笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「愛なんてただそれだけのこと」「宮廷の諍い女」を更新中。⇩カテゴリー選択はスマホでは左にフリックしてください。

綿綿・羅青羊/陳情令・魔道祖師と中国詩歌・文選・詩経④

 今回の詩歌は、綿綿こと、羅青羊についてである。

1.綿綿と遠道

陳情令第3話、彩衣鎮での宿屋で、魏無羨が綿綿をからかった「綿綿」と「遠道」のいわれ。(原作では第52章/アニメでは第8話の教化司にて)

これは楽府詩巻三「飲馬長城窟行」。
作者は、「文選」では無名氏、「玉台新詠」では蔡邕とされている。

楽府詩巻三「飲馬長城窟行

青青河邊草 綿綿遠道
遠道不可思 夙昔夢見之
(略)


青々とした茂る河のほとりの草
ずっとずっと思う遠い道のあなた
遠い道のりは思うすべもありませんが
夕べ夢の中でお会いしたのです

山田勝美「中国名詩鑑賞辞典」1985 角川書店

 

遠方に行った夫(魏無羨)の帰りを待ちわびる妻(綿綿)の心情を詠っている。

初対面の魏嬰にこう言われては、「うぬぼれないで、図々しい人」誰が想うのよ、恥知らず(アニメ)となってしまうかな。


2.羅青羊という名前

綿綿(mián mián)の本名が、羅青羊(luó qīng yáng)であると、陳情令第44話で初めて気付いたほど、その名でお馴染みだった綿綿。

陸游の「梅花絶句」に、青羊宮というのが出てくる。

陸游 梅花絶句

當年走馬錦城西
曾為梅花醉似泥
二十里中香不断
青羊宮到浣花渓

その昔 錦城の西に馬を走らせた
梅の花のためには 泥のように酔いつぶれたものだった
二十里の道々 香りの絶えるまもなかった
青羊宮から浣花渓まで

 

青羊宮道教の寺とあり、成都市で最も大きな道教寺院である。
青羊宮の名の歴史的由来は、老子春秋時代の哲学家、思想家、道教創案の中心人物)が青い羊に乗ってここで教えを説いたことからきているとか。

 
3.詩経国風・「葛藟(るい)」

綿綿は、魏無羨に助けられた義を忘れず、義を通し、そして忘羨と再会する。久しぶりにその姿を見た時は「おぉ、綿綿~♪」と嬉しくなったものである。
なんといっても陳情令・魔道祖師で幸せになった貴重な女性仙師。

また「詩経」に、「綿綿」の言葉が出てくる詩も発見。

 詩経国風・「葛藟(るい)」

詩経国風・「葛藟(るい)」

綿綿葛藟 在河之滸
終遠兄弟 謂他人父
謂他人父 亦莫我顧
(略)

ながながと伸びた葛は、川の岸にしげっている
とうとう本当の兄弟とは遠く離れて、他人を父と呼ぶ
他人を父と呼んでも、振り返ってくれない

石川忠久「新釈漢文大系110 詩経上」1997 明治書院

 この詩には、

①葛藟はもともと山谷・丘陵に生えるもので、川のほとりにあるのは本来の姿ではない。

②葛藟は本来の位置にいるのに、私は本来の位置にいない。
という説がある。

 

綿綿が蘭陵金氏を離れ、自分の家族とも離れてしまったのかなと、少し考えてもしまう。

物語最後に出てきた綿綿は、親子三人で幸せそうですけれど、ね。

 

 

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外部サイト

★画像は青羊宮。

中国名詩鑑賞辞典 (角川小辞典)