山河令ファンの呼び名は山人。なのだけれどまだ入山したてなもので、ドラマが始まったワクワク感と、山登りへのちょっぴり不安な気持ちを「山ガール」という言葉にこめてみました。登り始めのフレッシュな気分ということで。公式タグは「#山河令登山中」です。
3話 貪欲
1.温客行が宝物を欲しがる人について、周子舒と意見が全く同じと言う
天下は本来無事なり 凡庸なる人自ら騒ぐ
天下本無事 庸人自擾之
『新唐書 列伝第41 陸象先伝』が出典。
そして温客行が言った
間もなく夜明けだ
天是快要亮了
この言葉から瑠璃甲をめぐる闘争の物語が本格的に始まり、印象に残った台詞。
2.緑柳が沈慎たちに言う
やましいことがなければ鬼は訪れぬ
平生不做亏心事 半夜不怕鬼敲门
ことわざである。
3.川で温客行が周子舒に再会して言う
滄浪の水 清まば 吾が纓(えい)を濯(あら)うべし 滄浪の水 濁らば 吾が足を濯うべし
滄浪之水清兮 可以濯我纓 滄浪之水濁兮 可以濯我足
『楚辞 漁夫』
沧浪之水清兮 可以濯我缨
沧浪之水浊兮 可以濯我足
滄浪は漢水の下流。江漢民間で流行した歌「滄浪歌」で、『孟子 離婁』でも出てきている。
漁夫が放逐された屈原に言った言葉。世の治まる時は出て仕えるがよい、世の乱れた時は世に隠れるがいい、世に逆らわぬが良いではないかという意味。
4.周子舒が衣を調べて張成嶺に言う
用心にケガなし
防人之心不可無
明の洪自誠『菜根譚 129』
害人之心不可有,防人之心不可无
人に害を加えようとの心を抱いてはならないが
人から害を受けないようにする心がけだけは必要だ
神子侃, 吉田豊『菜根譚』1965 徳間書店
不用心のために災厄をうけることを戒めたもの。
一方で人を疑うよりペテンにかけられた方がマシとも言い、これら2つの教訓により、判断は正確で感情は円満になると説いている。
5.2階から降りてきた周子舒に温客行が言う
霊魂同士が結び合った運命の相手かも
莫非是三生石上旧精魂
唐の袁郊『甘澤謡』
三生石上旧精魂 赏月吟风不用论
惭愧故人远相访 此身虽异性常存三生石の精魂は 月をめで風を吟じ論ずるにはおよばない
旧友が遠くから訪ねてくれて慚愧にたえない 身は異なるけれど【性】は変わることなくそのままである
唐の李源と円沢という僧侶たちが生まれ変わっても深い交友を結ぶ物語。三生石というと『永遠の桃花』の白鳳九を思い出す。伝奇話でもあり円沢が李源との親交を惜しんで生まれ変わらないため、その母は三年妊婦で過ごすというのが、夜華母が三万年なかなか身ごもらなかったのと似ているような。この詩は生まれ変わった円沢が、李源のために歌っている。
温客行がこう言った直後に、周子舒に「背後霊」と言われているのに笑う。
6.顧湘が張成嶺に言う
家を出たら友人を頼れ
在家靠父母 出外靠朋友
ことわざである。
4話 紅塵の因果
1.馬を用意し、張成嶺にお礼を言われた温客行が言う
白頭 新のごとく 傾蓋 故のごとし
有白頭如新 傾蓋如故
『史記 巻83 魯仲連鄒陽伝 第二十三』
有白頭如新 傾蓋如故
白髪になるまで付き合っても 知り合ったばかりのようであったり
車上の傘を傾けて路上でちょっと話しただけでも 旧友のように打ち解けることもある
友情に時間は関係ないこと。
前漢の鄒陽が陥れられ牢に入った時に、梁の孝王(劉武)に忠心を奏じ、孝王はいたく感じ入り釈放した。2021.8.22追記
2.温客行が言う
星が美しい今宵は 酒を飲んで楽しむべきだ。
如此星辰如此夜 正宜対酒当歌
曹操『短歌行』
対酒当歌 人生幾何
譬如朝露 去日苦多
(略)
悠悠我心 但爲君故
(略)
我有嘉賓 鼓瑟吹笙酒があれば歌おう ひとの命には限りがある
朝露のようにはかなく 過ぎ去った日はひどく多い
私の心は悠々と ただ君のためゆえに
私に大切な客がいれば 瑟を奏で笙を吹こう
短い命をなげき、楽しめるときに楽しむべきとうたう。温客行が吹いたのは簫。
3.野営で温客行が詠じている
天上の浮雲は白衣のごとく 改変して蒼い狗のごとし。古今同じく一時 人生万事あらざるなし
天上浮雲如白衣 斯須改変如蒼狗 古往今来共一時 人生万事無不有
杜甫の『可歎』
天上浮云如白衣 斯须改变如苍狗
古往今来共一时 人生万事无不有空の雲は白衣のように見えたかと思うと たちまち青い犬の形のように変化する。
昔から今に至るまで同じで 人生万事形あるものはない。
「白衣蒼狗」という四字熟語があり、世の中の変化が早いたとえ。
4.張成嶺の弟子入りの様子を見て、温客行が言った
孝行のしたい時分に親はなし
樹欲静而風不止 子欲養而親不待
『孔子家語 巻二 致思第八』、『韓詩外伝 巻九』
树欲静而风不止,子欲养而亲不待
木は静かにしようとしても風が止まない
子が養おうとしても親は待ってくれない
日本語でもよく使われる言い回し。
5.温客行が周子舒たちを見ながら船上でつぶやく
ひとたび世に出れば因果が生まれる
一入紅塵 便生因果
4話日本語タイトルの由来。
6.温客行が張成嶺に言う
烈女もしつこい男には弱い。志があれば成功できる
烈女怕缠郎 那个 有志者事竟成
『後漢書 列伝9 耿弇伝』
将军前在南阳 建此大策 常以为落落难合 有志者事竟成也。
将軍は前に南陽で、この大策を建て、志が大きく世俗と合いがたいと思っていたが、志があれば成功できた。
耿弇(こうえん)は後漢・光武帝(劉秀)の武将。これは29年耿弇が張歩を破り斉の地を平定した時に、劉秀が感嘆して言ったもの。計略が巧みで情報操作で相手を思惑通りに動かし、ここぞという時に精鋭部隊を敵の急所に襲撃することを得意とした。2021.8.22追記
温客行にとっては、烈女をくどくのと同じ意味らしい。
3話・4話の感想
だんだん温客行の待ち伏せ&ねっとり視線もヤミツキになってきて、周子舒の頬に触れた場面もなまめかしい。「阿絮」呼びや隣すわりに御者扱いでの同行を許され、少しずつ距離を縮めているのが面白く、乾杯時の盃のやり取りも楽しい。温客行は肩甲骨フェチなのか。
温客行は周絮を「毒舌だが心優しい」と評するが、さほど毒舌とは思えずむしろそれは顧湘のことのように思える。そしてどこまでもお坊ちゃんな張成嶺は、名門武侠の第三公子ながらまさかの武侠初心者だった。真面目そうだし訳アリなんだろか。
温客行がチートで強いので、戦闘場面は全く心配なし。むしろ言われたことを守って「見ている」のが律儀だし、回復系by簫でもある。周子舒も強く経験値は青天井ながら、HPの少なさが見どころである。
そしてなんと言っても、今回は瑠璃甲を求めていっせいに各派が出陣しており、このドングリの背比べのようにいろんな派閥が技で競う場面は、武侠ならではでワクワクする。丐幇(乞食集団)の棒を使った団体パフォーマンスも見応えがあった。そして割と死人はザクザクでている。
五湖盟の立ち位置は意外だったな。高崇(ヘイズ)曹司令@君花紅もお元気そうで。趙敬(王若麟)桑籍殿下@永遠の桃花の姿も。毒蠍四大刺客・毒菩薩(趙茜)の太ももお色気は、『東離剣遊記3』の刑亥を思い出していた。やはりマッサージされているのね。
五湖盟は鬼谷の仕業と鬼谷へ攻め入ろうとしており、そこへ丐幇、緑紅翁媼、毒蠍四大刺客派も台頭し、現在瑠璃甲を持っているのは全滅寸前の丹陽派と傲崍子か。傲崍子(王崗)の衣がストライプなのが目を惹いた。
江湖で生じる出来事は、貪欲か怨恨か暗愚に起因する。
貪欲の物語が始まる。
山河令再登山メモ
3話
羅漢寺。温客行が阿絮に渡そうとしたお酒の絵柄が、二羽の鳥なのだがやはり雁なのかな。
「青崖山の鬼」は20年前青崖山で討伐された大魔王 容炫を指していた。武庫には各門派の奥義書が収められており、凡人でも天下無敵になることができる。武庫の鍵が瑠璃甲。
鏡湖荘を五湖盟 大狐山派掌門・沈慎が駆けつける。岳陽派一番弟子・鄧寛、緑柳に桃紅、丐幇長老・黄鶴と勢揃い。冥銭は鬼谷の証で。吊死鬼の纏魂糸が残されている。緑柳と桃紅は鬼谷のために落ちぶれ、五湖盟も憎んでいる。皆が張成嶺を捜している。
温客行は薄緑色の衣裳に着替えて、周絮を待ち伏せている。丹陽派・陸太冲の弟子は泰山派の傲崍子を頼り、瑠璃甲を持っているよう。
天涯客棧の円窓にも、雁らしき絵がある。
崇武殿。岳陽派・祝邀之、高山。20年前に江湖と鬼谷の始祖は鬼谷が江湖に害を加えない限り、鬼谷に足を踏み入れないと誓約を交わした。7月15日に英雄大会を開催すると宣言。傲崍子は泰山派・青柏と会話している。
フクロウの鳴き声と共に現れた鬼面が倒れている。温客行は30年物の銘酒 黄封を手にしている。
4話
温客行がクルミをくるくる手で回している。
丐幇大智分舵副舵主・跛脚乞丐が一同を従えて張成嶺に迫る。
谷十大悪鬼・急色鬼から、顧湘が雲栽と紅露を助け出す。
伝説によれば、魔匠・容長青は3つの剣「大荒」「龍背」「白衣」を作り、四季山荘の秦懐章は白衣を携えていた。張成嶺は14歳。
四大刺客の魅曲松秦が魔音で攻撃する。毒蝎・俏羅漢、毒菩薩、金毛蒋怪が勢揃い。
温客行が吹いているのは「菩堤清心曲」。向かっているのは湖州。
五湖盟太湖派掌門・趙敬。深緑に金の差し色衣裳。鯉の滝登りかな? 泰山派・青華が助けを求めに来る。21.10.12追記
▼史記 魯仲連鄒陽列伝
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