魔道祖師や陳情令の法器
魔道祖師や陳情令における武器や法器は、それぞれの持主のキャラクターを色濃く反映している趣がある。
今回は法器を取りあげてみる。法器は仙力を用いて効力をなすもののようで、小説では仙器と表されている。この法器はどんな経緯で生まれてきたのか、という疑問から想像をふくらませたものです。大まかな区分けなので法器ではないものも入ってます。
まずは姑蘇藍氏から。
姑蘇藍氏の禁言術
禁言術(きんげんじゅつ)は、大梵山で藍忘機が金凌にかけ、藍思追が説明してくれるので印象深く、法器ではないがまずはコチラから。間違いを犯した門弟を懲罰するためのもので、無理に話そうとすると血が出るか喉が掠れてしまうようだ。効き目は一炷香で約30分。
藍家の者にしか解き方が分からないとあり、元藍家の蘇渉は乱葬崗で解けていなかったので、世家を離れると解けなくなるのか、仙力の差で解けないのかは不明ではあるが、後者かな?
懲罰が目的とはいえ一時的に相手の自由を奪うものなので、かなり信頼関係がないと邪術に近づく恐れのある術だと思わないでもない。
魔道祖師には有り得なさそうな術も多い中、道教の本では禁呪なるものがあり、この禁言術と少し似ているようだ。
山中に修行する道士が毒蛇の攻撃を避けるために呪縛し、身動きできなくしてしまう方術である。言い換えれば金縛りの術である。相手の自由を奪う。
「道教の本」1992 学研プラス
爬虫類生物を動けなくするってスゴイ気がするが、どうやってするんだろ?
また禁呪には
気や念の力を使って対象物を金縛りにしてから、思いのままにコントロールする様を指している。
ともある。そこはかとなく、小説番外編や作者設定な藍忘機が思い浮ぶような浮ばないような……藍先生の気配を感じたので、次に進みます。
封悪乾坤袋
アニメ魔道祖師設定集の法器の欄にあったので一応書いておきます。鬼腕を入れて置いた袋で、乾坤袋は乾坤=天地という位、なんでも入っちゃう便利なシロモノ。
弦殺術
こちらは姑蘇藍氏3代目宗主の藍翼が編み出したもので、7弦が一瞬で1本の長い弦となり、容易く骨肉を断ち切ることができる。物語では屠戮玄武と戦う場面が見どころ。
『陳情令』での藍翼は、若い忘羨の前に現れた心意気のある女宗主であったが、『魔道祖師』の藍翼がこの弦殺術を編み出したのは、異分子を暗殺するためとあるのだ。なかなか物騒なエピソードが発端なのね……。なれどそのために、姑蘇藍氏の秘技の中で最も殺傷力が高いともある。
問霊
そして大事な「問霊(もんれい)」。
姑蘇藍氏の先人が作った名曲で、「問霊」は亡者に問いを発して、亡者の身元確認に多く使われ、媒介がない状況でも使うことができる。招いた霊は黙秘はできるが、絶対に嘘はつけない。
これは藍忘機や藍思追が用いていた。藍曦臣も精通しているとは思うが、問霊は藍忘機の十八番というイメージがある。
他にも「招魂」という死者の体や愛用品を媒介として亡霊を召喚するものや、「安息」は鎮静し、「清心音」「洗華」は心を清め気を静める効果がある、東瀛より伝わった「乱魄抄」は演奏時に霊力を込めると人に害をもたらすことができる秘曲。
この問霊は姑蘇藍氏の先人が作っており、となると行方知れずで亡くなってしまった人を見つけ出したかったか、大切な人に先立たれ亡き人に尋ねたいと作りだされたのだろうか?
この問霊、物語の祭刀堂では「知らない」を繰り返し、一問三不知にもちなんでいるのが面白く便利だなと思っていたが、義城 阿箐の場面で魏無羨は共情に切替えており、意外と使いこなすには難しいものだと思った。
基本的に聞いた事に短くしか答えてくれないので、質問が曖昧であると欲しい答えが得られないのだ。
それはまるで語学がおぼつかない中や自分が求めているものが何かわからないまま、相手と折衝しなければならないのに似ている。相手の質問が的確で、こちらが求めている情報を巧みに提供してくれれば実に良い。しかしなかなかそうもいかない。
つっけんどんに対応されると話はそこで止まるので解決しないのはもちろん、熱心に接してくれるだけでもズレてしまい、時間だけが過ぎ振り出しに戻る事になる。語学力や表現力が堪能ならば共情並みに説明できるだろうが、おぼつかないやり取りはまさに問霊のようになる。
YesNoがハッキリしており、短くしか答えない藍忘機が、問霊を得意とするのもなんとなく納得できる気がする。藍忘機が応対してくれたら、きっと的確に解決に導いてくれるにちがいない。
そしてそれが如実に表われていたのが、酔っぱらった藍忘機に対する魏無羨の質問である。普段の藍忘機は、強靱な弦のような理性で諸々を抑え込んでいるが、酔っぱらった時の藍忘機は本音がもれでるのが何ともいえず魅力的でもある。そしてもちろん嘘はつかない。そう、あの一問一答は、ある意味魏無羨による藍忘機への問霊に見えるのだ。
原作小説第一巻では、魏無羨が自分を指すと、「私のもの」「欲しい」と言われ、魏無羨はドキマギしながらも避塵のことだと勘違いする。陳情令では36話、藍忘機は「悔いがある」と答えて切なくなる場面であった。
でも小説では藍忘機の答えを、魏無羨はきちんと理解できずに誤解しており、全部わかっている読者にはそのズレがもどかしくも面白くもあった。
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