笛の音と琴の調べ

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秦愫たち家族のカルテット⑦いまわの際に大切な人へ/陳情令・魔道祖師

陳情令・魔道祖師の四人を取りあげる、久々のカルテットシリーズ第七弾勝手に名付けて言ってるだけです。
物語をさいごまで知っている人向けです。

カルテットとは

このカルテットシリーズは、そもそも陳情令での義城編の衝撃を受け止めるべく生じたものである。

先日、日本語小説『魔道祖師』の義城編を読んだあとも、消耗してぐったりしていたが、自分が書いたこのシリーズを思い出し、手前味噌ながら気持ちをなだめていた次第であった。

物語からかき乱された感情の行き着く先はおおよそ、同志と熱く語る、その思いを二次創作に向け、書く見る読むなのだろうが、わたしはなぜか「構成萌えこの呼称で合っているのかわからないが をすると落ち着くという性分があるようだ。この性分、わたしのリアルな周りにはあまりいないが、SNSなどでは話題になっていることもあるので、一定数はいるとは思われる。このシリーズが地味に続いているのは、それだけ義城編の衝撃を物語ってもいる。

秦愫たち家族のカルテット

さて、今回は金光瑶の妻・秦愫その子・阿松である。
この取り合わせは第42話を見たあとのメモにも記していたのだが、少し弱いかなというのと、秦愫の死が自死か他殺かハッキリしないこともあり、お蔵入りしていた。金光瑶が「父も妻も子も兄も殺した」と言っていたし。

けれど日本語版小説『魔道祖師』第2巻の暁星塵の自刃を文章でまざまざと読んだあとに、続く第十章「狡童」で芳非殿での出来事を読むと、暁星塵の心境と、秦愫の心意が近い気がして、そうすると秦愫の死は自死に思え、このシリーズに組み入れることにした。言葉は妙かもしれないが、意思ある自刃のように思えたのだ。

義城編との関係

義城編カルテットである
a暁星塵ーb宋嵐ーc阿箐ーd薛洋
a秦愫 ーb阿松ーc手紙ーd金光瑶
の対を考えてみる。


a暁星塵/ 秦愫
心許していた薛洋/金光瑶の企みにより、大切な存在である宋嵐/阿松が害されていたと知り衝撃を受ける。暁星塵/秦愫もその死の一端に加担していた。阿箐/手紙に真実を告げられ激しく動揺し、薛洋/金光瑶に真相を迫る。

b宋嵐/ 阿松
暁星塵/秦愫の大切な存在。薛洋/金光瑶にとっては脅威でもある。

c阿箐/ 手紙
暁星塵/秦愫に真実を伝える。暁星塵/秦愫とも親しい。

d薛洋/ 金光瑶
暁星塵/秦愫とは親密で、その関係を保つためにも宋嵐/阿松を害したことを、阿箐/手紙に所業を暴かれ、暁星塵/秦愫に問いただされる。


このc手紙の部分は、第45話を見た当時は碧草としていたが、あえて手紙とした。手紙、という誰から自分に向けられたのかわからない匿名の不気味さが、金光瑶の不安をかきたて行動に移させた鍵のようにも思うのだ。手紙の差出人がわかれば、金光瑶ならばその人物を隠密に闇に葬ることができたのだろうから。


秦愫にとって一番許しがたかったのは、わが子・阿松をよりによってその父親でもある夫に殺された、ということであったように思う。それさえなければ色々と耐えがたくはあるが、あそこまで追いつめられなかったのではないか。そう思うと、暁星塵にとっても最も苦痛だったのは、知己・宋嵐のことだったように思われる。

あらためて見ると、宋嵐も阿松もむごいことをされており、暁星塵も秦愫も身の置き所のない追いつめられようである。そして薛洋と金光瑶は、因縁により自分で自分の幸せをぶち壊さざるを得なかったという、なんともやるせない思いになる。

そんな中、暁星塵と秦愫も自ら命を絶つことにより、自分の大切ななにかを守ったように思えなくもない。暁星塵は守ることで薛洋には断固とした拒絶を示していた。

原作小説で魏無羨がその瞬間にとらえた秦愫の表情からは「苦痛、憤怒、恥辱」というものであったのだが、それでも秦愫の場合は、反対に金光瑶を守ってもいたように感じなくもない。

清心音カルテットとの関係

ここで少し考えてみたいのは、清心音カルテット、すなわち、藍曦臣ー聶明玦ー聶懐桑ー金光瑶である。

今回取りあげた内、ふたり(聶懐桑、金光瑶)は重なっている形にもなっているが、注目したいのは、共にaとdに位置している秦愫→金光瑶藍曦臣←金光瑶の関係である。

秦愫があの場で金光瑶のことを糾弾するのでもなく道連れにするのでもなく、自らだけが死ぬことで、それはどこか金光瑶への貫いた愛も感じられてくる思いさえしてきたのだ。そしてそれがなにがしか、金光瑶が最後の瞬間に、藍曦臣を道連れにせずひとり聶明玦に立ち向かったことに繋がった可能性について考えていた。

いまわの際へ大切な人への思い

思えば陳情令・魔道祖師の主要な登場人物が亡くなる時は、いつもその人にとって大切な人を気にかけていた
ここは原作小説準拠で考えるが、金子軒阿離を、明確に描かれてはいないが温情温寧を、師姉阿羨阿澄を、聶明玦懐桑の声で一瞬正気に戻っており、阿箐暁星塵を、薛洋すら手の中にを残し、蘇渉でさえ金光瑶を背負っていたほどである。

そう考えると、『陳情令』で虞夫人江楓眠手を取ったのも、崖の魏無羨藍忘機江澄を思い手を振り払ったのも、ドラマならではの演出であるがうなずける変更であろう。

そんないまわの際、観音廟で金光瑶二義兄を突き飛ばしたのも、金光瑶にとって藍曦臣がやはり大切な人であったからなのか、そんな思いを巡らせていた。

 

その金光瑶へ真っ直ぐな好意を向けつづけていた秦愫。
おそらく金光瑶を傷つけようとしなかった数少ない存在のひとり。

そんな彼女だからこそ、死の直前には大切な人を守ろうとしたのだと感じたいのかもしれない。

 

 

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外部サイト

▼日本版ラジオドラマ魔道祖師特大ポスター&A4ファイル付、ラジオドラマ「魔道祖師」津田,森川,石田インタビュー、「天官賜福」神谷浩史インタビュー

 

 

 

 

 

 

 

 

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第42話 清心音の謎

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