笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「愛なんてただそれだけのこと」「宮廷の諍い女」を更新中。⇩カテゴリー選択はスマホでは左にフリックしてください。

君、花海棠の紅にあらず 49話最終回ラスト結末意味 感想と京劇/その後

このドラマの最終回は、見る人によって思いがわかれるであろう。私も前回放送時には記事も途中で思いがまとまらずに留めていた。今回のBS再放送で見えてきた自分なりの考えを記しておく。

49話「窮極の絆」

いよいよ最終回

坂田大佐はペニシリンと引換えに『鳴神』を舞うようにと言う。ここでは雲の絶間姫は身を挺して雨乞いをした仙女という設定のようだ。雪之誠は自分が前線に立つと言い、商細蕊に帰るよう突き放す。

ワタシの中ではロドリーゴと名付けている雪之誠。48話で説明。いろいろ元凶となったが、その献身ぶりは頑張ったゾ。商老板への思いは戦争でも変わらなかったんだね。

ペニシリンを届け、久々の商老板モグモグタイム。食べている姿を見ると少し安心する。

程邸ではまじない師が呼ばれており、商細蕊が北に向かって屋根の上に立ち、夜通し唱っている。「春の風が靄を吹き払う。窮地にある時 救いの神に出会えた」「悲しみや喜び 無情にも移り変わる 涙が衣を濡らす」 「欄干の花も 悲しげで涙しているように見える」「海の孤島で昇りゆく月」。ついに二旦那が目覚める。落ちやしないかとハラハラする。

会わずにフラフラとしながら帰る商細蕊と師姉の場面。師姉はふたりの関係を思わせるような男女双子の赤子を産んでいた。商細蕊は「憎いのは永遠の別れ」と。


ガウン姿で杖をついている二旦那。奥方が商老板にと広州行きの切符(洋六元五角)をくれる。奥方は侍女に言う「自分にとってはうま味でも、他人には違うかも」と。とにかくふたりが早く会わないかそればかりが気になる。

そして電話の前で躊躇している商細蕊に、電話が鳴り、二旦那の優しい声が響く「商老板?」。うぉぉ、しびれる。声で繋がる、というのも風情がありますね。二旦那が言いかけてやめるのに胸がいっぱいになる。商細蕊は「二旦那は菩薩様に守られています」と。

鳳仙伝』がいよいよ公開となり、バンバン入る花束の数々。この黄様とは、2話の宴で商老板にアンコールをせがんでいた黄坊ちゃんかな。「世出奇才四长趋古今、俊由天赋一笑倾国城」の対聯。

ついに商細蕊と二旦那がまみえる! 切符と株を渡す二旦那。爪をかむ商細蕊。「ダメなら香港へ遊びに行きます」と言っている。二旦那は「命と芝居の質問を今尋ねたら?」と。「二旦那、お元気で」と手を差し出し握手するふたり。九官鳥は「二爺万福 恭喜発財」と言い、「やっと縁起のいい言葉を聞けたな」と。二旦那が歩く廊下の壁には「瑞生祥」の文字が。

舞台がカーテンコールとなるが、商老板の姿はなく、駅へとひた走る商細蕊。駅出口から商細蕊の姿が見え、④消え、程鳳台と奥方がふたり駅でたたずむ。ラストの字幕では、香港での二旦那・七坊ちゃん・愈青のことだけが語られる。
(完)


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49話の京劇メモ

鳴神:閉じ込められていた龍を雲の絶間姫が放つ、ということから、この龍は中華なのかな。かの『潜龍記』は清の皇帝の話だった。意味合いが変わるので、雲の絶間姫の設定が宮女から仙女に変更されたのか。ペニシリン:青霉素、龍:青龍という青つながりも一瞬よぎったがどうかなぁ)

屋根上の魔よけ:【走兽】【脊兽】と言う。先頭は【骑凤仙人】、多いほど建物の格が高い。太和殿は10体あり、【龍、鳳、獅子、天馬、海馬、押魚、狻猊、獬豸、斗牛、行什】の順番となっている。

・春の風が靄を吹き払う:劇本では見当たらないが、『緑珠墜楼』でいいのかな?なんとなく二旦那との出会いを感じるのだが。

・悲しみや喜び、欄干の花:『緑珠墜楼』十八場、緑珠の唄。石崇の愛妾緑珠は、権力者の孫秀に横恋慕され断ったところ、石崇に兵をさしむけられたため、高楼から身を投げた。権力から逃れたという意味合いか。

・海の孤島:いつもの『百花亭楊貴妃の唄。

瑞生祥北京の「八大祥」(絹織物店)のひとつ。

最終回を考える

屋根の上で唱っていたのと、電話のやり取りが印象的だった。

二旦那の杖を見て、1話で商老板が姜会長へ贈っていた杖が結びつき、これだったのかと思わないでもナイ。杖と言えば、曹司令も陳紉香もついていたけれど。

“二旦那、商細蕊が帰りを待っていた『鳳仙伝』を観ようよ”と、と思ったけれど、寧九郎と斉王が最期は会わなかったのと同じで、ふたり手に手を取って走ったあの『鳳仙伝』が、二旦那にとっての『鳳仙伝』なのだろうし、また別の名の『鳳仙伝』が紡がれるのかもしれない。飛仙した、とか。

そして考えるのは、商老板は汽車に間に合ったのか、合わなかったのか

これはいろいろな想像ができて各個人に任されているけれど、

……駅出口で一目最期に視線を交わしたのだろう。
そして笑顔を交わし、商細蕊は自分の目指す方向へと歩き出した。
それをいつまでも見送る二旦那。

というのが自分的にはしっくりくる。

最終回を迎えるまでは考察する気満々だったけど、なんだかもうこれでいいんじゃないか、なんて気にもなっている。

100年の離別もほんのつかの間のこと/ 百年分离在须臾」。
共に生きていればいい、なのか、死んで再び巡り会う、なのか、がよくわからないが、やはりまた出会うんだろうな、きっと。

脚本家版ラスト

親切なファンの方が脚本家版ラストを紹介しておられ、早速観てみる。
泣ける~~~。

楽屋で商老板が二旦那に「お元気で」と握手を交わす場面から始まり、ドラマ編では流れなかったED『此生』が流れる。ごっそりカットされた部分は引用で記してみた。

bilibili【鬓边不是海棠红 】结局
中国サイトです。

①二旦那が座員たちを見渡し、杖をつきながら廊下を歩いている迄は、ドラマ編と同じだが、(細かいことを言うと、ここでの水雲楼の回想と「二旦那 お別れですか」はドラマ編のみ)

劇場出口前で二旦那が涙を浮かべ振り向く場面が入る。

振り向くと、小鳳仙な商老板が舞台に現れ、二旦那と商老板はふたりの出会いと同じく、舞台と客席で目を交わしており、商老板は唱い始める。

そして映し出される二旦那との回想で泣いた。その場面の上にED曲「♪我~不悔~~~♪」が重なるという絶妙さ……。

おまけにそこへ小鳳仙の「将軍、これより御身をお大事に/ 从今各保金石躯」が追い打ちをかける。そう、先ほど楽屋で商老板がかけた「二旦那、お元気で」が効いてくるのだ。

②車中の二旦那の頬に流れる涙と、商老板の小鳳仙に見入る。その商老板の視線の先には、二旦那が去って行った劇場出口が映り、小鳳仙の表情を通して商老板のあふれる思いが伝わってくる。

③そして商老板がいないカーテンコール。コートを翻しながら駅へとひた走る商老板の姿と、ドラマ版では回想は小来ちゃんから始まったが、こちらは二旦那との回想でまた泣く。
商老板が駅へ飛込んできてふたり目が合い商細蕊の笑顔でエンド。

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小鳳仙
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好、好、好~~~。
リピートしたくなる。というかこの特典映像がほしい。なんでこうならなかったのか。ドラマ編は商細蕊の笑顔のあとに付け加わっていますね。④は上の方に記載しました。

当ブログは劇中戯曲を考え続けているので、そうすると『鳳仙伝』の物語から類推すると、小鳳仙と将軍は北京を離れた後は離ればなれになったので、商老板と二旦那も今世では会うことはなかったように思えてくる。

しかし!! ドラマの中で何度も唱われてきた『百花亭』『長生殿』『牡丹亭』や、『西遊記』はすべて最後には再びまみえるハッピーエンドな物語なのだ。

商細蕊が最後に唱ったのは「将軍,  从今各保金石躯 百年离别在须臾」である。45話で商老板が唱うのを止めてしまったのが「将軍」だったことを思うと意味深い。
これは『長生殿・埋玉』の楊貴妃も、「百年离别在须臾」と唱っている。
『長生殿』の楊貴妃玄宗皇帝は、やがて月宮で再会するのである。
「出站口」。月の世界への出発なのかもしれない。

個人的にはさいごに二旦那が撮影したであろう商老板の映像を流してほしかったな。
とはいえ、商細蕊が生き残れるフラグはドラマの中でたっぷりあったので、いつか香港で再会も良いよな、とも思い始める。

原作小説のラスト

原作小説では、小来ちゃん(は生きている)にも知らされず舞台終了後に商老板は駅へと向かい、程美心も駅へと向かい不穏な空気が流れる中、程鳳台が変わらぬ思いで商細蕊を待っているところで終わる。

 

今回、ドラマを考察して考えてみた

ドラマ前半は、後半と対の構造ともなっている。

妓楼で芝居の為に桃児との風情のレッスンは、妓楼で二旦那に役者でなくとも運命の相手には会えると語られる。
・酒を共に飲んでいた老弦児は、牢獄で歌を共にする。
師姉との対立は、師姉と仲直り。
・平陽の爆撃は、留仙洞の爆破にも似て。
・城上で唱う虞姫は、程邸屋根上の商細蕊。
・役者を快く思っていなかった二奶奶も、情に厚いと言い。
・享楽にふけるだけだった范漣も、伴侶を得て身を固め。
・本物の衣裳や装身具にこだわっていた商老板が、虚構の世界に本物を使う必要はないと言い始める。
・商老板が姜会長に贈ったは、二旦那が杖をつき。
・二旦那が京劇の世界に迷いこむきっかけとなった百花亭「海の孤島で昇りゆく月」で、ついに二旦那が目覚める。
・宴で初めて握手をかわしていたのが、楽屋で別れの握手。
楽屋で初めて言葉を交わし、楽屋で最後にもなり。
劇を最後まで見た舞台上と観客席での出会いと、劇途中までしか見ることのできなかった舞台上と観客席での別れ。
・「不去」のマネキンにかかっていた商老板の服は、駅まで走る時に来ていた服のようにも見える
・南京から帰ってきた商細蕊を、二旦那は駅まで迎えに行っていた……
……そして商老板は駅まで走った。香港へ行ったのか行かなかったのか?


ドラマでは逆転の世界もキーワードになっている。今回、再放送をじっくり見直していて気付く。
2話終わりで演奏者が帰ってしまい、二旦那に「私と行こう」と誘われたのを「私も英雄だ」と断っていた
1話冒頭で小来が見つけた「不去」の書き置きと、妓楼での第一声の「不行」。

そう、となっているのだから、
商細蕊の答えは「」(いいですよ)の承諾と、「」すなわち行くなのだ。

かつて曹司令の問いに対して、芝居を取っていた商老板も、
二旦那の問いである「命と芝居の質問を今尋ねたら?」には、「」が答えなのだろう。

では、いつ行くのか。
あのまま一緒に汽車に乗っていくのももちろんアリなのだけれど、やはり水雲楼もまだ育ててほしい。

 

その後の物語

ここからはしばし私の想像するその後の物語。ちょっと小説『さらば我が愛覇王別姫』の要素も取り入れています。

二旦那は香港で七坊ちゃんや兪青とも合流して、映像の仕事も始める。
しばらく北京で公演していた商老板も、寒い時期になると声が出にくくなる。情勢も厳しくなり、ついに水雲楼は香港公演を決行する。「ダメなら香港へ遊びに行きます」と言っていたフラグを回収。

そして二旦那と再会。

香港料理に舌鼓をしながら、声が出にくいならと映像の世界へと誘われる。
そして時は流れ、大御所となった商老板の、若き映像が映し出され、fin。



今、ふたりはどうしているのか。
中秋の名月には、月宮でふたりは会っているのかな。

 

▼現代版二旦那&商老板デュエット

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▼黄暁明も出ている琅琊榜<弐>。

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