笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「君花海棠の紅にあらず」とアニメ「天官賜福」、漢詩で「山河令」もはじめました。

君、花海棠の紅にあらず36,37,38話 感想と京劇/梨園春鑑は薄い本かと…

36話 虚構の生

商細蕊が小周子と冥銭を焼いており、商細蕊は小来と冥婚すると話す。思わぬ展開で二旦那のような思いになったが、小来はあの世で頼る者もなく、臆病なので街中に墓を作り少しでも賑やかに送ろうとしている商細蕊の姿にしんみり。

そして斉王は東北へ工業部部長として旅立とうとしており、寧先生は出家していた。寧先生にすがりつき、言葉を礎にしようとする商老板。

寧九郎は初めて会った時に『思凡』を歌う商老板に他の子との違いを感じ、「梨園の苗を守ることに等しい」と語る。「役者は常に舞台と現実のはざまにあり、虚構の生を送るのだ。」「その虚構の中で、確かなものをつかみ、決して手放さぬよう、それが生きる縁となる」。

最後は寧九郎とも会わず、「どうか息災で/ 我走了」とマントを翻し去って行く斉王もあっぱれな別れである。商老板には九官鳥が残される。


突然、山の中にあらわれるパパラッチ。8話に出てきた邱記者である。友人とやらが宴の余興歌舞伎を写真に撮り、金の延べ棒4本をせびりに来ている。これは不穏だ……。二旦那に相談して~~~。水雲楼の休演を知らせる時に、新安煙館の看板が出ている。

寧九郎が会長を断ったために、そのお鉢は侯玉魁のところへ。息子を人質にとられ、舞台に上がる姿はもはや京劇の物語の世界。そして劇楼には梨園の役者が勢揃いした。ここに来て一気に団結する梨園の世界。そして姜会長は商細蕊のことも認める発言をし始めている。小周子の成長も著しく頼もしい。

一幕は『紅鬃烈馬』で橙の鞭を手にして「馬を駆り西涼を離れん」。「涙が胸を濡らす」「妻の義兄でありながら私を陥れた魏虎が憎い」。演目を『撃鼓罵曹』に変更すると告げる侯玉魁。

役者たちに入会の署名を迫るところへ、雪之誠こと九條が七坊ちゃんと共に現れる。歌舞伎なら花道から現れたところだな。

会わずに別れる寧さまと斉王。25話の『断橋』の台詞はこのふたりの思いでもあったのか。



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36話の京劇メモ

思凡:若い尼僧の色空が、仏門修行が空しくなり、俗世に憧れ還俗して山を下りるという一人舞台。
伝統の型を破ろうとしている商細蕊をあらわしているのか。映画『さらばわが愛覇王別姫』でも、程蝶衣が小豆だった頃にこの演目が出てきている。

新安煙館深圳にある建物。阿片を吸う場所だったようだ。

紅鬃烈馬:第一場 薛平貴王宝訓の愛情物語。『武家坡』。斉王の心境のようだ。

・橙色の鞭:鞭は馬、房の色は馬の種類を示すも、橙色は見かけない気がするのだが。京劇動画で見た紅鬃烈馬・薛平貴の鞭の色は赤(棗紅馬)だった。赤に黄を混ぜた、という事かしら。

撃鼓罵曹曹操がわざと禰衡に皆の前で太鼓を叩くように命じ、禰衡は無礼とされる裸姿で太鼓を叩き丸腰ながら、曹操面と向かって痛烈に批判する

 

37話 命懸けの抵抗

雪之誠が取りなしてくれ、事なきをえた商老板。姜栄寿が捺印を迫られ、姜登宝が涙する場面は良かった。姜家と侯家の親子の物語。


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侯玉魁は『撃鼓罵曹』に演目を変えて歌い出す「ざん言する臣下が権力を握り漢の朝廷を乗っ取ろうとしている」。商老板は侯玉魁について「男気ー仲間のために人を殺めた」と語り、七坊ちゃんは「出会いと別れ、隆盛と滅亡」の新作を書くと宣言する。銃声が聞こえたのは、捺印を拒否した役者がいたのか?

侯玉魁は「見ておれ、私が奸賊をどう…始末を…始末するか」と迫ると……そしてついに吐血。仙侠ものを見すぎで、そちらの方を思ってしまう。

姜登宝が「西太后様が、奴は剛毅な性格だから短命だろうと。なぜこらえきれなかったんだ」と言いつのり、幕を引く。

二旦那は「戦争は善良な人も獣に変える」と憂えている。
商老板がなにか劇場でゴソゴソしているかと思いきや、個室に案内された軍人が床に落ち、商老板がせっせと細工していたらしい。

正月公演の演目は『打桜桃』、『汾河湾』、トリを飾るのは水雲楼の『戦金山』。

坂田大佐(李昂)が程家を訪問。香炉に目がないらしい。香炉を贈るのかと思いきや、二旦那は上下になっている下の部分を落とし割ってしまう。

第一楼の公演の最前列に大佐と二旦那が並んでいる。なんとなく侯玉魁の公演を思い出す布陣。ここでの演目は『戦金山』「陣中で殺せと声が響く。英雄を」。

二旦那はじわりじわりと山東ー東北ルートを明け渡すように迫られる。北平商会が推薦したとな。坂田家は九条一族の家臣で9代目になるようだ。二旦那も同行を迫られるが「西遊記並みの厳しい道のり」と断る。すると大佐が「分かりました~」と眉間に手をあてて考えるのが、いきなり古畑任三郎していて吹き出してしまった。

私梁紅玉は夫と共に金と戦うため、金山で太鼓を打ち鳴らし味方を鼓舞しよう」。10月から北方の遼と戦う演目は禁じられていたらしく、いよいよ商老板の身が危うく、二旦那が同行することになる。

程鳳台は怒りにまかせて楽屋の扉を足で蹴り飛ばし、「演目は誰が決めた?」と怒鳴りつける。どんな状況でも余裕たっぷりに対応してきた二旦那の初めての姿。商老板もいつもなら反射的に怒鳴り返すのに、今回ばかりは、いきなり怒られ固まっている。にらみあうふたり。

二旦那の今までの心配や懸念が高じたこのふたりの大喧嘩の場面が、カタルシスがあるのはなぜでしょう。二旦那の本気の心配が伝わり、強い絆の下で本音をぶつけているからかな。そういえばかつて商老板は七坊ちゃんとも大喧嘩してたな。

そしてなんと、今までバチバチしていた二旦那と七坊ちゃんが並んで歩いている!しかも七坊ちゃんは商細蕊のことを「親しい人にこそ無礼で小犬みたいに吠える」と言って二旦那を慰めている……。そして『梨園春鑑』という薄い本を渡す。新本に見えたのだけれど、そんなに早くは書けないか。なんだろ?

トンネルは完成していたのね。老雷が二旦那に誇らしそうに語っている姿も見たかったな。


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37話の京劇メモ

・『打桜桃』:好いた者同士が結ばれる。

・『汾河湾』:親が誤って息子を殺してしまう。……不穏だ。

・『戦金山』:梁紅玉が金との戦いを鼓舞する。あれこれ京劇の衣装を見ていて、この梁紅玉が華やかで良いなと思っていたのだが、この場面で使われていたのか……。この背負っている三角形の旗は【靠旗】と言い、部隊を表わしているそうな。

・演目禁止:遼は宋の時代の北方王朝。実際の京劇でも、周信芳は1937年事件後、『微欽二帝』を上演し『文天祥』『史可法』の予告を貼った。漢民族が作った宋末期の『微欽二帝』は金の侵略を許し悲劇的な死をとげた。『文天祥』は死を賭して南宋を護ろうとした。『史可法』は明で漢民族が打ち立てた王朝。宋を滅ぼした金、南宋を侵略した蒙古軍、明を消し去った満州異民族なのである。樋泉克夫「京劇と中国人」1995 新潮社

・香炉の下部が割れる:19話の完璧帰趙になぞらえているのか、ここでは敢えて片方を壊している。二旦那の強い抵抗の意志を感じる。

 

かつて寧先生が言った「現実と虚構が一緒になる」の言葉通り、陳紉香が亡くなったあたりから、登場人物たちが京劇の戯曲の登場人物に見えることがあり、この揺らぐ感覚が不思議な気持ちになる時がある。

 

38話 入り混じる真偽

つらい展開の中、義兄との棍法対決を見ることができてつかの間、爽快だった回。そして程商の物語……。


遼の演目禁止の話が出ていたのは、前日であった。钮さんは今や小来のような安心感がある人物である。二旦那と話す奥方は、蝶のネックレスに蝉のブローチをしているように見える。

鳳乙と共に寝ている商老板。梨園春鑑はゴシップ誌だった。二旦那が「程と商の物語」を読みあげる、と聞いて「えぇ?ふたりのただならぬ関係を?」と思い「きゃー」となったが、聞いてみると「あれ?小百合ってなんだ?え?ふたりの話じゃないの?」と、少々混乱していた。

初めは二旦那が人名をわざわざ読み替えているのかとまで思ってしまったが、それぞれ他の女性との醜聞だとわかるまでしばし時間がかかる。

例のコミカルな音楽が流れる中、「今宵1つにならないか」と読みあげる二旦那。詩は「雌雄の鴛鴦が閨房へ向かう」。ドラマでの梨園春鑑への文句は、現代にも通じる有名人の嘆きでもある。

二旦那のガウンが素敵です。どんな形であれ占領軍に協力したら国賊扱いで、のちの人生はないも同然。二旦那が酔っぱらって祠堂で寝入る姿も、かつてより無防備になっているのがふたりの関係性を感じさせてくれる。しかしあの二旦那に掛けた布は何用なのだろう?

商老板が小周子に教えている姿も良いなぁ。そこへ突然現れる義兄・商龍声(徐剑)。商家の長男で形意拳の使い手。商老板と鮮やかに手合わせするのは嬉しい展開。しかし梨園春鑑のことで問い詰められ、突然嫁をとれと言う。かばう二旦那と商老板の構図は、七坊ちゃんが出てきた時のを思い出すな。

侯先生が亡くなり、商老板は寧先生から贈られた扁額を掲げて弔問する。商老板が名うての名手に挙げたのは姜栄寿を除いた3人。姜栄寿は商老板に会長になるように言うが、これがどういう意図で言っているのかいまひとつわからない。商老板は取りあわず、姜栄寿の苛立ちの矛先は期待に応えられない息子へ向かう。

息子は父に認めてもらいたいが届かない思いを、商老板にぶつけるかのようである。この様子では陳紉香も姜登宝に張り合われて、結構嫌な思いをしていたのかな。

この話の直前の演目は『趙飛燕』であり、趙飛燕は、姉妹で皇帝の寵を争うという一面もあった(趙飛燕が姉ではあるが)。この姜登宝と突然出てきた商長男は、父親が望み期待するのは自分ではない、という点ではどこか似ているように見えなくもない。

そして財をなしてきた東北ルートが、二旦那に災難と降りかかってきたように、そもそも己を貫き、姜会長の祝いに行かなかった1話の話が、それぞれに受難をもたらしている、というのが皮肉な巡り合わせでもある。『戦金山』の梁紅玉にいたっては、1話で丹念に衣裳を調べていた時に引き合いにだされた役名である。

そしてここでいよいよ商老板は、二旦那が軍への帯同や、義兄からの怒りを自分が体を張ることで、守られている。2話では守られることを拒否していたが、そうではなく「妃」ともなっている、ように感じられる。

38話の京劇メモ

・小百合:映画『SAYURI』。チャン・ツイィーが主役の芸者を演じた。

・程と商の物語内の詩:【一对鸳鸯进绣房, 携手并肩上牙床, 缱绻不知时日过, 一炮打到大天亮】。一対の鴛鴦とは意味深だ。房fáng,床chuáng,亮liàngの韻を踏んでいる。

形意拳:映画『ザ ・ワン』や『グランドマスター』で形意拳は出てきている。『葉問完結編』『形意英雄』にもあるようだ。

 

 

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