笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「君花海棠の紅にあらず」とアニメ「天官賜福」、漢詩で「山河令」もはじめました。

金丹・江澄の苦悩と解放~雲夢双傑~意味解説

今回は、金丹江澄雲夢双傑について述べてみる。

金丹と魏無羨については、以前に記載したのでコチラもどうぞ。下記にリンクあります。

1.仙侠と道教

陳情令・魔道祖師は、仙侠世界の修真界であり、道教の世界観が強く取りいれられている。

道教は、中国思想に共通する、目に見えない「」という存在に根拠を置き、ここから天地万物が生成展開すると考えられている。

あらゆる存在が気の集結によって生じ気の離散によって滅ぶのである。

2.金丹(道教の内丹)とは

そして陳情令・魔道祖師に頻出する金丹

物語で詳しく説明されてはいないが、道教には、内丹(臍下丹田に元気の根源を養う術)というのがある。(丹は「不死の霊薬」を意味する。)

内丹は身体を炉鼎と見なし、「意念」によって、精気を操作変化させて、体内の丹田と称される部位に金丹を養うものとされている。

道教ではこの金丹を得て養うと、不老不死の体が得られるとされているが、
陳情令・魔道祖師の金丹は、仙師としての力の源である霊力を生成し貯めておく所、というイメージが強いように思われる。

 

この記事は陳情令完走後に書いたので、アニメ勢にはネタばれとなります。

ご注意を。

 

 

 

 

3.金丹のあの場面で想像と異なっていたこと

私は陳情令第46話で、温寧が「岐山温氏最高の医師温情」と言うまで、金丹譲渡そのものに温情が関わっていると思っていなかった。

温情は、山に入っていった江澄へ語りかける際に、女性である包山散人に扮するために必要不可欠であるが、譲渡自体は、魏嬰と江澄が並んで寝て、気を飛ばすのかな、というイメージだったのだ。そんな医術的なものだったとは。

そして藍忘機が温寧に「金丹を取り出すのは痛むのか?」と聞いて初めて、金丹がなくなった心身状態を想像した。

今まで自分の中にみなぎっていた活力というか霊力。それがなくなり「ただの人」になるというのは、心身も混乱し相当の喪失感であろう。

もっとも当時の魏無羨には、それよりも江澄を守れないことへの恐怖の方がまさっていたとは思うのだが。


そして陳情令第47話(原作第101章)で金光瑶が江澄に、「以前は魏公子に全て劣っていた。どうやって射日の征戦後挽回した? まさかー金丹か妙薬でものんだと?」と当てこすりで言っていたことから、金丹はただ霊力の器というだけではないのかという可能性に気付かされる。

 

ここから先は、金光瑶の言葉や、それに対する周囲の反応により類推した、金丹像の連想を述べています。公式な金丹の設定はないので、ひとつの私の考えとして記しています。

4.金丹の影響はどこまでなのか?

すると江澄にとっても、この金丹譲渡というのは、とても恐ろしいことのように思えてきた。

現代で似ているイメージと言えば、臓器移植になるのだろうが、いわゆる臓器移植とは意味合いが異なる部分がある。

 

それは仙師として活躍しても、それは本人の功績になりえるのか?という、かなり難しい評価が自他共に付いてまわることである。

江澄がいくら修練して功をあげても、「魏無羨の金丹だからね」と言われてしまうのではないか。自分の努力がこのレッテルで無に帰される。まるで金光瑶の「妓女の子」のように。

 

おまけに承諾もなしに自分の体内に、他人のモノが入り込んでいた、と知ることは、相当に衝撃的で受けいれがたいであろう。

われわれは私はかもしれないが、魏無羨に思いいれているので、魏無羨の失った方をクローズアップして、江澄のその衝撃を軽視してしまいがちである。

 

けれど同じことをある日突然告げられたら、自分の身体であるだけに、自分が自分でないような、自我が揺さぶられる違和感にどうなってしまうか分からないのではないか。

譲渡した直後に知れば、気が暴走してしまう恐れもある。

しかもそれは仙師のアイデンティティである金丹なのである。一生つきまとう自らへの疑念ともなりうる。

おまけにこれは江澄個人の問題ではおさまらない。雲夢江氏の評判、ひいては存亡にも関わってくるのである。

それは、魏嬰も江澄に言えないし知られまいとするであろう。

5.江澄の16年間

しかし最終回では江澄はそれらを受けいれていたように見えた。
そしてそれを受けいれられたのは、16年間、江澄が苦しみ続けたことが大きいのではないか。

家族や一族の喪失はもちろんとして、破門したとはいえ師兄でもあった夷陵老祖を、殺していないのに世間からは殺したと評され、弁明もできなかったこと。(※原作ではその辺りは噂であり、実際は不明である)

なによりも江澄の一番の解せなさは、魏無羨がなぜ自分たち江氏をかえりみず、温氏に肩入れするのか、という苦悩だったのだと思う。しかも一番心もとなく頼りにしたかった江氏復興の段階で。

そして最後には、少なくとも魏無羨が江氏を-そして自分と双傑となる事よりも、温氏を優先させたのではなかった、という、本当は自分たちを選んでくれていたのだという真実が、金丹を譲渡されていたという苦しみを上回ったのではないか。

6.雲夢双傑

金丹譲渡は五割の成功確率であった。

それが成功したのは、温情の腕もさることながら、おそらく二人の「気が合った」ということの証とも思われる。

 

すなわち、江澄が幼い頃から生活を共にする中で、魏無羨を師兄として誇らしくも頼りにしていた由縁であり、

魏無羨が江澄と一緒に雲夢江氏を盛りたて、双傑となるつもりであったことのあらわれでもあり、二人の思いが結実したのであろう。

 

他人由来のモノと思えば辛い金丹割譲も、江澄と魏無羨の二人で雲夢江氏を担っているのだと思えば、それは江澄の身体で実現した「雲夢双傑」の姿であり、今の雲夢江氏の復興は二人で成した、と秘かに言ってもよいのではないか。

そう思うのは魏無羨ひいきであろうか。

 

 

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