笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「愛なんてただそれだけのこと」「宮廷の諍い女」を更新中。⇩カテゴリー選択はスマホでは左にフリックしてください。

孤城閉49話,50話,51話感想/陶淵明 閑情賦,蘇舜欽 滄浪亭,楚辞 漁父

49話感想

董秋和は「皇后様は陛下を深く愛するがゆえに、周囲が見えなくなっています。皇后様は妻である前に臣下という身分で、陛下の憂いを解くことが職務、悩みは増やせない」と直談判。

 陛下にも皇后の翻訳をしており、健気な真心好きな陛下なら、正直、コレだけで董秋和をお召しになるのでは……と思ってしまうところ。
 「皇后への忠誠には妬心が湧くな」は、自分にもそんな臣下が欲しいからなのか、董秋和から忠誠を尽くされたいのか……茂則も皇后派になっている事を考えると、前者なのかな。

董秋和を通して、お宝箱の書も返される茂則。生き埋めにされた廃后の顛末を知っているので、なんとしても曹皇后を守りたい。「陛下はただ朝廷、後宮と天下の均衡をお求めになるだけ」と返す茂則。自分の身よりも皇后を守りたい忠義モノふたりな茂則と董秋和。

陛下と皇后の熟年新婚カップルは、やけ酒飲み飲み。皇后の罰受けます攻撃に対して、「私の話を聞いていたか?」と両手で身ぶりするのが、なんだか面白い。
 いや、だからなんですぐに陛下は皇后に対しては怒るのさ。陛下が怒ったらコワイのよ。張妼晗にはヨチヨチするのに。

砂糖漬けの店が一家離散したことや好水川で戦局を読み違えたことは、趙禎の心の重しでたまった鬱憤。梁懐吉のことがわかる日も来るのだろうか。

趙禎は曹丹姝に「臣下であるまえに私の妻だ、面倒事や不満、過ちがあった時は、夫と分担すれば面倒事を処理できるのだ」と語る。ようやく思いが伝わったか?

夏竦は昔から聖人を憎んでおり、口先だけで道徳を重んじると、范仲淹や欧陽修の名を挙げる。欧陽修はともかくこのドラマでは范仲淹は道徳を重んじてるよ?

夏竦は19歳の頃から堯や舜、周公旦は聖人という説を疑っていた。それを調べるために古文を集めだし、堯や舜には頑固で独善的な一面、周公旦は貪欲好色で自分と同様なのか調べた。陛下が堯や舜に見いだそうとしたのと反対だわね。今度は猫目石の耳飾りを賈玉蘭に贈っている。19歳って結婚を言い渡された頃だっけ?(覚えてない)

明鎬が夏竦に妨害を受けていたのは事実であると陳執中が上奏するも、のらりくらりと陛下は開封の小報に言及、桂花糕松の実の飴を買っていたらしい。それを受けて何郯は蘇舜欽に触れ、3年経ち蘇舜欽にも復帰のチャンスが巡ってきた。

張承照の部屋には五石散と催情香があった。


陛下は咳が出るので、苗心禾は甘草山査子を持ってくるようにと言う。

陶淵明の詩を反芻していた徽柔、「五柳先生伝」に「帰去来の辞」「山海経を読む」や「閑情賦」。だいたいこういう列挙する時には、本命は最後よね。

徽柔は「願わくば~」と詠じる。(下記にまとめた)
詠む時に、徽柔の襟や髪が映るのが、懐吉の思いを表わしているようでなんともいえない。

そして”髪をとかしてみたい”とある中、この詩と玉の櫛を贈る曹評のセンスと言ったら……。
あれま、即効、陛下にバレてるわ。


50話感想

陛下は激オコして、曹皇后はしゅんとしているが、以前よりも話し合える関係が築けているようだ。

茂則は賈玉蘭の西夏からの塩の流れはつかむも、証拠は得られない。

張妼晗に贈られた簪は、真珠の垂れ飾りの簪。揺揺はゆらゆら揺れるものが好きだったとは、揺揺という名前が付いているからかしら。許蘭苕の赤子を揺揺と名付けると言われるのはホラーだ。


徽柔が髪を梳りながら「北風~」と詠じる。(下記にまとめた)
「この詩のように私を想ってくれてる?」と。うーん、曹評はきっと、父親にど叱られてビビっていそうだけどなぁ……。

 

張方平が呼ばれ、河北の地震は夏竦の不正が引き起こしたと上奏されているらしい。河南省黄河の土手改修の左遷となるも、病気のため都に残留。夏竦は難解な古文を解釈した功績と、西夏との戦で守備派となっているけれど、あの時確か夏竦は風見鶏していたと記憶しているのだが。私の記憶違いか、陛下の記憶の上塗りか??「もめたら必ずやり返す」のはその通りだね。

善悪をつけようと結党することは、権力や財のための闘争より朕を不安にさせる……。財も善も、主張が極端になれば悪となる。「好き嫌いで決めず公平に処置をせよ」と茂則に言い渡す。まぁ確かに正義の御旗の下でなされるものほど容赦ないのだが、それを言う相手が茂則なのがね……。陛下の寵愛も極端となれば悪となってるよ~だから茂則は動いているんだよ~。

文彦博は妻を張氏に親しくさせていたが、そうでもなかったらしい。

最近、賢い徽柔が詠じる。「鄭声を放ちて佞人を遠ざけよ、鄭声は淫、佞人は殆うし、治国には佞人を遠ざけよ、佞人は政を害すからである」。

論語 衛霊公第十五の十一』
颜渊问为邦。子曰:“行夏之时,乘殷之辂,服周之冕,乐则韶舞。放郑声,远侫人。郑声淫,侫人殆。”

夏竦は、出世して愛妻と共に年老いるのが夢だった、人生は思いどおりにならぬのだな、と語り、そして流れる夏竦ラブソング『鷓鴣天』。

一方、蘇舜欽は病で亡くなる。妻の有蘅は皇后の親友。張氏の友の夫は都に残れて、皇后の親友の夫は左遷された。有蘅が蘇舜欽に嫁入りする前に、曹丹姝とキャッキャッと恋バナして楽しげだったなぁ。蘇舜欽は出世や寿命はままならなかったかもしれないが、愛妻という面では満たされていたのか。

まんまと茂則の術にハマり、許蘭苕と女官のラインが繋がる。許蘭苕はいつ捕まっても良いけれど、身ごもっているのだけが気になる。赤子に罪はないから妊婦さんは大事にしてあげて~。

そしてやっぱり李瑋の絵は予想通りにうち捨てられる……。教養はあるけれど徽柔ちゃんは、やはり張妼晗と似ているよね。好き嫌いがハッキリしていて愛情表現も激しい。


陶淵明漢詩について

陶淵明魏晋南北朝時代の詩人で、隠逸・田園詩人の宗とされている。林田氏の『陶淵明全詩文集』にいずれも全文載っているので、興味のある方はどうぞ。

帰去来の辞』が有名で、仕官するも性分に合わず、田舎暮らしで余生を送る自らの自然回帰的な生き方を語ったもの。

『五柳先生伝』。五柳先生とは陶淵明の自称で、読書や酒が好きな己の様子を描いたもの。読書で「自分の気持ちとぴったり合うことがあると、もう嬉しくてたまらない」とあるのが、親近感を覚える一節である。

山海経を読む』。『山海経』を読みその感興を述べたもの。個人的には其の十三が気になった。特にドラマに出ているワケではない。

陶渊明(魏晋代)《山海经》 其十三
岩岩显朝市,帝者慎用才。
何以废共鲧,重华为之来。
仲父献诚言,姜公乃见猜;
临没告饥渴,当复何及哉!

宰相はおごそかに王城にあらわれるが、帝王はそのような人材を登用するのに十分慎重でなければならぬ。
どうして共工と鯀は追放されたのか、その代わりに舜が登用されて堯帝を助けたのである。
管仲はまごころのこもった進言を桓公にさし出したのに、桓公はそれを信じなかった。
死ぬ間際に飢えと渇きを訴えたが、どうして間に合うはずがあろうか。
林田愼之助『陶淵明全詩文集』2022 筑摩書房


『閑情賦』

願わくば衣の襟となり、残り香をかぎたい。悲しくも宵に脱ぎ捨てられ、秋夜を耐え忍ばねばならぬ。
願わくば衣の帯となり、しとやかな腰を束ねてみたい。季節が移り変われば、古い衣は脱ぎ捨てられる。
願わくば髪に塗る油となり、その髪をとかしてみたい。悲しくも沐浴の際に、洗い流されてしまうだろう。
願わくば眉に塗る黛となり、その視線に沿いさすらいたい


北風凄凄たり。炯炯として眠れず、衆念が去来する、起きて帯を結び晨を伺えば、繁霜が白く輝いている、鶏は羽を収めていまだ鳴かず、笛は遠きに聞こえて清哀たり」。

 

陶淵明(宋代)『閑情賦』
(略)
愿在衣而为领,承华首之余芳;悲罗襟之宵离,怨秋夜之未央!

愿在裳而为带,束窈窕之纤身;嗟温凉之异气,或脱故而服新!
愿在发而为泽,刷玄鬓于颓肩;悲佳人之屡沐,从白水而枯煎!
愿在眉而为黛,随瞻视以闲扬;悲脂粉之尚鲜,或取毁于华妆!
愿在莞而为,安弱体于三秋;悲文茵之代御,方经年而见求!
愿在丝而为,附素足以周旋;悲行止之有节,空委弃于床前!
愿在昼而为,常依形而西东;悲高树之多荫,慨有时而不同!
愿在夜而为,照玉容于两楹;悲扶桑之舒光,奄灭景而藏明!
愿在竹而为,含凄飙于柔握;悲白露之晨零,顾襟袖以缅邈!
愿在木而为,作膝上之鸣琴;悲乐极以哀来,终推我而辍音!

(略)
北风凄凄,炯炯不寐,众念徘徊。起摄带以侍晨,繁霜粲于素阶。鸡敛翅而未鸣,笛流远以清哀
(略)

賦は長いので他の部分は省略。
「願わくば~」にはまだまだ続きがあり、
寝台の(むしろ)
絹糸なら(くつ)
昼には
夜には(ともしび)
竹なら団扇
木ならの琴
とどこまでも一緒にいようとする、ど根性ガエルぶりが描かれている。

序文にはこの賦を作ろうとした思いが述べられている。

その昔、張衡は「定情の賦」を作り、蔡邕は「静情の賦」を作った。(略)。はじめは自由奔放な思いを述べていたが、結びのほうになると平静にもどってきた。はやりたったよこしまな心を抑えて、まことに諷諫に役立てようとしたのである。(略)私も田舎住まいで暇が多かったので、筆をとってこれを作った。(略)
林田愼之助『陶淵明全詩文集』2022 筑摩書房

とあり、つまり上記の抜粋部分は「はやりたったよこしまな心」なのですね?暇が多かったので作ったんだ、などなど興味深い。

51話感想

徽柔が曹皇后に届いた文を読みあげる。
太湖の岸 瀟洒にして、洞庭の山淡く佇む、魚龍の隠るる所、煙霧深く閉ざす渺弥の間、范蠡と張翰を思えば、急ぎ漕ぎ来る舟あり。鱸を載せて戻る。落日風雨荒れ、帰路渚を巡る、丈夫の志盛んなるべく閑なるを恥ず、壮年何事ぞ憔悴し、華髪朱顔に改む。釣り糸を垂れるも鴎の疑わんことを恐る。官職を去るに忍びず。棹さして廬荻を抜け、言葉なく波間を見る」。

 

苏舜钦(宋代)『水調歌頭 滄浪亭』
潇洒太湖岸,淡伫洞庭山。鱼龙隐处,烟雾深锁渺弥间。方念陶朱张翰,忽有扁舟急桨,撇浪载鲈还。落日暴风雨,归路绕汀湾。丈夫志,当景盛,耻疏闲。壮年何事憔悴,华发改朱颜。拟借寒潭垂钓,又恐鸥鸟相猜,不肯傍青纶。刺棹穿芦荻,无语看波澜

「楚辞」滄波の水、清まば冠の紐を洗い、濁らば足を洗う

屈原『漁父』
渔父莞尔而笑,鼓枻而去,乃歌曰:“沧浪之水清兮,可以濯吾缨;沧浪之水浊兮,可以濯吾足。”遂去,不复与言。

滄浪の川の水が澄んでいたら、私の冠のひもを洗うことができるし、滄浪の川の水が濁っていたら、私の足を洗うことができる。
星川清孝『古文真宝』2002 明治書院

己は無実だと世に訴えるため。屈原は清廉潔白な自分の立場に固執するが、漁父は世の中に道理が行われているときは冠を整えて仕え、世の中が乱れているときには隠遁するのがいいとうたう。

蘇舜欽は、隠居を恥じ入ったのではなく、公金盗用という汚名を着せられた事を気に病んだのではないのかなと思ってしまうのだが……。徽柔は役人になることが男子には何より大事という結論に至っている。

夫婦の縁を大切に思い、直接話して欲しいと曹丹姝に言う趙禎。

 

しげのり~~~。

しげのり贔屓だったワタシ。茂則は物語全般、悪いことしていないのに、賈玉蘭と同じ呼ばわりされているのが気の毒で、一番モヤる回。そもそも陛下のお子を宿したのに、後宮のトップである皇后もその事を知ってるんかぃという位に話題にのぼらないの何なの。もっと保護したれよ。

宦官が宮中の女人を想いすぎた悲劇な顛末なのかもしらんが、賈玉蘭とだけは一緒にしてくれるな。賈玉蘭は賈玉蘭で勝手に散れ~~。賈玉蘭と張妼晗とのやり取りにホロリとしたのも吹き飛んでいった。

とはいえ、「一度死んだ気分はどうだ?」と尋ねる余裕もある趙禎。死罪にはしないのよね。曹皇后が陛下たちと慣れ親しんでいる一方で、茂則のこの地獄……。気の毒が過ぎる。

茂則の場面では何かと燭が揺らめいていたのが印象的だった。『閑情賦』で言えばこの節にあたり、玉を皇后、太陽を天子と捉えると切ない……。特にドラマに出ているワケではない。

愿在夜而为烛,照玉容于两楹;悲扶桑之舒光,奄灭景而藏明!

かなうことなら夜の時には燭となり、あなたの玉のような姿を二つの大柱の間に照らしたい。それにしても悲しいのは朝日の光が射し込めば、たちまち燭火を消されてしまうことだ。
林田愼之助『陶淵明全詩文集』2022 筑摩書房

(つづく)

 

 

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