼い明蘭(刘楚恬)もカワイイし活躍しているしと、そろりそろりと視聴を続ける。
そういえば物語は嫡女 華蘭(王鹤润)の結納式から始まっていたのね。嫁ぎ先親の袁伯爵夫妻ではなく長子 袁文純(黄宥明)が来たことに嫡母 王若弗(刘琳)が怒り心頭なのや、後ろ楯のない側室である明蘭母 衛恕意(刘希媛)が明蘭に「大奥様に気に入られれば育ててもらえる」と諭すのが、お屋敷ドラマを周回した身にはその意味がよ~~~く分かるよ。薄幸そうな刘希媛は『天地に問う』家黙ママ 柳月娥だし、イケズな袁兄は『山河令』の葉センパイじゃないの。
結納品は雁1対とあり、確かに結納品は対になってるんだね。嫡母 王若弗に挨拶をしていたのは、妹の夫の親戚で20年前は実家のお隣にいた女性。
そして頼もしい侍女 小蝶(陸妍淇)さんは、『孤城閉』董秋和じゃないの。
華蘭は投壺の件で采配を早速求められるも、あまりキレのある対応ではなく、なるほど~と思ったりする。でも家族思いな華蘭ちゃんは好きよ。大奥様(曹翠芬)は嫁ぐ華蘭に「このような面倒が何度起こるか。これからは自分で判断しなさい」と言っていた。曹翠芬は慶余年の范閑おばあさま~。
投壺は耳に入ると4点、両耳は6点、立つと10点。
勝負が決まると北風が強く吹きこんできた。北風が暗示しているものもうかがえるし、詩経にも『北風』というのもあるが、このドラマはあまり詩経は出てこなかったっけ。
若き白燁(边天扬)《玉楼春》谷野 が長子 盛長柏(银艺)と知り合ったきっかけは燕雲十六州の地形図。白燁は「十六州の奪還は朝廷の悲願だ」と話している。边天扬は《吉星高照》(ドラマ天官賜福)戚容役なのか。
明蘭母が明蘭に言う「向こうにとってかすり傷程度の痛みが、お前には体を切り裂く痛みになる」というのがね……。
2話感想
側室 林氏の娘 盛墨蘭(陶奕希)が大奥様に詠じていたのは「昨夜 閒潭に落花を夢み。哀れかな、春半家に還らず」。
張若虚(初唐)『春江花月夜』
昨夜闲潭梦落花,可怜春半不还家。夕べ、ひっそりした淵に花散る夢を見ました。ああ、春も半ばというのにまだ家に還ってきてくださらない。
川合康三「中国名詩選 中」2015年 岩波文庫
张若虚の《春江花月夜》で、張若虚はドラマの舞台でもある揚州出身の才子。なかなか興味深い段を暗唱している。
若き 盛長柏が白燁に「お互い文と武で身を立てよう」と言っているのがアツイわ。
せっかく訪れた盛紘パパ(刘钧)に明蘭ママは擂茶を入れるも、すぐに帰らせようとするのはさすがに愛想ないのでは……。擂茶は客家発祥のお茶。
侍女 小蝶が陰謀により盗っ人と疑われ、嫡母 王若弗は「家の料理人が肥えても気にするな。上前をはねても全部は盗めない/家有北厨房 别怕厨子肥」なーんて言うとるが、それは主人がしっかりしている場合なんですけどね。
「好生の徳」でなんとか小蝶の命だけは守ろうとする衛恕意。頼りになる侍女がいなくなったのは痛恨……。
3話感想
ツラい第3話は、初回時かなりすっ飛ばして見ており、見直すとこんな少年の頃から白燁こと顧廷燁は戦っていたのだなと。そしてアクション担当なのね。
白家の商売は塩業か、それは莫大な富を担う商家だ。
そして亡くなった白家当主は顧廷燁の外祖父で、相続を争っているのは白家当主の甥(庶出)白亭預(屠楠)。しかも外祖父は幼年に父を亡くし義母に養育され、一族に田畑を奪われ族譜より除名されたって、かなりひどい扱いされていた……。あとで気付いたが『秘密の皇帝』満寵だったの!?
器を割り出棺するのは直系の役目。
盛紘パパは通判で、地方長官の補佐役。県令の横にいたもんね。
明蘭母が食事の場面で明蘭に語っていた
「親は子のために長計する」。
父母之爱子女,为之计深远。
このテーマがドラマを通して描かれる。
明蘭母 衛恕意にとっては、明蘭が大奥様と暮らすことが長計。
そして明蘭母は明蘭に「生きることが何よりも大事よ」と言い、李娘子の刺繍を残す。
周回視聴して印象的だったのは屋敷の描写。お産を助けてくれる人を求めて明蘭が屋敷を出ようとするも、門は固く閉ざされまま出ることができず。
外部から顧廷燁が医者を連れてくるも開けてもらえず。
最後に中庭で倒れた明蘭を映す空撮は、四方が屋敷に取り囲まれており、家族内で起きる悲劇もうやむやにされてしまう密閉性を感じさせられた。この閉鎖的空間はまさに家庭版紫禁城。
そして母を亡くした明蘭の間近にいて、一緒に奮闘してくれたのは顧廷燁だったんだね。
この第3話、物語が進んでから戻ってちゃんと見ると結構こたえたので、初回視聴時じっくり見ていたら視聴を続けられたか疑問だわとも思う。なので私のようにドロドロが苦手ならば、この辺りすっ飛ばして見るのも一つかと。
そして今回改めてじっくり見ると、第1話で華やかな結納を描き、第3話で葬儀に出産と家にとって重要な出来事が一気に繰り出されていたのね。
4話感想
衛恕意の妹(刘晴)は交渉上手。とはいえ明蘭父も「子を養うのは父の務め」と言うべきことは言って、「養えなくなったら助けを乞う」と面白くない冗談も交えて要求をかわせる一面もありダテに官僚はしていない。しかし家主としては目先の対応過ぎてね……。
ここで分かるのは衛家は学問を修めてるけど、父が若死にしたがためにこんな境遇になっていること。それは外祖父の白家当主と同じ状況よね(第3話参照)。そしてそういう家柄だからこそ、売られてしまった衛恕意は明蘭父にもよそよそしかったんだろうなぁ。妹が嫁いだ方がもう少し上手くやれただろうけど、こういうタイプは明蘭父が苦手かな。お産の時にこの妹がいれば心強かったが、姉の衛恕意が遠慮しちゃうか……。
大奥様の侍女は明蘭父に梨の汁物を勧めている。そして大奥様の息子は腹黒い側妻の手で早死にし、盛紘の母 春氏も辛酸をなめていたと分かる。ということは、腹黒側妻は寵愛されど子はいなかったのね。
王若弗さんは王家の末娘。大奥様は明蘭を引き取ることを伝え、「子を愛する心は皆同じ」と盛紘に『孟子』を渡す。
明蘭父に会ってもらえない側妻 林噙霜(高露)《庆余年2》王夫人は、部屋に戻って物に当たる当たる。墨蘭が同じようにしたらたしなめていたのはどこへやら。というか、アナタの行動を真似してるんですね。
都へと旅立つ幼い明蘭は、青年顧廷燁にお礼の品を渡す。こうやって見ると明蘭も令嬢なんだなぁという身なり。外向きだからか大奥様に引き取られたからなのか。
大奥様が明蘭を抱きかかえて「お前を守る人は必ずいる」と言う船上の場面は、EDの初めに出てくる絵巻の一場面だね。
如蘭は「朝廷に座して道を問い、垂拱して平章す。民を愛しみ育て…」と読んでいる。
周興嗣《千字文》
坐朝问道,垂拱平章
愛育黎首
あああ、女狐劇場(林噙霜)が始まっちゃったよ。
明蘭パパは7歳まで邪悪な女に虐げられて育ち、林噙霜母子をそんな目に遭わせんと言ってるけど、そもそもその林噙霜が邪悪な女という歴史を繰り返していることに気付かないのが業というもの。衛恕意ママが明蘭パパを頼ってくれるタイプならば違ったんだろうけれど、その誇り高さがママなのでしょうがない。
都へ着いて青年 顧廷燁と青年 盛長柏が語り合う場面は癒し。
顧廷燁に抱きついてきたのは幼い廷煒か!こんなに慕われていたんだな。
朝議にて明蘭父が虫害について問われた折に、お世継ぎ問題に火がついて行き場がなくなっているのが、『孤城閉』の范仲淹と違いすぎて笑えた。コミカルで好きな場面。口火をきっていた韓章(成国栋)さんのモデルは韓琦よね。成国栋は『夢華録』闘茶していた清茗坊 胡店主~。
(つづく)
明蘭父も、大奥様も、自分の痛みを誰かに投影しているのが分かる回。
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