陳情令で好きな場面の一つが、第28話の夷陵で、藍忘機が阿苑に足を掴まれ魏無羨と再会する場面。藍湛のほころんだ顔と、三人のほのぼのとした様子に、何度も見返したものだ。
その中で阿苑が藍忘機に玩具を買ってもらう場面がある。藍忘機に促されて阿苑が屋台の中から欲しい玩具を指差した後、魏無羨と玩具の剣を交わしているショットが入り、剣と蝶と竹とんぼを買ってもらった事がうかがえる。ちなみに阿苑が一番始めに指差した物が何かは示されていない。
藍忘機の父親感が出ている良い場面でもあるのだが、あの短いショットでの剣のやりとりが何となく頭に残っていた。
そして第31話で、金子軒と江厭離に抱かれた赤ん坊の金凌が、他の物には興味を示さず「父親の剣“歳華”を握り、両親は大喜びした。きっと将来は偉大な剣仙になるだろう」という選び取り※1の場面を見て閃いた。あの阿苑の玩具選びも、選び取りだったのではないかと。
阿苑の年齢が当時何歳であったのか、魔道祖師・温苑では2歳※2で、陳情令・阿苑では5歳※3の年齢である。そんなに大きかったら選び取りではないのでは、と言われればそうなのだが、大事なのは、阿苑と金凌が剣を選び、成長して共に剣の道を歩んでいる、という事なのだ。
※1 金凌のくだりは【七日礼】と称されているが、中国の風習についてはよく分からず。日本での「お七夜」は子どもの名前を披露するお祝いとされている。
「選び取りの儀」は、選んだ物から将来を予想するもので、通例では1歳頃に行われる。
※2 原作第74章で【温情堂哥那个才一两歳的孩子温苑】とある。
また温苑の玩具は、【小木刀、小木剣、泥巴人(泥人形、土で作られた中国の民間玩具、天津泥人形が有名)、草織蝴蝶】とあるが、剣を交わす場面はない。
むしろ温苑が2頭の蝶を両手に持ち、左の蝶は恥ずかしそうに【我……我很喜欢你】(喜欢:好き)、右の蝶は嬉しそうに【我也很喜欢你!】(我也:俺も)と、一人二役で遊ぶ場面がカワイイのである。
※3 第45話の蓮花塢桟橋で、藍思追が温寧に尋ねた場面。「魏先輩は本当に幼子を土に植えたと?」は、中国語字幕では【魏前輩当真有把五歳小児当成萝卜種在土里過吗】とある。
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また過去篇のこの辺りでは、
- 魏無羨ー藍忘機ー阿苑
- 江厭離ー金子軒ー金凌
の三者が、対になっていないだろうか。
すなわち、この頃の
- 魏無羨と藍忘機
- 江厭離と金子軒
の仲というのは、類似しているように思われるのだ。
- 百鳳山で金子軒が江厭離に公開告白した時は、魏嬰と藍湛も「お前にとって俺はなんなんだ」問答をしている。
- 金子軒が江厭離の為に金鱗台に蓮を植えた頃、藍忘機が魏無羨の住処を訪問した。
- 金凌が生まれる前には、魏嬰が阿苑のことを「俺が生んだ」発言をする。
- 窮奇道で金子軒が亡くなり江嫌離との別れとなってしまったように、不夜天で魏無羨は崖から落ち、藍忘機と前世ではもう会えなくなってしまった。
そうして金凌と阿苑は対比の存在になっていく。
金凌は父を失い、阿苑は父を得たのだ。
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