笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「フライト・トゥ・ユー」「如懿伝」「致命遊戯」「寧安如夢」「琅琊榜弐」「琅琊榜 2周目感想」を更新中。⇩カテゴリー選択はスマホでは左にフリックしてください。

乱魄/陳情令スピンオフFatal Journey感想聶兄弟2020番外編キャスト清河訣

「陳情令之生魂」に続き、聶懐桑と聶明玦の「陳情令之乱魄」を観た感想である。

乱魄の舞台設定

冒頭、意味深な壁画で始まる。壁画好きとしては画面を止めてじっくり見たくなるではないか。

舞台は陳情令第34話にも出てきた聶氏の墓「祭刀堂」。陳情令で目にしていた設定であり、新たな登場人物も聶氏の部下なので馴染みやすい。そのためか「生魂」よりもすんなりと物語に入る事ができ、スピード感のある展開だ。

 

清河不浄世での剣の鍛錬は【起】のかけ声の下、キビキビと統率がとれている。登場した金光瑶が「斂芳尊」と呼ばれていることから、陳情令第41話で金光瑶が赤鋒尊・聶明玦に清心音を弾いていた頃の設定か。

不浄世での聶懐桑

貴重そうな墨で絵を描く文人・聶懐桑。家臣の聶宗輝(ニエ・ゾンホイ)が来て慌てて刀の練習をするが、これがまた見事にへなちょこで可愛い。この場面の窓枠に映るショットも美しい。刀霊による気の暴走は赤く、金光瑶の琴からは金の糸が舞い飛んでいる。懐桑と明玦がやりあった隙に、仲をとりもつようでいて笛を渡す金光瑶の巧みさと笑みが恐ろしい。


乱魄のアクションはであり、騎馬軍団の場面もヨイ。聶氏は呪術で結界も張る事ができ、刀霊を制御するために精通するようになったのだろうか。

 

兄と弟との絆

聶懐桑は刀は使えないが天文学に通じていて、祭刀堂の陣法も懐桑の知識によって見事に修復し活躍している。そんな姿は初めて見たよ。刀霊は凶暴で、主が存命中はその力も制御されている。主が亡くなると、骸や護符で殺気を抑えるしかない」。聶懐桑はこの時初めてこれらについて知らされ、その憤りを兄にぶつけ、邪道ではないのかと問いただす。


そんな啖呵をきった割にはすぐに「大哥~」と助けを求める弟よ…。藍思追にとって魏無羨や藍忘機がいれば怖くないのと同じように、聶懐桑にとっても聶明玦がいれば安心できるのであろう。

そしてこの良い場面で入る幼い日々の回想。こんな頃から兄は弟をかばい、自分は刀を選び、弟を一生守る決意をしている。気骨あふれるお兄ちゃんや…。覇下を背負う聶明玦と聶懐桑が並ぶ姿は、剣を背負う宋嵐と暁星塵を思い出す。一人で背負う事になる暗示なのか…。

そして少年時代の素直で真っ直ぐな様子の聶明玦を見ていると、刀霊の影響の恐ろしさも感じられてくるのだ。

それぞれの対決

聶明玦は、刀一辺倒に見えるが、それも聶氏の繁栄と、刀霊の均衡を守るという使命がゆえ。懐桑は、人一倍、人を犠牲にするというのが許せず、聶氏や清河の為なら犠牲もやむを得ぬという兄と対峙する。

刀霊に取り憑かれる・・・というのは、一種の傀儡にも似ており、後半の対決場面はゴーレム対決でもあった。宗輝~。


物語最初の聶氏一族の【起/一太刀】と、最後の場面での【起/頭を上げよ】の意味合いが変わっているのが悲しい。陳情令では、名を呼びかけられた魏嬰には藍湛がいたが、聶懐桑は振り向いてもその姿はなく、ついに真実に気付く……。

乱魄のまとめ・スピンオフ三部作

「乱魄」は、聶氏の祭刀堂のいわくと、聶懐桑と聶明玦・聶氏兄弟の絆と、清心音から聶懐桑が金光瑶の所業に気づいた物語である。最後の場面から時を経て、第1話に続くのであろう。陳情令の物語をより理解できるスピンオフとなっている。

 

スピンオフ第一部「生魂」は陳情令の温寧と藍思追の物語(簫氏の話は遡るが)。
第二部「乱魄」は陳情令の物語。
となると第三部「渡魂」は陳情令の、暁星塵や宋嵐、薛洋との出会いの辺りが描かれるのだろうか。……と思っていましたが、「渡魂」はその後なんの発表もなく、本当に存在するのか不明です。2022.3.11追記

 

エンディングは阿雲嘎(アヤンガ)が歌う、聶懐桑と聶明玦のキャラソング「清河訣」である。

「乱魄」OST版予告編人物曲「清河訣」(3:52)

キャスト演員

聶懐桑:紀李(ジー・リー)
聶明玦:王翌舟(ワン・イーチョウ)
金光瑶:朱贊錦(チュー・ザンジン)
聶宗輝:何翔(フー・シアン)


監督:裘仲维(チウ・チョンウェイ)
脚本:焦裕峰(ジアオ・ユーファン)
時間:82分
公開:2020年3月26日

陳情令スピンオフ映画「乱魄」出演者メッセージ

聶明玦役の王翌舟の日本語挨拶もあります。 2021.3.28追記

WOWOWで「乱魄」を見た

「乱魄」を日本語字幕でじっくり鑑賞~。テレビで見ると画面も明るく、日本語で理解しやすい。乱魄での聶氏の設定や用語が興味深かったので、備忘録にとまとめてみた。

聶懐桑が描いているのは扇の絵で、紙は清硯斎の水紋柄らしい。
懐桑が聶宗輝に言った「月は柳枝の頭にかかり / 月上柳梢頭」は、

宋の欧陽修『生査子』

去年元夜时,花市灯如昼。
月上柳梢头,人约黄昏后。
今年元夜时,月与灯依旧。
不见去年人,泪湿春衫袖。

去年の元宵の夜は、花市の灯が昼のようだった。
月が柳の梢にかかり、夕暮れのちにと約束をかわす。
今年の元宵の夜は、月や灯は前と変わらない。
去年の人には会えず、涙で袖が濡れるよ。

の一節で、元宵節春節から最初の満月の日、旧暦1月15日)での一年の変化を詠ったもの。去年は逢瀬していた人に、今年は会えず涙にくれる思いを詠じた漢詩なのだ。

聶氏の行路嶺は以前は千人塚だった。千人塚とは戦地・災害地・刑場などの跡に多数の横死者を葬った供養塚であり、乱葬崗と似たような場所とも言える。祭刀堂は侵入を防ぐため千人塚の後ろに位置する。

纏人藤(てんじんとう)は、暗がりに棲み人の血肉を餌にする。
その纏人藤が凶暴なのは、堂内の刀霊の均衡が破れたから。刀霊の均衡を戻すには、主墓室で仕掛けを修理する必要がある。門を制御する陣が破られており、青竜と白虎の両墓室の陣を直さねば通ることができない。

青竜二十八星宿東方七宿にあたり、角,亢,氐,心,尾,箕宿がある。現在の星座で言えば乙女座から射手座付近である。似たようなのが宿曜占星術にもあり、月の星座で占うようですね。
それぞれの宿が青竜の身体と対応し、
角:角
亢:頸
氐:胸
房:腕と肋骨
心:心臓
尾:尾
箕:尾の先となっている。
懐桑は、房は心の前、箕と尾は隣り合わせに入れ替える。

 

聶明玦が懐桑に用いた掌波は、手のひらから気を発するものか。

子供時代のふたりの場面で、聶明玦は修心を懐桑に渡し、自らは修刀の札を取る。

鎖仙閣、歴代の聶氏宗主は気が暴走する前自らをここに監禁する。おそろしや……。八卦を兄弟で息を合わせて解いて脱出。八卦陣は古代中国の軍事陣法で諸葛孔明発案とある。

聶明玦が刀霊の影響を受けるのは失心症と言い、人が傀儡に見えてしまう。陳情令のあの場面では、金光瑶のことはどんな風に見えていたのだろう?


二人並んで聶明玦が懐桑に言った言葉、「今後お前が何をしようとお前を守ってやる」。その言葉は観音堂に続いていったのだろうか。

アヤンガの歌う「清河訣」の日本語訳がいっそう切ない。

不浄世 深き絆の地
何代も引き継がれる
断たれない兄弟の縁
いつになれば再び会えるのか。

2021年3月30日追記。

 

fuenone2020.hatenablog.com

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▼映画「生魂」「乱魄」、陳情令スペシャルドキュメンタリー、陳情少年 座学中

 

▼「陳情令」タイファンミーティング、南京コンサートDay 1, Day

 

 

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