笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「君花海棠の紅にあらず」とアニメ「天官賜福」、漢詩で「山河令」、「瓔珞」もはじめました。

江楓眠の魏無羨溺愛説を検証する/紫蜘蛛,江楓眠それぞれの理想②

江楓眠と虞夫人と蔵色散人①のつづきです。

さて、物語の中でたびたび噂になっていた江楓眠・魏無羨を溺愛するの説

江楓眠贔屓&義侠好きとしては、陳情令では「そうではなーい!」と意気ごんでいたのだが、アニメ羨雲編第5話を見て、「ハイ、溺愛でした」と180度、あっさり方向転換いたしました……。アニメは魏無羨溺愛説を支持していますね。アニメ江楓眠が麗しいのでまぁヨイのですが。

それでも一応、陳情令や原作解釈を唱えておきます。江楓眠贔屓が考えるとこうなるという一例デス。

江楓眠と魏無羨の関係

江楓眠は、血縁社会な仙門の中で義侠寄りの人だから、すこし世家の宗主としては異質な存在であったのかもしれない。
魏無羨は思慕をよせた女性の息子やもしれぬが、なにより信頼できる家臣、配下(魏長澤)の息子でもあるのだ。放っておけるわけがない。

そして育てていく中で魏無羨のずば抜けた素質を見抜いただろうが、その才能の危うさも同時に考慮に入れたと私は思いたい。江楓眠自身の仙師としての修為はどれほどだったのか不明だが、名伯楽ではあったのではないかと思っている。

また魏無羨は天才なので、それほど指導者の影響を受けないかもしれないが、天才と言えど、食うに困るような環境ではその才能すら発揮できないのである。第1話で復活したての鬼神・魏無羨が空腹で死んでしまうのではと、面白おかしく表現されている場面があるのも、この事に通じているような気がしている。
そしてなにより魏無羨の素質は、雲夢江氏の家訓と非常に相性がよく、申し子といってもいいくらいでもある。

江厭離の婚約解消を考えてみる

座学で魏無羨が金子軒と喧嘩して、江楓眠が飛んできた件(原作第18章)。はじめは、そういう危うい魏無羨だからこそ保護する必要がある、と迎えにいったのかと思ったが、江楓眠は「雲夢江氏の子弟は外の嵐に耐えられぬほど弱くはない」(陳情令第11話)と言うくらい信頼していたハズである。となると、ここはむしろ江厭離の婚約解消の件を直々に申し出に行ったのかという気がしてきた。

では娘の婚約解消に動いたのはなぜなのか。と考えると、江厭離や金子軒が、自分たちのような夫婦となるのを止めようとした、とも想像してみた。アニメでは江楓眠が虞夫人に歩み寄ろうとしているが、陳情令ではそうは描かれていない。

陳情令では藍啓仁が陰鉄について相談しているので、雲深不知処に江楓眠がわざわざ来たのはその件があったからかもしれない。また、蘭陵金氏に思うところがあった可能性もあるが、そのあたりは描かれておらず不明なので、想像するしかない。

この時点で婚約解消すると、その原因を作った魏無羨に対して虞夫人はいっそう腹立たしい思いになるであろう。なんといっても子供同士の婚約は、原作ではかねてからの夢であり、江氏の勢力維持拡大という観点からも願ってもない良縁なのである。そのリスクを取ってでも江楓眠が婚約解消を持ち出したのが私にはひっかかかり、よくぞ虞夫人の怒りがあの程度でおさまったものだと思えるほどである。

そして親同士が決めた婚姻話なので、江厭離の意見は聞くはずもないだろうが、ここで江厭離にどうしたいかと尋ねたら、どうしたのだろう? よくわからない。


そして日本語版小説を番外編まで読んで、ついに原作金光善アレルギーを発症した私は、この時に江楓眠が雲深不知処へ飛んでいったのは、「もともと金光善と姻戚関係を結びたくなかったから」ではないかと思うようになった。「虞紫鳶と合わない」と判断できていた江楓眠である。当然、かねてから「金光善とも合わない」と思っていたとしても不思議ではない。あれだけ家訓を大事にしていた江楓眠としては、蘭陵金氏の家風とは相容れないと思っていたのではないか。今ではそう考えている。2021.8.31追記。

江楓眠にとって大切なことと江澄

江楓眠にとってなにより大切にしていたのは、雲夢江氏の家訓、というマインドを受け継ぐことだったように思える。その江氏家訓の体現したかのような魏無羨は、申し分なかったのであろう。父親の魏長澤がその薫陶をうけていたことも大きいだろうが、もしかしたら蔵色散人という人自体が、雲夢江氏家訓のような修師で、そこに江楓眠が強く心惹かれたのかもしれない。

江楓眠は特に修為についてはこだわらないが、次期宗主なだけに江氏家訓は継いでほしい気持ちが強くて、江澄に厳しく接したのだろう。

そもそも屠戮玄武を倒した時でさえ「よくやった / 做的不錯」としか言わなかった江楓眠である。原作第56章ではあれは褒め言葉というより、そんな時でさえその程度、という表現をされている。「17歳が400歳あまりの巨大妖獣をたおした。「做的不錯」程度だけであろうか」とある。
実のところは江楓眠は普段から褒めるというよりも、雲夢江氏家訓にまつわることを注意していただけだろうが、江澄にすれば一切とがめられない魏無羨と比べてしまうだろうし、虞夫人の叱責ばかりが残っていく。

江楓眠の江澄に対する思いであるが、これは原作第58章のいまわの際が光っている。江澄と魏嬰を紫電で縛って戻らないように言い、「江楓眠は江澄を見つめ、突然手を伸ばして、しばしその手を宙に止めたのち、ゆっくりと頭をなでた」。魏無羨には目を向け言葉をかけただけなのである。

陳情令第15話でも、江楓眠は江澄と江厭離の頬を触り、魏無羨には肩に触れているだけなのだ。いろんな意味で泣ける……。

紫蜘蛛にとって大切なことと蔵色散人

一方、虞夫人は江氏の家訓よりも仙門の血縁主義や修為を重んじている。
雲夢江氏を盛り立てよう、という意味では、この夫婦のベクトルは共通していた。しかし、次期宗主への期待像は大きく違っていた。それが江澄にしたら自分を否定されるばかりに感じたのだろうか。


虞夫人にとって魏無羨、を考えると、自分の夫のかつての思い人の子、というよりも、蔵色散人が自分よりも優秀な修師だった、という点が大きいように思える。それは「母親が違うからね」と言う言葉にも表われている。

虞夫人の気位と言ったらそれはそれは高く、峨眉山(3099m)くらいに高い。眉山虞氏は名家とあり、虞夫人の言動から察すると、十大世家には入っていそうな家名のようでもある(これは想像)

なんと言っても虞夫人は「紫蜘蛛」という号があり、結婚してからも夜狩へよく行く位に、仙師であることを誇りにしている。

その虞夫人がある意味、負けを認めていると思われる発言をするということからも、蔵色散人は相当すぐれた修師であったことがうかがえ、抱山散人の愛弟子というネームバリューも感じられる。もしかしたら虞夫人が同世代の女性仙師では敵なしだったのが、蔵色散人の出現で万年2位になった可能性もある(これは私の想像)。そしてそれが誇り高い虞夫人にとって何よりも腹ただしく、そのとばっちりは江澄に向かったのではないか。

家柄の良い江厭離がさほど修為が高くないために「平々凡々」評価となるということは、この世界では「修為が高い刀剣の遣い手」であることがなによりも高く評価されていることがうかがえる。

虞夫人を見ていると、修為を学業成績に置き換えると、現代で言えばお受験ママの姿にも思えてくる。江澄が魏無羨に負けている姿を見ると、自分が蔵色散人より劣っているように思えるのではないか。虞夫人にとって、魏無羨はそんな存在だったと思われる。それは相当つらいし視界に入るだけで苛ただしいだろう。そして江澄にとっても受難である。

虞夫人のどこまでもナンバーワンを目指す姿は、頼もしいリーダシップとも言え、実に宗主向きなのではある。しかし双璧・双傑とは異なり、宗主ふたりは並び立ちえない。

江楓眠と虞夫人の結婚をあらためて考えてみる

江楓眠や江厭離のようなタイプは、結婚に向いた性格に思えるのだが、これだけ価値観が異なる相手とはやはり相性が悪いと言うべきか。そして結婚はかけ違えてしまうと難しいのだなぁと思ってしまう。

虞夫人が江楓眠に好意があっただけに、噂(思いこみ?)に惑わされて、江楓眠と向かい合えなかったのかな、と思えてくる。夫婦は相手が思わぬ方向に出てしまうと、それに呼応するような態度にでてしまい、その積み重ねで大きくすれ違うことがある。むしろ家同士の政略結婚と割りきっていれば、ここまでこじれなかったようにも思われるのだ。

よくわからないのは、この結婚には虞夫人の意思はどの程度関わっていたのか、ということである。

  1. まったくの家同士の結婚である。
  2. たまたま家同士で話がまとまり、それぞれ相手に不足を感じていたが、虞夫人が自分の好意に無自覚だった。
  3. たまたま家同士で話がまとまったが、実は虞夫人がほのかな好意を寄せていた。
  4. 好意があり、婚姻話になるようもっていった。

ゴシップ好きそうな王霊嬌は、④のようなことを言っていたが、王霊嬌が言うとアヤシくも感じる。温家が江氏夫婦の噂話に詳しいのは、眉山が岐山と近いからなんだろうか? しかし④にしてはこじれすぎているので、②あたりなのだろうか。

つまり、若き金子軒=虞夫人というもの。金子軒は自分の気持ちを自覚して素直になったのでうまくいったが、虞夫人は自分の気持ちに気付きにくかった or 気づいてもどう表現したらよいのか分からなかったのかもしれない。そう考えるとアニメ前塵編第6話で、「阿離はいい子よ。子軒も好きになるわ」と言ったのは、虞夫人も江楓眠の良さに途中で気づいた、という事のようにも思えてくる。


物語の中で、溺愛説を持ちだしたのは、記憶にある限りでは金光善・金子軒だったように思う。しかしその噂の発信源は、虞夫人と仲の良い金夫人にちがいない。それは噂の発信者としては信用しにくい。

中立の立場であろう藍啓仁あたりが語ってくれるのが一番信憑性が高いのだが、藍氏家規もあり口も重そうである。
ここはひとつ、藍先生とお酒を飲む席を設けるしかなさそうである。が、そんな日は来るのだろうか。

 

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