笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「愛なんてただそれだけのこと」「宮廷の諍い女」を更新中。⇩カテゴリー選択はスマホでは左にフリックしてください。

清越坊の女たち8話~14話感想/崑曲 南柯夢,玉簪記,史記 李斯列伝,中庸 第一章,寒江独釣図

8話感想

『十二水図』は泰興の李家にある。任如風ひとりで取りに行って大丈夫かぃなと思っていたが、放蕩息子な李家息子の行動は、放蕩息子である如風にはお見通し……と。
 李家の息子が叩かれている場面での扁額は「瑞気盈庭」。
異色双面緙の復興のためなら、絵は貸し出しにしても良いんじゃないかと思ったけれど、あっさり手放すさすが人格者な李家の当主。

如風母は織機修理の達人であり、「心を合わせれば鋼も断ち切れる/兄弟同心,其利断金」と言う。天火同人の13卦かしら。

十二水図の『寒塘清浅』に、宋代に流行した瑞草柄。


若い沈翠喜と大女将との会話で「10基の塔を壊しても、縁談は壊すな/宁拆十座塔不拆一门亲」という表現があるのか。

曽知府は在任中6度の行幸を受け、接遇した3度で多大な損失を出し、先帝(康煕帝)の崩御後、戸部は曽知府に対して1年以内に穴埋めするように命じた。という事は乾隆帝になってさほど時間が経っていないあたりなのかな。

沈翠喜と曽宝琴が川でもみ合う場面はここか。

リンゴをかじる少女 沈翠喜が大女将に手ほどきをうける場面、ブドウも食べているね。

杼(ひ)に櫛。1000年前から平緙から始まった緙絲は、金彩加工が施されるまでに発展した。

魏良弓茅子俊)登場!『コウラン伝』嬴異人、『麗王別姫』安慶緒。生母の墓を建て、嫡母を怨んでいるらしい。


想像していたより遥かに絵も技法も一話でGetした。任如風の駆け引きや沈翠喜の復元への道のりや少女沈翠喜と緙絲の出会いなど、全70話くらいあればもっと描かれたのだろうな。

9話崑曲と漢詩

魏良弓がいきなり行き倒れていて、誰に助けられたのかと思いきや曽宝琴なのか。男主1なのよね? 「人を助くるは菩薩の行/救人一命胜造七级浮屠」と。魏良弓は江南の神童だったけれど、芝居好きで道をそれたらしい。俳優の容貌もあってか同年代に見えるけれど、だいぶ魏良弓は若い設定なのかな。

李照の上の扁額は「清風峻節」……。


いきなり唱いだし自画自賛する魏良弓。誠実そうな茅子俊な顔立ちだけに、いまひとつキャラが掴めていない魏良弓……。
南柯の夢は、唐の李公佐の小説『南柯太守伝』に由来しており、夢の中に入りこむという『牡丹亭』にも似た物語。

空華を笑えど幻と化す。目の端に根茎映らず。夢の境地に留まれば人は惑いさまよう。長い夢も続くことなし。短い夢は数限りなし。この世はすべて南柯の夢。人は皆蟻のごとし」。

崑曲『南柯夢』
笑空花眼角無根系,夢境將人殢。長夢不多時,短夢無碑記,普天下夢南柯人似蟻。


曽宝琴の父の最期の言葉は、李斯の最期の言葉。官吏になったことを悔いている。
吾若とまた黄犬を牽きて、俱に上蔡の東門を出で狡兔を遂わんと欲するも、豈に得べけんや」。

史記 李斯列伝』
吾欲与若复牵黄犬,俱出上蔡东门逐狡兔,岂可得乎?

魏良弓は「湧き水も山を出れば濁ります」と返す。

杜甫(唐代)《佳人》
在山泉水清,出山泉水浊。

 

市場では蓮根を売っている。お、沈翠喜と魏良弓が出会うのかな。いきなり任秀山も大きくなっている。

天命は性といい、性に従うのは道という。道の修得は教という。道からは片時も離れてはならず離れられるは道に非ず」。

『中庸 第一章』
天命之谓性;率性之谓道;修道之谓教。道也者,不可须臾离也;可离,非道也。

をさしかける魏良弓。あ、沈翠喜が笑った。曽宝琴と魏良弓の場面ではミカンブドウ


前回からなんだか展開が早いわ。

10話崑曲と刺繍名品

領織の丁栄がやって来て、任家に作らせる朝廷の錦の柄は
瑞花亀背錦/瑞花龟背锦」
艾緑地双獅球路錦/艾绿地双狮球路锦」
藍地矩紋鏡花錦/蓝地矩纹镜花锦」と話す。
これらは清代の白地亀背折枝牡丹紋錦の代表的な宋錦の名品である。

沈翠喜と侍女の林舒芳が、ツケツケと言い合う場面は好き。


魏良弓が秀山の頼みに応じて唱う。秀山が好むのは、胎教を受けていたのもあるのかしら。
月まばゆく光りて淡雲がたゆたう。露を含みし花は色濃く鮮やかなり。枕を傾ける我眠れぬことを憂いつつ耳を澄ます。聞こえくるのは四方からのこおろぎの音。秋の夜は宋玉の詩。西風のごとし。枯れ落ちし葉、我を一層憂鬱にさせる」。
玉簪記』は『策略ロマンス』にも出てきた書生 潘必正尼僧 陳妙常恋物語

高濂(明代)《玉簪记 第16出 琴挑》
(潘必正)月明云淡露华浓。欹枕愁听四壁蛩。伤秋宋玉赋西风。落叶惊残梦


嫡母が織った任秀山の筆巻きは、宋時代の傑作である宋呉の「出水芙蓉図」、北京故宮博物院所蔵。芙蓉は二面性があると『薬屋のひとりごと』で言っていたよ。魏良弓は「貴賤の別をつけるのは、了見の狭さゆえです」はまさにその通りだ。

曽宝琴は魏良弓に大紅袍のお茶を出す。曽宝琴は李照を探っているのかな。

林舒芳が魏先生との理想の暮らしを語るのを聞いて、任如風がしょんぼりしているのが可哀相な感じ。


魏良弓の「情が深まるほどに薄くなる。情の深い人ほど薄情になるものです/情到深处情转薄,越是情深之人,越是无情无义」は報われぬ愛に対して、エッジが効いた言葉だ。曽宝琴が描いた北宋 崔白仙芝献寿図』を若き沈翠喜に勧める無神経な若き任雪堂よ。おぉ、崔白!『孤城閉』を思い出すね。

魏良弓は曽宝琴に惹かれているのか。まぁ、今から沈翠喜だと不倫になってしまうものな。

11話感想

沈翠喜が祠堂で「私の生きる意味は」と訴えている場面、『明蘭』では火を付けていたね……と思い出す。
生きる場所を訴える若い沈翠喜に、目をふさいで任雪堂が結婚を承諾するのってムゴイような。

扁額は「棣萼联辉」。彩花庫錦が不合格となる。

李照の雲呑をかけている曹文彬。妊婦である巧児をこんな目に遭わせる李照と劉氏は許すまじ。
任如風は良い叔父さんだね。甥っ子の任秀山と仲良くしている場面は和むなぁ。

12話絵画

任如風が林舒芳に勧めているのはミカンかな。いや、だから如風、自分が矢面に立つのはイイけど事前に誰かに相談しようよ。
曹文彬の上の扁額は「明鏡高懸」、裁判官の判決が公正であることの意。

弱々しく任如風が林舒芳に「君を諦めねば」うんぬん言っている場面で、なんだか笑ってしまったよ。林舒芳を幸せにできると分かり、如風が嬉しそうにしているのイイな。

魏良弓は江南の文士の筆は剣より強い。『瓔珞』でも南方の文士の書いた文が~というのがあったような。

沈翠喜は雨過天青の色で、『寒江独釣図』を織ると言う.。『十二水図』と同じ画家である、南宋 馬遠のこの作品は東京国立博物館所蔵。沈翠喜がウキウキし始めると、なんだか曽宝琴が賢くなっている。

トーハク/ 寒江独釣図
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13話感想

沈翠喜が「あなたが殺した心は、あの人が生き返らせてくれた」と、魏良弓に惹かれているのね。

李照は生糸の値を巡って、沈翠喜と争っている。

角煮(紅焼肉)を頬張るのは、なぜか任如風の母。
そして負傷している任如風がくるくる回るのは、林舒芳ではなくなぜか秀山と。

珍しく沈翠喜が赤い外套を着ていると思ったら、青衣装の曽宝琴との対比なのね。

魏良弓が任秀山の教育係になった経緯は、曽宝琴の狂言だったと回想で分かる。あれまぁ。

14話感想

林舒芳が任如風に元凶と言うのはキツいよなぁ。

雪山のお墓前にいる魏良弓を見つけるのは、やはり曽宝琴なのね。
魏良弓は沈翠喜を思い浮かべながら、「情というものは知らぬ間に始まり、ひとたびに深まる。愛のため生者は死に、死者は蘇る」と。

湯顕祖(明代)《牡丹亭记题词》
天下女子有情,宁有如杜丽娘者乎!梦其人即病,病即弥连,至手画形容传于世而后死。死三年矣,复能溟莫中求得其所梦者而生。如丽娘者,乃可谓之有情人耳。情不知所起,一往而深。生者可以死,死可以生。生而不可与死,死而不可复生者,皆非情之至也。梦中之情,何必非真,天下岂少梦中之人耶?必因荐枕而成亲,待挂冠而为密者,皆形骸之论也。

(つづく)



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