ドラマ「陳情令」の原作小説「魔道祖師」日本語版が、ついに2021年春に出版されることが、原作小説の連載開始日&魏無羨の誕生日である10月31日に発表された。
ダリアシリーズユニは海外BL小説の翻訳レーベルとある。台湾版の翻訳で、同じ全四巻となるようだ。
次は藍忘機の誕生日あたりの発表か?
そして「陳情令公式写真集1/東京ニュース通信社」が12月24日に発売される。クリスマスプレゼントなのですね。
物語の流れに沿った写真集で、上下二巻。「2」は2021年1月に発売されるとか。
アニメイト特典は、ミニカレンダー(2L版ポストカードサイズ)3300円。
セブンネット特典は、アクリルキーホルダー4400円。
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そんな興奮もさめやらぬ中、
今回は、雲夢、虞夫人(虞紫鳶)、紫電の詩歌についてである。
いつものごとく、関連づけて思いをめぐらしているだけですので、よろしければお付き合いくださいませ。
1.雲夢とは
雲夢県というのは、現在の中国の湖北省孝感市に位置している。
かつて長江の北には雲沢、南には夢沢という広大な湖沼があった。
泥土がたまって陸地になり、あわせて雲夢沢といった。
雲夢沢は、古代の楚にあった仙境という説もある。(越智雲夢の号より)
また、「雲夢仙境」という場所が、北京市郊外にあり、古代の鬼谷道教の遺跡があるらしく、鬼谷子は陳(楚の国)出身だとか。
2.雲夢と楚の国
雲夢をたどっていくと、雲夢は「楚」のイメージなのかと思われてくる。
楚は周・春秋・戦国時代にあった国で、「四面楚歌」の「楚」でもあり、 「四面楚歌」と聞けば、史記の「垓下(がいか)の歌」を思い出す。
漢文の中でもかなり印象に残っており、
「虞や虞やなんじをいかんせん」の虞美人でも有名である。
虞美人と言えば、陳情令・魔道祖師にも「虞夫人/ユー夫人」がいるではないか。
虞夫人に関しては、以前に虞美人と名称が似ているとは思っていたが、いかんせんキャラが違いすぎて結びつけて考えていなかった。
3.虞紫鳶という名前
虞夫人の名前は、虞紫鳶(yú zǐ yuān)。
紫の鳶(トビ/猛禽類)となるのだろうか。
紫鳶に花をつけると、紫鳶花はアヤメの花で、日本名は「イチハツ」。日本でイチハツは、大風を防ぐといわれ茅葺きの屋根に植えられてもいた。屋根からアヤメが咲く姿は雅な感じにも思える。
川崎市にある日本民家園・神奈川の村エリアにある清宮家や蚕影山祠堂で見られるとか。
アヤメはアイリスでもあり、イーリス(英語名アイリス)は、ギリシャ神話の虹の女神で、死後の魂を虹の橋を渡って天に返す役割があるらしい。
またアイリスはフランスの国花で、ブルボン家の紋章のモチーフはアイリスだそう。ユリかと思っていた。
虞夫人とアヤメ、モチーフとして合う感じはしている。
4.虞夫人と紫電ー楚の項羽
そんな中、虞夫人の武器の名でもある「紫電」※という言葉が、
李白の「登廣武古戦場懐古」にあった。
歴史に名高い、項羽と劉邦の戦いで、これも高校の漢詩の教科書に載っていた記憶がある。
李白『登廣武古戦場懐古』
項王気蓋世
紫電明瞳
(略)
赤精斬白帝
叱咤入關中
項王は山をひきぬく力をもち、世間すべてをおおう気魄だった。
項王は紫のいなずまのように二重の瞳が光っていた(略)
いっぽう、劉邦は道をふさぐ白い蛇を斬った。そして自分は五行説でいう赤色の精、赤帝の子で、火徳をうけていると、
兵士を大声ではげまし、項羽よりさきに関中にはいった。
ここでの「紫電」は眼光がするどいのを例えたものであり、
火徳の劉邦が、火系の術を得意とする温氏にも思えなくもなく、
そう考えると、虞夫人が項羽の苛烈なイメージと重なってくるのだ。
項羽は貴族出身であり、虞夫人もとにかく気位が高く、「尊いのは私/我為尊」と言いきっている。
そして項羽は「気概と力」の人物だったようで、虞夫人も気概ならば負けてはいない。
項羽は敗れはしたがその生き様は、中国でも最強の武将・豪傑として愛されているらしく、虞夫人も女傑として人気がある。
まさか、虞夫人が、項羽の愛姫の虞美人ではなく、項羽その人とは。
最後、項羽は自決する。 愛姫の虞美人も自尽ではある。
陳情令でも虞夫人の最期は自死である。
原作では最期は描かれていなかったように思うので、ドラマ制作陣が虞夫人の最期をそう解釈した、というのが興味深い。
雲夢の「楚」の国のイメージ、
楚は栄華と没落を繰り返した歴史があり、
最後は項羽が非業の死を遂げるといったことからも、
少し重なる部分があるのかな、と思うようになっている。
そう考えると、雲夢江氏のあの場面は、虞夫人のあっぱれな最期を遂げる、いわば「見得を切った」大一番だったのかと思い直して、辛さを和らげようとしている所である。 でもやっぱり辛い。
おまけ
紫電は、呉の孫権の宝剣の一つでもある。呉は長江流域の国なので、地理的にも似ている。
神奈川の村の(16)清宮家住宅、蚕影山祠堂
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