小説天官賜福第3巻が2024年4月15日(月)に発売となった。
第3巻発売が当初よりも延期され、4月25日発売だと思いこんでいたら、11日(木)頃に都内では店頭で販売している様子がうかがえ、勘違いしていた事に気付いたよ。一瞬、5月31日から始まるアニメイト「天官賜福貳」フェアのポスカ狙いも考えたが、結局待ちきれずお買いあげ。通常版は2050円+税。
表紙は水中で抱き合う太子殿下と花城、帯はピンク色で「千万の詩より、雄弁な口づけ」というコピーから、そういう場面があるのねと類推。
サイズは 128×188×24mmで408ページ。第1巻は410ページ、第2巻は432ページ。挿絵はなし。第3巻は第六十七章 銅炉山重開萬鬼躁まで。
著者:墨香銅臭
装画:日出的小太陽
訳者:鄭穎馨
レーベル:ダリアシリーズユニ
発行:フロンティアワークス
各章ごとの気になった箇所のメモと感想を記しています。今回、読み進めた分までのネタばれと、『魔道祖師』との関連付けもあります。でも前半はさほどネタばれにはならないのよね。
第四十章
人面疫の解決法が見つからない中、慕情がどえらい解決法(永安人だけに感染する人面疫を引き起こす、平民に)を提案してきた。そういうタイプだったのか。謝憐は「呪いは人を傷つけ自分も傷つける諸刃の剣」と諫める。
風信が慕情に「隙あらば説教したいだけ」と言っており、おぉぉ~、魏無羨@魔道祖師も似たような事を言っていた気がするんだけど。風信が「殿下がどんなやり方を選ぼうと尊重しろ」と言っているのが、風信……という思いになったよ。
うわ、出たよ、戚容。
倒れかかる天塔を、金の太子像が支えるとは、スゴい光景だ。
第2巻最後は人面疫のあたりだったなぁと読み始めるが、記憶も結構曖昧になっており、これが過去編だった事にようやく気付く。
第2巻発売の時も第1巻を読み返した方が良かったと思ったが、アニメ2期もあったし覚えているだろうと思ってしまった、あんまし反省は生かされないものだわね。
第四十一章
謝憐が人面疫の患者たちから「最初から手を出すな、助けるんだったら最後まで助けろよ」と責められているのがツラい。
そしてこんな苦しい状況の謝憐が目にするのは、少年が心を込めて描いた太子悦神図というのがヨイよね。そして少年は「立派で誰にも負けない宮殿を建てます」と宣言するのだ。太子殿下に聞こえてるよ~。
そして少年は叫ぶ、「俺はあなたのことを永遠に忘れたりなんかしない」。
アニメ『天官賜福貳』最終回最後で流れた言葉「殿下!忘れない。僕は忘れない。永遠にあなたのことは忘れないから!」はここから来ていたのね。
第三章 百無禁忌
第四十二章
現在へ。谷子の父親に取り憑いているので、谷子に慕われている戚容……。
半月を救うために漬物壺に潜んでいた風師こと師青玄!裴茗を漬物まみれにするとはなかなかやりおる。
裴茗の不肖の子孫がもうひとり。その補佐神は雨師の旧跡でやらかして、流刑にされている。信徒のいなくなった神官は再起不能になり、人界に長くいるとすり減ってしまうのだとか。
中秋宴の目玉の「闘灯」は、神官の信徒達が祈福長命灯を奉納して競い合い、例年、トップの座は神武殿。
謝憐は仙京へと出かける。白玉京とは仙京を指している。
「天上に白玉京あり、十二の楼閣と五つの町あり、仙人が我が頭上を撫で、髪を結い上げ不老長寿の祝福を授かる」は
李白の詩『経乱離後天恩流夜郎憶旧遊書懐贈江夏韋太守良宰』。安史の乱時、李白が永王璘の叛軍に加わった罪で夜郎の地に流されたときのことを、後年述懐して、江夏の韋太守良宰に贈ったもの。李白の最も長い詞で、一応全文載せておきます。
全唐詩 卷一百七十
李白《经乱离后天恩流夜郎忆旧游书怀赠江夏韦太守良宰》
天上白玉京,十二楼五城。仙人抚我顶,结发受长生。
误逐世间乐,颇穷理乱情。九十六圣君,浮云挂空名。天地赌一掷,未能忘战争。试涉霸王略,将期轩冕荣。时命乃大谬,弃之海上行。学剑翻自哂,为文竟何成。剑非万人敌,文窃四海声。儿戏不足道,五噫出西京。临当欲去时,慷慨泪沾缨。叹君倜傥才,标举冠群英。开筵引祖帐,慰此远徂征。鞍马若浮云,送余骠骑亭。歌钟不尽意,白日落昆明。十月到幽州,戈鋋若罗星。君王弃北海,扫地借长鲸。呼吸走百川,燕然可摧倾。心知不得语,却欲栖蓬瀛。弯弧惧天狼,挟矢不敢张。揽涕黄金台,呼天哭昭王。无人贵骏骨,騄耳空腾骧。乐毅倘再生,于今亦奔亡。蹉跎不得意,驱马还贵乡。逢君听弦歌,肃穆坐华堂。百里独太古,陶然卧羲皇。征乐昌乐馆,开筵列壶觞。贤豪间青娥,对烛俨成行。醉舞纷绮席,清歌绕飞梁。欢娱未终朝,秩满归咸阳。祖道拥万人,供帐遥相望。一别隔千里,荣枯异炎凉。炎凉几度改,九土中横溃。汉甲连胡兵,沙尘暗云海。草木摇杀气,星辰无光彩。白骨成丘山,苍生竟何罪。函关壮帝居,国命悬哥舒。长戟三十万,开门纳凶渠。公卿如犬羊,忠谠醢与菹。二圣出游豫,两京遂丘墟。帝子许专征,秉旄控强楚。节制非桓文,军师拥熊虎。人心失去就,贼势腾风雨。惟君固房陵,诚节冠终古。仆卧香炉顶,餐霞漱瑶泉。门开九江转,枕下五湖连。半夜水军来,浔阳满旌旃。空名适自误,迫胁上楼船。徒赐五百金,弃之若浮烟。辞官不受赏,翻谪夜郎天。夜郎万里道,西上令人老。扫荡六合清,仍为负霜草。日月无偏照,何由诉苍昊。良牧称神明,深仁恤交道。一忝青云客,三登黄鹤楼。顾惭祢处士,虚对鹦鹉洲。樊山霸气尽,寥落天地秋。江带峨眉雪,川横三峡流。万舸此中来,连帆过扬州。
送此万里目,旷然散我愁。纱窗倚天开,水树绿如发。窥日畏衔山,促酒喜得月。吴娃与越艳,窈窕夸铅红。呼来上云梯,含笑出帘栊。对客小垂手,罗衣舞春风。宾跪请休息,主人情未极。览君荆山作,江鲍堪动色。清水出芙蓉,天然去雕饰。逸兴横素襟,无时不招寻。朱门拥虎士,列戟何森森。剪凿竹石开,萦流涨清深。登台坐水阁,吐论多英音。片辞贵白璧,一诺轻黄金。谓我不愧君,青鸟明丹心。五色云间鹊,飞鸣天上来。传闻赦书至,却放夜郎回。暖气变寒谷,炎烟生死灰。君登凤池去,忽弃贾生才。桀犬尚吠尧,匈奴笑千秋。中夜四五叹,常为大国忧。旌旆夹两山,黄河当中流。连鸡不得进,饮马空夷犹。安得羿善射,一箭落旄头。
天界にも目に見えない序列というものはあり、ひっそり遠慮していた謝憐は、風師に呼ばれて見張らしの良い所へ招かれている。
卓を指で軽く叩いている黒衣の文官は霊文の男相。傲慢さと軽薄さが満ち溢れた水横天こと水師 師無渡。
君吾が渡した酒をこぼさないように皆で回していく遊戯は撃鼓伝花。相手をからかう行為なので、親しくないと渡せない……。
裴将軍の戯曲は、裴茗が「傑卿」(霊文の本名である南宮傑)と呼びかけているようだが、霊文は作り話と一蹴。
神官を剣でこっそり刺すという戯曲に怒り出したのは、奇英殿下で、西方武神の権一真。彫りが深く鼻の高い18,9歳の黒髪の少年がそうだったのね。自分の信徒を殴る神官は珍しいらしい。
第四十三章
思いもかけず明儀から酒杯を渡された謝憐。演じられた戯曲は『半月国奇遊記』な謝憐と紅衣な花城。「いささか親密すぎるふたり」と、ちゃんと「後ろにいる召使い(南風と扶揺」がいて再現度が高いのがイイよね。『魔道祖師』の子供たちによる射日の征戦ごっこを思い出す場面。
師無渡が弟である師青玄に言う「法力が高い上に下心のある輩に出くわしたらどうするんだ!」の言葉よ……。
空に浮かぶ長命灯の光。推し活のファン投票を思わせるような展開なのだ。
神武殿:961本
雨師:1本(牛が奉納)
奇英殿:421本
地師殿:444本
風師殿:523本
霊文殿:536本
南陽殿:572本(競い合う)
玄真殿:573本(競い合う)
明光殿:580本
水師殿:780本
千灯観:3000本(太子殿下に)
「美しい景色は心の中にある。だから他人に興ざめなことを言われてももう平気だ」と謝憐が思うのが印象的。
第四十四章
富商の妻のお腹には、黒煙の塊がいた。胎霊に返事をすると、母子の許可をした事になり、取り憑かれるのだとか。
謝憐、剣を吞み込む大道芸もできるのね……。などと思っていたら、
「氷のように冷たくて柔らかい何かが謝憐の唇を塞いだ」!!
第四十五章
水から上がった花城は、前よりも1,2歳成長し、眩しいほどの美しさになっていた。動揺する謝憐がカワイイ。国師から教わったのは女除けの方法だけで、「男除け」の方法は教わらなかったから、ってなんだその自分ツッコミ。花城まで「三郎の方こそ謝らないと」と自分を三郎呼びしてるし、鬼たちも「俺たちが押さえときますから」って、なんだその鬼王に向かって手伝う気満々なカンジ~。
花城の「少し痛いかもしれない」「怖がらないで」は、実際は謝憐の足の手当てをしているんだけど、ちょっと含みのある言葉掛け……。
第四十六章
千灯観は花城が建てていた!
鬼市の風景の中で、千の灯に煌めく宮観、明るい天界に建つ荘厳な宮殿とはまた違った光景であろうと想像が膨らむ。
花城と謝憐のお習字。
手に手を取って、中国ドラマでよく見る主人公カップルな場面。
花城「滄海を知ればよその水にもう魅力はない。巫山を知ればよそで見る雲はもう雲とは呼べない」
謝憐「次々に咲く花など振り返る気にもならない。その理由の半分は修行の身であるから、もう半分は君が心の中にいるからだ」
双方、告白ですか。
元稹『離思五首』《离思五首•其四》
自爱残妆晓镜中,环钗漫篸绿丝丛。
须臾日射胭脂颊,一朵红苏旋欲融。山泉散漫绕阶流,万树桃花映小楼。
闲读道书慵未起,水晶帘下看梳头。红罗著压逐时新,吉了花纱嫩麴尘。
第一莫嫌材地弱,些些纰缦最宜人。曾经沧海难为水,除却巫山不是云。
取次花丛懒回顾,半缘修道半缘君。寻常百种花齐发,偏摘梨花与白人。
今日江头两三树,可怜和叶度残春。
該当部分は太文字の『其四』なのだが、『其二』で道教の本を読んでいるくだりが出てきて、『其五』でその面差しに似た白い梨の花ばかりを摘んだとあるのが面白い。ここで「梨 lí」なのは、題名の「離 lí」に掛けているのかな。
巫山の雲は、宋玉の『高唐賦』で楚の懐王が巫山の神女と契ったことを指し、他の女性など目に入らないことを詠っている。
第四十七章
謝憐は一本の小さな花に目を留め、「香りが体に染み渡るように爽やかだから、昔からすごく好きなんだ」と言い、地雨探花の花はこの花のことらしい。
地獄坊に火をつけて胎霊を盗んだのは蘭菖だった。鬼市で謝憐と絡んだ女の鬼で、神官だけが身に着けられる金腰帯を締めている。裴茗が父親だと皆に疑われる様子がオモシロイ。そして相手は「あんた(謝憐)」と言われてしまった。
第四十八章
そしてこんなタイミングで「口づけをしたことはないでしょう」と訊かれてしまう謝憐の間の悪さ。
剣「艶貞」は童子の血ならば跡が残らずって、君吾、なに用の剣なので?この刀剣男子がいたら、どんな剣士になるの? そういえば『魔道祖師 番外編 奪門』でも陽の気の旺盛な童子に番をしてもらう、というのがあったな。あれは童子ではない(藍忘機)のを童子と思われたケースだったけれど……。
蘭菖は慕情を知っている可能性があり、風信は慕情に気をつけるよう、謝憐に忠告する。
第四十九章
湾刀ちゃん、再び震えてるよ。そしてナゼか白菜切りしてるよ。褒められて喜んでるよ。平和だ。若邪は若邪で、薪が得意。そんな中、芳心は微動だにせず。なに、この可愛いの。法宝たちの大道芸だけで、食べていけるのでは……。
謝憐の料理が、戚容には恐怖で本気でビビっている様子なのが愉しい。花城が顔色一つ変えずに食べている様子に、あの戚容が「さすが絶!」と思っているのにも和む。
第五十章
料理名は「百年好合羹」。実際中国にある料理で、緑豆・キクラゲ・ユリ・クコ・氷砂糖を用いて煮た甘い料理……だが、この場面でそうなのかは不明。
第五十一章
謝憐の料理を食べた明儀と師青玄の反応が……。
師青玄は謝憐に白話仙人の相談をしに来ていた。
喜んでいる時に現われ、呪いをかける存在で、対処法は、一切無視して慶事をたくさん起こして聞いたことは忘れてどんどん歩んでいくことと伝える謝憐。SNSで言うところのク○リプ対処みたいなもんでしょうか。しかし謝憐ほどの疫病神だと、白話仙人の方が逃げだしてしまったらしい。
第五十二章
師青玄は赤子の時に「善き始まりなくして、善き終わりなし」と白話真仙に狙われてしまっていた。自分の心の「失う」ことへの恐怖に敗れたものは悲惨な末路を辿ったが、真の帝王は天子の気が身を守っていて、邪崇は容易に侵入できない。巻物は間違いだらけで、白話真仙が目につけた獲物は根絶やしにすると話す花城。
花城は他人から攻撃されれば同じようにやり返す。明儀が放った一撃は、風水殿の扁額を真っ二つに割っていた。
「垢抜けたい男は黒を着ろ」な言葉通り、爽やかな黒衣に着替えた花城は、名門の美しすぎる聡明な弟子のようになっている。謝憐の口令は「道徳教を千回暗唱すればいい」とそのまんまの言葉。随便@魔道祖師みたいな言い方ね。
博古鎮の社火は、誰かをたたえる記念日に催される娯楽。
第五十三章
中でも血社火は、芝居は血生臭くて猟奇的、化粧の技術も秘伝な幽霊行列のような見せ物。殺戮や流血沙汰は人を興奮させ、快感が芽生えるもので、扎快活と呼ばれ、人々の心の奥底には殺戮への渇望があると謝憐は思う。
ここで演じられているのは、地元の伝説的な人物である賀書生の物語で、才能あふれていたがとにかく運だけはものすごく悪い人物であった。東瀛には『橋姫』という鬼怪がいて、女性の怨念が凝縮して生まれたと話す謝憐。
先日記したブログ記事「青灯夜游と秉燭夜遊」で、「頭上に蝋燭」は丑の刻参りを思わせると思ったのだが、橋姫はそのルーツでもあるのでここが由来だったのかな。髭切に退治してもらうとかかしら~。
賽で負け相手の服を脱がすようにと、師青玄に言われる謝憐と花城。突然、始まった野球拳……? 最も苦しいことを師青玄に問われた花城は「愛する人が踏みにじられているのに、どうすることもできず無力なんだと思い知らされること」と話す。
生涯において最も後悔したことを明儀に問われ、「二度目の飛昇」と答える謝憐。二度目の飛昇でなにがあったんだ??
明儀を疑い、白話仙人は口を開けば三言のうち一言は必ず嘘をつく法則にのっとり、質問する謝憐。
花城に法力を借りると、体中の血が電流となって体内をビリビリと流れるものだったらしい。移魂大法は、魂を入れ替え自分の目で相手が見ているものを見ることができる法術。共情@魔道祖師みたいな感じ?
風師は長命鎖・珠飾りの帯・瑪瑙の指輪・真珠・檀木・払子の毛などの宝物を身に着けている。『宝石の国』を読んでいるから、「法華経の七宝」かしらと思ったけれど、そうでもないか。
かつて飛昇した傾酒台にやって来た師青玄。
(後半につづく)
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