笛の音と琴の調べ

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如懿伝1話~20話/漢詩 白居易 井底引銀瓶,懿徳,二十四孝,劉禹錫 浪淘沙,涉江采芙蓉,天道,読項羽紀

中国ドラマ『如懿伝~紫禁城に散る宿命の王妃~』が2024年9月2日よりWOWOWにて毎月~木1話放送で始まった。全87話

清の乾隆帝の時代、『瓔珞』ではヒロインと対峙していた嫻妃が主役のドラマであり、この作品も名作の呼び声が高い。
とはいえ、瓔珞のような出世サクセスストーリーとは異なり、最期も分かっていることからなんとなく視聴が億劫になっていたが、『宮廷の諍い女』で宮廷後宮モノへの免疫が高まり、WOWOWでノーカット版という事もあり視聴開始。最初の方は漢詩に注目していたけれど、段々面白くなってきています。
漢詩を中心にメモしてます。

2話

初めて会った頃、あの日は一緒に「墙頭馬上」を見たと青桜に言う弘歴
墙頭馬上 はるかに相顧み、一見 知る君が腸を断つを」。
元曲四大家、白朴の杂剧《裴少俊墙头马上》。

白居易(唐代)《井底引银瓶》
妾弄青梅凭短墙,君骑白马傍垂杨。
墙头马上遥相顾,一见知君即断肠

3話

弘歴は富察皇后に養心殿の由来を尋ねて語る。
父(雍正帝)が好んだ『孟子』の「養心は寡欲こそ最善」。
「欲を減らし心を養うことで人は成長する。いざこざが起こらぬよう束ねてほしい」と言う。

孟子 尽心章句下》
孟子曰:“养心莫善于寡欲。其为人也寡欲,虽有不存焉者,寡矣;其为人也多欲,虽有存焉者,寡矣。

4話

弘歴の部屋の壁には花瓶が飾られている。親孝行な老莱子(ろうらいし)の話が書かれた花瓶を指す青桜。「『二十四孝』の第1編は閔子騫(びんしけん)の話」と言うと、弘歴は「徳の高い舜帝の話」と言う。「百善の中で孝を第一とし、上に立つ者がその模範を示す」。

老莱子は孝行のため、70歳になっても子供のような振る舞いをして親孝行したとか。長生きな家系だね。
閔子騫は実子ばかりを可愛がる継母をかばう話。青桜の継母と言えば皇太后か?
は家族に孝行を尽くし、堯はそれに感心して娘を嫁がせ天子とならせた。コチラの堯も皇太后かしら。

太后は青桜を如懿と名付ける。懿徳であり意味は「静かなる美」。
後漢書』の鍾晧(しょうこう)の故事。「この世で最上の美は愛する者と過ごす日々。静は動を制する、静であれば平安でいられる」。

《后汉书 卷六十二 荀韩钟陈列传第五十二》
年六十九,终于家。诸儒颂之曰:"林虑懿德,非礼不处。悦此诗书,弦琴乐古。五就州招,九应台辅。逡巡王命,卒岁容与。"

太后は「人生において美しく円満な日々など決して得られぬ、懿の如くで良しとせよ」と。

5話

呉梅村の詩を踊られ『円円曲』を思い出し、陳円円を描いた。陳円円は明代末期 将軍 呉三桂の愛妾で傾国の美女。

慎賛微音、「大姒微き音を嗣いで百の男あり」慎み深くあってこそ美徳である。音に由来する。

《诗经 大雅 思齐》
思齐大任,文王之母,思媚周姜,京室之妇。大姒嗣徽音,则百斯男
惠于宗公,神罔时怨,神罔时恫。刑于寡妻,至于兄弟,以御于家邦。
雍雍在宫,肃肃在庙。不显亦临,无射亦保。
肆戎疾不殄,烈假不瑕。不闻亦式,不谏亦入。肆成人有德,小子有造。古之人无斁,誉髦斯士。

曲を誤れば周瑜が振り返る。

7話

『瓔珞』でもあった十二宮訓図を思い出すね。コチラは各宮に贈られた扁額

皇后長春宮「敬修内則
慧貴妃:咸福宮「慈徳合嘉」。弘歴直筆の『画禅室』が飾ってある。
嫻妃:翊坤宮「懿恭婉順
嘉貴人:景仁宮「贊德宮闈
玫答応:永和宮儀昭淑慎」は「儀礼」の淑女は礼儀を重んじ慎み深くあれ。

ちなみに『瓔珞』では皇后は同じ長春宮だが、高貴妃(慧貴妃)は儲秀宮、嫻妃は承乾宮、永和宮は愉貴人が住んでいた。


嫻妃は賢いしウォレス朕を大好きなんだけど、どこか達観していて「やれやれ」な感じが魅力的。

10話

陛下が嫻妃の誕生日に長寿を祝って銀絲麺を届けていた。萕と肉の煮込みそばも。
嘉妃は陛下より山桃を賜わっていた。慧貴妃海蘭にイケズすると、真桑瓜を食べようと皆を誘う。
純嬪が陛下に差し出したは酸っぱい。
皇后から暑気払いの麦門冬湯が届けられていた。

嫻妃は「春山行旅図」の書画を手に入れ刺繍している。唐の李昭道作で、玄宗皇帝が安史の乱長安から四川へと避難する様子を描いた。現在 台北故宮博物院所蔵。この先の受難を表わしているのかな。

11話

第一皇子 永璜が学んでいる。
「学びて時に之を習う、亦た説ばしからずや。朋遠方より来る、亦た楽しからずや。人知らずして慍みず、亦た君子ならずや。子いわく其の人と為りや」は、孔子論語 学而第一 一』。

第一皇子 永璜の幼年(7-12歳)は叶恺文で『孤城閉』の梁懐吉、『琅琊榜弐』の皇太子 蕭元時。第二皇子 永璉の幼年(5-8歳)は于垚で、『繁城の下』陸直。
嫻妃と永璜との濃やかな交流にホロリ。

13話

阿箬への叱責を巡り、慧貴妃に何度も写経をさせられる嫻妃は、侍女に「銭塘江の逆流を陛下と見てみたかった」と、劉禹錫の『浪淘沙』の「八月の涛声 吼え来たり、頭高く数丈 山に逆巻く、刹那海門に入りて去り、巻き上げる砂 雪に似たり」を届けさせる。
8月18日は逆流が最も壮観な日で、昔陛下が語ったことを嫻妃は覚えていた。
民の無事を祈念して仏母経を写経したと伝える。
写経を神棚に供えさせる陛下。

刘禹锡(唐代)《浪淘沙九首》
其七
八月涛声吼地来,头高数丈触山回
须臾却入海门去,卷起沙堆似雪堆

14話

乾隆帝が嫻妃に、玫妃の子の名の候補に挙げた皇子なら永珹、永琋、永珏。公主なら璟盈、璟馥。この中で永珹は実在しており、あの人が産んだワケなのだが……それはこの先のお楽しみ。

子を身籠ると、天監が吉方向に穴を掘り、箸や紅絹、金銀などを埋める風習があったそうな。

嫡子である第二皇子 永璉が端正に書をしたため、妃嬪たちから褒めそやされている。

《古诗十九首》之一《涉江采芙蓉》
涉江采芙蓉,兰泽多芳草。
采之欲遗谁?所思在远道。
还顾望旧乡,长路漫浩浩。
同心而离居,忧伤以终老。

15話

嘉貴人が陛下に母国の紅参茶を出しており、衣装も朝鮮調だ。

嫻妃が玫妃の子の事を口外したという疑いをかけられ、禁足中の嫻妃に第1皇子 永璜が覚えた詩を暗唱している。
窮達 皆命に由り、何ぞ嘆声を発するの労せん。ただ好事を行うを知り、前程を問うを要するなかれ。冬去れば氷はすべからく拌るべく、春来らば草は自ら生ぜん。君に請う観よこの理を、天道甚だ分明なり」。
嫻妃のピンチも切り抜けられるな、と思えた詩。

冯道《天道》
穷达皆由命,何劳发叹声。
但知行好事,莫要问前程。
冬去冰须泮,春来草自生。
请君观此理,天道甚分明。

16話

太后が儀貴人に「麒麟送子」の金鎖を贈り、嫻妃は「『詩経』に「麟の足跡 栄える公子」があり、麒麟は男子を授かるお守り」と言う。

《诗经 国风 周南 麟之趾》
麟之趾,振振公子,于嗟麟兮。
麟之定,振振公姓,于嗟麟兮。
麟之角,振振公族,于嗟麟兮。

 

第2皇子 永璉が眠そうに「子いわく 之を知る者 好む者にしかず、之を好む者 楽しむ者にしかず、子いわく 中人以上はもって…上を」で寝オチしている。早起きでお疲れで、眉を寄せる様子が?だ。眠気覚ましにと冷たい風に吹かれて、喘息が悪化……と。
永璉は学問を好む者ではない……よなぁ。

孔子論語 雍也第六』
子曰、知之者不如好之者。好之者不如樂之者。
子曰、中人以上、可以語上也。中人以下、不可以語上也。

先生がいわれた。「ものごとを理解する人は、これを愛好する人にかなわない。愛好する人は、楽しんで一体となっている人にかなわない」
先生がいわれた。「平均か、それ以上の知能の持ち主には、高度な内容の話をしてもよい。平均以下の知能の持ち主には、高度な内容の話をしてもむだである」。
貝塚茂樹論語」1973年 中央公論社

17話の漢詩

儀貴人の妊娠のあたり。
皇后が読み、第2皇子 永璉が『文選』を復唱している。
神聖なる明堂は善政を行う場所、聖なる天子は先祖を敬い威風堂々、天子は宴を開き五方に神々を配す」。咳き込む第2皇子。

班固(两汉)《明堂诗》
于昭明堂,明堂孔阳
圣皇宗祀,穆穆煌煌
上帝宴飨,五位时序
谁其配之,世祖光武。
普天率土,各以其职。
猗欤缉熙,允怀多福。


一方、嫻妃は第1皇子 永璜の手を取り書を記す
千年の烏江、悲しみを洗げず」。項羽の英雄らしい最期に、陛下が感銘を受けて詠んだ。

乾隆《读项羽纪》
鹿走荒郊壮士追,蛙声紫色总男儿
拔山扛鼎兴何暴,齿剑辞骓志不移
天下不闻歌楚些,帐中唯见叹虞兮
故乡三户终何在?千载乌江不洗悲
八月涛声吼地来,头高数丈触山回。

19話

阿箬に陥れられた嫻妃。
だけど、甄嬛@宮廷の諍い女な皇太后が一番コワイ。

雍正帝はかつて乾隆帝に伝えていた「最適なものが望むものとは限らぬ、すべきことが望むこととも限らぬ、決断を下して何かを得る時、必ずや犠牲を伴うのだ」が重い。

20話

義母の嫻妃が降格され、第一皇子が陛下に訴えている。
鹿走りて壮士追う、瑞祥の気 王者の相、山を抜き鼎を担ぎ、剣を列ね志移さず、天下に楚歌を聞かず、虞が嘆ずるを見る」。第17話で嫻妃が書を記していた乾隆帝の『読項羽紀』。


庶民に落とされた嫻妃が、乾隆帝に「公平とは何かご存じで?」と尋ねる場面で、乾隆帝がしたためていた書。

颜真卿《多宝塔碑》
嗟呼,三界之沉寂久矣,佛以法华为木铎,惟我禅师,超然深悟。其貌也,岳渎之秀,冰雪之姿,果唇贝齿,莲目月面。

嫻妃は冷宮行き。もとは翠雲館裏の一角に位置している。

嘉貴人は「世子のために」と言っている。
(つづく)

 

 

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