WOWOWで陳情令第36話を初めて観ていた時は、藍湛の酔っ払う場面からのスタートで、久しぶりにゆっくり観れるなぁとのほほんとしていた。
すると怒濤の義城編が始まり、続きが気になり深夜にもかかわらず4話初リアタイしてしまった。一気に駆け抜けたので、視聴後はツラいというより、脳の情報処理が追いつかずしばらく寝つけなかったものである。
原作でも未読の部分だったので、初視聴時は鮮やかな太刀筋で切られたかのような感覚が残り濃密な物語であった。あとで血(という名の逆巻く興奮)は噴いたけれど・・・。
そんな太刀筋を体感してほしいので、義城篇を視聴して切られ済みの人と、あるいは切られる予定のない人のみ進んでください。まだ観ていない人は、視聴後にまたいらしてくださいませ。手当いたしまする。
義城編① 陳情令・魔道祖師カルテット
ドラマ「陳情令」では10話,18話,36話~39話。
原作小説「魔道祖師」では29章,30章,33章~42章(草木1~10)。(日本語版では七,八章)
義城編は主な登場人物が
暁星塵ー宋嵐ー阿箐ー薛洋
と4人だけなので、関係性がつかみやすい。それぞれをabcdとしてその関係を考えてみたい。abcdが少しうるさいが、しばし辛抱して読んでもらいたい。
a暁星塵
b宋嵐c阿箐d薛洋に好かれる。
b宋嵐は大切な存在。b宋嵐の一族である白雪閣が滅ぼされたのはa暁星塵のせいだと、b宋嵐がa暁星塵を責めて関係が悪化する。それが由縁でa暁星塵がb宋嵐に身体の一部を譲る。それを譲ったことにより悲劇にみまわれる。
c阿箐とd薛洋を同じように気にかけている。
b宋嵐
a暁星塵に身体の一部を譲られた事に気づかず、仲違いしたあとは離ればなれとなり、a暁星塵を探している。
その原因となったd薛洋を憎む。
c阿箐
物語の俯瞰的な視点を持つ。
a暁星塵をなにかと助ける。一連の事情を知っており、d薛洋の片を付けようとして犠牲になる。
d薛洋
a暁星塵に助けられ慕うが、a暁星塵を窮地に追いこむ存在でもある。
b宋嵐にa暁星塵が身体の一部を譲った事を告げる。b宋嵐や正義を自負する人を嫌っている。
なぜ、aたらbたら、ややこしい表現を用いているかと言うと、次回、少しでも分かりやすくするための導入でもある。
次に、この義城編カルテットと相似した「陳情令・魔道祖師」での関係について取りあげたい。
2020年8月13日投稿
金丹編② 陳情令・魔道祖師カルテット
そもそもこの二組のカルテットを思いついたのは、義城編の終わりである第39話を放送週に見返していた時であった。(経緯は忘れたが、江澄に金丹について告げるのは温寧だと、すでに知ってしまっていた。本来は第46話)
陳情令第39話、皆で阿箐の墓をたてたあと刀霊が反応し、魏無羨と藍忘機が連れ立って骸を探しに義荘へと向かう。その二人の並ぶ後ろ姿を、しばし温寧が見送って目を伏せる場面がある。温寧の姿からどう想像するかは人それぞれである。
私は温寧のその寂しげな様子を見て、温寧の記憶の中では「あの隣にいたのは自分だったのにな・・・」と思い出しているのかと想像し、でも温寧は天使※だからそんな気持ちは出さないよね・・・と思った所で、ふと考えた。※中国では温寧は小天使と呼ばれている。
温寧が薛洋のように、魏無羨を独り占めしたいと思ったら、忘羨と温寧は恐ろしい三角関係の展開となり、行く末は地獄になっていたのではないか。となると、温寧が薛洋のポジションにもなりえたのかと。
そもそも魏無羨にとって暁星塵は、包山散人の師叔(母が包山散人の姉弟子)である。
その包山散人の子弟たちが、真相を知らせずに移植した宋嵐と江澄。
そして宋嵐に目のことを告げるのは薛洋で、江澄に金丹のことを伝えるのは温寧。
阿箐と温情は、全体を見通しており、名前の箐qìngと情qíngの音も似ている(四声は違う)。
そうして
a暁星塵ーb宋嵐ーc阿箐ーd薛洋
a魏無羨ーb江澄ーc温情ーd’温寧
の対が思い浮かんだのだ。
それぞれをabcdとすると
a魏無羨
b江澄c温情d温寧に好かれる。
b江澄は大切な存在。b江澄の一族である雲夢江氏が殺されたのはa魏無羨のせいだと、b江澄がa魏無羨を責めて関係が悪化する。それが由縁でa魏無羨がb江澄に身体の一部を譲る。それを譲ったことにより悲劇にみまわれる。
c温情とd温寧を同じように気にかけている。
b江澄
a魏無羨に身体の一部を譲られた事に気づかず、仲違いしたあとは離ればなれとなりa魏無羨を探している。
その原因となったd温寧を憎む。
c温情
物語の俯瞰的な視点を持つ。
a魏無羨をなにかと助ける。一連の事情を知っており、d温寧の片を付けようとして犠牲になる。
d'温寧
A魏無羨に助けられ慕うが、a魏無羨を窮地に追い込む存在でもある。b江澄にa魏無羨が身体の一部を譲った事を告げる。
b江澄や正義を自負する人を嫌ってはいない。
abcdが前回説明したものと、温寧の太線部分以外は全く同じ物語となっており、
義城編の物語が、金丹にまつわる物語と、相似形になっているのである。
魏無羨と暁星塵二人の義と優しさはもとより、阿箐が健気なように温情もそうであり、宋嵐が物語でかなり気の毒だと思われるように、江澄も同じである。薛洋と温寧が立場は似ているものの、悪魔と天使の対比になっているのが、この二組のカルテットの色合いの違いであり醍醐味でもある。
次にあげるのは、カルテットを音楽にたとえたものである。趣味に走っているので、興味のある人はどうぞ。
義城編カルテットの弦楽四重奏
そんな彼らの関係はカルテットのようだ。カルテットとは四人組で音楽を奏でるものである。
四重奏の場合は四つの楽器によるアンサンブルであり、弦楽四重奏は、二つのヴァイオリン・チェロ1・ヴィオラ1の組合せによる室内楽が代表的である。
義城組の四人を弦楽四重奏とすると
- 暁星塵:第一ヴァイオリン
- 宋嵐:第二ヴァイオリン
- 阿箐:チェロ
- 薛洋:ヴィオラ
の役割を担っているように思える。
それぞれ弦楽四重奏の楽器が受けもつ役割は、本より引用して説明する。
第一ヴァイオリン(暁星塵)は、アンサンブルのリーダーであり、テーマに対する主導権、テンポに対する責任があり、伴奏にまわることも時としてある。
第二ヴァイオリン(宋嵐)は、第一ヴァイオリンより低い音域を受けもつことによって、全体の響きを充実させながら高音域から中音域へと円滑に移行していくことを可能にする。それらにより音の同質性と充実感が得られる。
チェロ(阿箐)は、低音部でヴァイオリンを補足している。
ヴィオラ(薛洋)は、二つのヴァイオリン(暁星塵・宋嵐)とチェロ(阿青)を結びつけ中央に位置し、ヴァイオリンの軽快さとチェロの重厚さの中間的な音を響かせる。
これら楽器の役割についてはなんとなく伝わり、義城組が奏でる響きを感じてもらえればよい。主眼は前半のabcdの関係性である。
陳情令義城組キャラソング「孤城 LonelyTown」
歌:孫伯綸 ft. 陳卓璇 (阿箐役)
YouTube 義城編MV(3:44) 胸にせまります・・・
金丹カルテットの弦楽四重奏
作家スタンダールは『有名なる作曲家ハイドンに関する手紙六』の中で、カルパーニの一節を取りあげ、ハイドンの弦楽四重奏曲を四人の人物が会話している様子に例えて述べている。その内容が金丹カルテットの人物像と似ていたので、こちらも引用しておく。
第一ヴァイオリン(魏無羨)は、みずから話題を提供しながら会話をリードしていく。機智に富んだ話し上手で才気煥発な男性のようだ。
第二ヴァイオリン(江澄)は、第一ヴァイオリンの友人で自分を抑えもっぱら友人を際立たせようとする。自分の意見を主張するというよりは、むしろ他の人たちの言うことに同意しながら会話を支えているのだった。
チェロ(温情)は、学問のある語り手である。簡潔であるが真理を秘めた印象深い金言によって、第一ヴァイオリンの言葉を支援している。
ヴィオラ(温寧)は、少しおしゃべりなお人好しで、会話に一種の優しさをもたらす。周囲はほっと息をつく余裕を見出すことができる。ヴァイオリンよりもチェロのほうがお眼鏡にかなっているという、ひそかな好みも読み取れる。
スタンダール『ハイドンに関する手紙6』(大岡昇平全集1,筑摩書房,1996)
シルヴェット・ミリヨ『弦楽四重奏』山本省訳,(白水社,2008)
金丹カルテットの人物像を説明するのに弦楽四重奏を用いてはみたが、このカルテットは演じた役者たちがいずれも歌い手揃いなので、四重唱はどうだろうか。
- 魏無羨(肖戦):ソプラノ
- 江澄(汪卓成):テノール
- 温情(孟子義):アルト。温情役モン・ズーイーの歌唱力は・・・な動画を見たが、魔道祖師の温情ならアルトも歌いあげてくれそうである。
- 温寧(于斌):バス
南京演唱会などでも、忘羨・陳情少年以外はソロで歌っているものばかりだが、重唱も聴いてみたいものである。
江澄キャラソング「恨別Parting」 歌:江卓成(3:42)
そして義城編四人は、もう一組にても考えられうるので、次回に取りあげてみたい。
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