笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「君花海棠の紅にあらず」とアニメ「天官賜福」、漢詩で「山河令」もはじめました。

君、花海棠の紅にあらず 42,43話 感想と京劇/映写機,蜘蛛の精の入浴,鉄砲玉

42話 君のために

銃に始まり、銃で終わった、三弾銃。

商老板の耳が治らず、祠堂で子供時代の悪行を懺悔している。なんでもご先祖さま頼みだったのね。ちがう。お供えの豚の頭を全て食べた、が一番のヒットだった。神妙に皆が立ち会っているのはなんなんだ。ここで流れるコミカルな音楽、好きよ。

そこから二旦那と馬に乗って狩りへ出かけている。これはOPのシルエットの場面かな。それにしても商細蕊が程鳳台に銃を向けると、ヒヤヒヤする。すると匪賊が襲い、商細蕊は程鳳台が撃たれる場面を目撃、怒りで匪賊に石を振りおろそうとすると……范漣やん。

「私を騙した」とブツブツつぶやくのが商老板らしい。騙されたことに怒り、程鳳台を川に突き落とす。そしてすっかり元気になり街中を走って帰る商細蕊。

様子がおかしい四喜児。瓶の水にも浸かり水しぶき……からの京劇ポーズ。梅毒の末期症状か?

舞台では「それでは交替で世話しよう」。いよいよ商老板は楊貴妃で舞台に上がろうとするが、いつもと顔つきが異なり緊張が伝わってくる。商老板は臆して上がれず。二旦那が「味わってきた屈辱や苦渋と私のためにー」と商老板の手を取って舞台袖まで導き、「楊貴妃様のおな~り~」と幕をあげる!楊貴妃が商老板におりてくる。

そこへ不審な影が……と思ったら、臘月紅。「海の孤島で,徐々に昇りゆく・・・」と歌う舞台の商老板を撃つ。いやいやいや、舞台上で商老板に危害を加えるのだけはやめてあげて。見ている方がしんどい。かつての師匠との良い想い出が、致命傷を免れさせたのか。

四喜児が姜家の前で唱っているが追い返される。そして臘月紅が次に向かう先は姜家。そこへ「芍薬の咲く庭の前を過ぎ・・・」と通りがかる姜登宝。

せっせと商細蕊に付き添う二旦那。「黄浦江に投げ込まれても許している」と。この頃の看護婦さんはケープなのか、可愛いな。「誰かが看病してくれるなど夢のよう」と話す商細蕊。悠長に寝込んでもいられなかったのね。いつも怒られていた葛運転手さんも、今日は晴れて鶏のスープを届けている。骨が多いのは侍女の指示なんじゃ……と邪推してしまうが、それすらも甘々の場面と化している。

四喜児が「これも美しい愛の物語と言えましょう。お嬢様を驚かせてはなりませぬ」と歌いながら見つける。「我が父上、もう二度と私はあなたに会うことができません」と。

姜会長の、何か言おうとするあの間がすごいな。会長を辞めたいと嘆願しても聞き入れられず「我が業の深きことよ/ 报应啊」と嘆く。

そしていきなりの薛社長。あら、六月紅ちゃんじゃないの、と思っていたらここに臘月紅があらわれる。六月紅、嫁いで穏やかな日々を過ごしていたのね、良かった良かった。そして臘月紅が、冒頭の商細蕊と同じく腕を振り上げたところで、師姉に・・・・・・。臘月紅の師姉に貰った腕輪が切ない。臘月紅、ここで散っちゃうのか。

そして鳳乙を程家に引き取ってもらうことにした商細蕊。鳳乙の身を案じての事だろうし、それだけ自身の気も確かになったのか。とはいえ視聴者にはイヤなフラグに思えてしまう。でも、程鳳台のサングラス姿はカッコイィ。

父と息子

姜登宝に関しては、37話の『汾河湾』のフリがあったので、誰かの息子が亡くなるのは定めで、姜登宝の横暴ぶりを見るにつけ予想はしていた。主人公をツライ目に遭わせた人物は、きっちり落とし前を付けられるのは中国ドラマあるある。

父と息子、という点では、義父・鄭委員と義子・商細蕊にもかかっていたのかな。こちらはなんとか命は取り留めたけれど。

一撃必殺と、2話で言っていた父・姜栄寿の言葉は、ここで果たされてしまったのか……。

臘月紅と六月紅と薛社長

臘月紅の鉄砲玉ぶりも想像されてはいたが、せめて察察児をかばって息絶える……とかだといいな、と思っていたら、まさかの最期だった。

もし薛社長が六月紅をないがしろにしていたら、臘月紅は六月紅を救うヒーローになっていた。けれど11,12話(六月紅の嫁入り)で出ていた潘金蓮とは異なり、六月紅は側室ながらも安寧に暮らせていたことで、臘月紅の空回りとなってしまった。

 


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42話の京劇メモ

・交替で:『貴妃酔酒高力士の一節。

・徐々に昇りゆく・・・:『貴妃酔酒』。このあとの歌詞には「皓月当空,恰便是嫦娥离月宫」とが出てくるのだ。そして臘月紅(12月)が……。そして劇中もおそらくは12月。

・姜家の前で唱う:『小上墳』第二場 簫素貞の一節。5話での前座の演目でもある。未亡人の簫素貞が夫・劉禄景の墓参りをしている(実際は生きており再会する)。ここで「私は今日他のところへは行きません。ひたすら劉家の新しい墓へ行きたいのです」と唱っているシュールさよ……。

芍薬の咲く:崑曲『牡丹亭驚夢』柳夢梅の一節。「芍薬」は別名「将離」とも言い、別れを示唆すると小説魔道祖師で学ぶ。

・愛の物語~お嬢様:荀慧生『紅娘 第六場 逾墙』の紅娘の一節。

・我が父上:『窦娥冤(とうがえん)』第十一場 窦娥の一節。『六月雪』とも言う。元曲最大の悲劇と評されている作品。若くして未亡人となった窦娥は冤罪で死刑となるが、冤罪ならば真夏に雪が降り血は舞いあがると言い残す。幽霊となった窦娥に懇願され、父親は裁判をやり直し冤罪を晴らす。この台詞はまさに登宝の父への思い……。

黄浦江:上海を流れる川。

ナースケープ:看護婦がはおる防寒用のウールで、外側が紺、内側が赤というのが主流。20世紀中頃によく用いられた。

・業の深い:『滑油山』に劉青堤の「叹人生如泡如影,如幻如梦,果然有报应循环」という台詞はあるが……。

四喜児の水浴び:唐突に水に浸かっていた四喜児。病気の症状に関する行動なのか?と思っていたが、七坊ちゃんがかつて評していた「西遊記の蜘蛛の精」がヒントになっていた。なんでも中国ドラマでこの「蜘蛛の精(配役は女優)」はお色気担当らしく、「ドラえもんのしずかちゃん」ポジションで、毎度毎度「入浴or水浴び」場面がもれなく付いてくるらしい。それをわざわざ踏襲しているのかと思えてきたのだ。多分。

姜登宝は『牡丹亭』の柳夢梅、四喜児は荀派『紅娘』の紅娘が用いられてきた。

 

43話 逆転

京劇の様々なドラマにあふれ、語られた回だった。


高楼から発声練習しながら、商老板は言う「寧九郎という名役者が女役のあり方を変えた人の心をつかめば梨園の王になれる。舞台の上では役者が王で観客は臣下だ。人の心を動かせる。至高の生業だ」。小周子の目に涙が光る。秦香蓮で泣き、陳世美で罵る、杜麗娘に心を痛め、冥王におののく。

二旦那がせっせと九官鳥に餌をやっていると、商老板の「つべこべ言うな、うるさい」を真似る九官鳥。

そして四喜児は病気が進行してしまうが、商老板は外套をかけてあげている。四喜児は「寧九郎」の言葉を聞くと、無垢なまなざしとなり、自分が寧九郎の喉を毒で壊そうとしたという噂を否定し「敬愛していた」と言う。そんな因縁も初耳だが、ここでも真実が歪められていたのか。そしてそれが寧さまと斉王の出会う縁となったというのか。


商老板は肩の力が抜けた様子で、衣裳などを着ずに歌だけの会を催す。そして周香蕓を紹介し「大登殿」を唱う。
 商「ひれ伏して恩典に感謝を」周「正室の座はあなたに」商「陛下と結ばれたのはあなたが先。3人で共に昭陽院を治めましょう。共に学ぶのです。鳳凰の女として陛下を支えるために」。

次には十九を紹介し、十九先生は嬉しさに誇らしさもにじんでおり、心温まる様子である。大聖も紹介してあげてとは思ったが、この回は女役の回ですものね。その姿はすっかり座長であり、ぐっとくる場面。


街角屋台でワンタンを食べる商老板と二旦那。二旦那も大衆料理が大丈夫になったのね。商細蕊は京劇を映像に残すことを決意する。そして日本は伝統芸能にも新しい風を取り入れようとするョ、商老板~。

映写機を見て「男が女役を演じるのは陰陽の逆転。舞台がカメラを通すと逆になるのは天地の逆転。舞台を映画にすれば偽りに満ちた逆転の世界」と語る。映写機に腕をかけ優しい眼差しで見つめる二旦那もカッコイィ。「輿を上げよ/ 摆驾」と。


そして姜栄寿は亡き息子に語りかけている。姜会長の祝宴には行かなかった商老板も、息子の弔問には出向いている。そこで語る、上海で崑曲の不評は「時の恐ろしさを自覚した」と。仙人歩法を映像に残したいと言われ、来し方を振りかえる姜栄寿。そして商老板は「師伯」と呼び、姜栄寿に師弟の叩頭をする。あっぱれである。

察察児が軍営に行こうとする二旦那に銃口を向ける。そんな察察児は16歳。

42話では祖先に懺悔していた商老板も、義父を「あの世」と言い切れる強さも得たのか。雪之誠が来ると、もはや接点を持つことが恐ろしい。

察察児と臘月紅とかつての商細蕊

察察児と臘月紅は鉄砲玉コンビだったのか! 慕うがゆえに、師弟は師姉に銃を向け、妹はに銃を向ける。16歳についての「何もかも知ったつもりで、白か黒でしか世界を理解しない」という二旦那の説が、我が身を振りかえってもそうだったのがなんとも歯がゆい。二旦那はそもそも妹の為に結婚をして家を守ったと言うに。ふたり共、相手への思い正義感からの行動だけに、手に余る。

思えば物語最初の頃の商老板も、こんな姿だったのだ。今ではすっかり大人になってしまったけれど。伝統に新しい風を吹き込みながら受け継ぐ商老板と、白か黒かで断罪する十代は露と消えていくこの対比。

そしてそれぞれ物語の発端と触れている。商老板は姜会長との齟齬からの和解。二旦那は家族を守るために選んだ道の中での妹からの断絶そういえば察察児は商老板に指輪をぶつけていたっけ。

そして四喜児の冤罪の件を思うと、新聞社に匿名で送られた写真も、姜登宝の仕業ではないようには思われるが、ないとも言いきれない。
臘月紅が商老板を撃ったのも、鄭委員長の指示のようではあるが、直接的な命というよりも、意を汲んでの行動にも見えなくもない。その真実はドラマだけでは我々にはわからない。そしてわからない、と宙に浮くよりも、どちらかに決めた方がどこか気持ちが楽になるのだ。


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43話の京劇メモ

秦香蓮:『秦香蓮』のヒロイン。夫の陳世美は出世のために、妻子の秦香蓮を亡き者にしようとした。

杜麗娘:『牡丹亭』のヒロイン。

冥王:『滑油山』、『目蓮救母』あたりか? 劉清堤が地獄で、油ですべる山へ行かされる。劉姓なのは偶然かしら。

・毒で壊そうとした:2話で二旦那が商細蕊にお茶を勧めた時に「役者は外ではお茶を飲まない」はこの事を言っていたのか。小来も「外ではお茶を飲まないで」と言っていた。そして先の『窦娥冤』の冤罪にも関連していたか。

大登殿:『武家』第二場。薛平貴西涼の王となったのちに皇帝となり、長く離れていた妻の王宝釧は皇后(商座長)となり、西涼王の時に妻だった代戦公主(周先生)も優遇される。「娘を産んでも役に立たない」と言っていた公主の父に、公主の母は「立派な娘ひとりは、息子十人に優る」と言ってのける場面があるのだ。女役のあり方を考えるこの回と重なっている。

昭陽院:皇后の住まい。

・輿を上げよ:『百花亭』。19話の安邸の劇楼でも商細蕊が言っていた。

 

 

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