笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「君花海棠の紅にあらず」とアニメ「天官賜福」、漢詩で「山河令」もはじめました。

君、花海棠の紅にあらず 5話,6話 感想と京劇/長生殿の楊貴妃

第5話 強情の代償

朝公演でも大人気の商老板。「ここには襲人の残り香が~」「空には輝く白い雲~。女は悲しい玉芙蓉」と歌うが、小道具の扇が裂けていた。機転をきかせて水袖舞と演出変更。扇子は晴雯が裂くはずのものだった。商老板は陰謀にも屈しない。

家主に家賃を迫られ、自分が行くと手を出すとわかっている商老板。小来は座員が身内の不幸でお金を無心するからだと言うと、「誰が不吉な嘘をつく?」と疑う様子のない商老板。玉を売ろうとするが、親の形見の品かもと小来は止める。

一座が乱闘になる寸前に商老板が現れ、「全員で武家を練習中か」と止める。「西涼を指さし罵る」と言われた家主は強盗扱いするのかと。証文を振りかざしている。

妹・察察児も、水雲楼の臘月紅(郑龙)が家にナイフを持って押し入ってきても動じず、「無鉄砲な人間ではなく、権力を握り偉くなった者平和を築ける」と返すあたり、この程兄妹たちの並ではなさが伝わってくる。でも、その平和を守るために争うワケなのよね。

体調不良をおして従兄夫婦のところへ行く二旦那。案外従兄も話のわかる人だった。二旦那は「天才はある分野では超人的な才能を発揮する。それ以外の部分では欠けている部分があるもの」。話を聞く度に商細蕊への印象が変化すると話す二旦那、まさにそう。

会長息子・姜登宝(汪汐潮)に嫌がらせをされている時に、二旦那が現れ、金の力で解決してしまう辺り、さすがです。商老板は「長生殿では陛下のそばが楊貴妃の居場所。軍営の中ではない」と。

前座の「簫素貞は家の中、私は身をかがめ~」「小上墳」の足さばきは良いが節回しに不満を示す商老板。ヤジを飛ばし二旦那にニヤリと。芸のためなら我慢もできる商老板。奥方は家の中で二旦那の帰りを待っている。

長生殿」に物足りなさをこぼす二旦那に、商老板は「心を傾ければ感じるものはある」と返している。

玄宗楊貴妃の台詞。

 

商老板の仁王立ちでにらみ意固地になるところと、すっと身をひくところ、子供っぽさ冷静な部分が同居していて面白い。

5話の京劇メモ


www.youtube.com

晴雯(せいぶん):荀派。「晴雯撕扇」。「紅楼夢」の宝玉の美しい侍女。口が悪く反抗的。晴雯は笑いながら次々に扇を裂き、宝玉は「千金一笑」と言ったという逸話。封建的なものへの反抗心から、扇を裂くことを楽しんでいるとされ、劇中では扇が既に裂かれていたので、水袖を振ることで気持ちを表現したとか。宮女の衣装は軽やかで素敵。

武家(ぶかは):「紅鬃烈馬」の演目。王宝釧と結婚するが義父に追い出された薛平貴は18年後、西涼の王となって帰り、久々に二人は再会する。そこで王宝釧の貞節を試すなどして、ようやく真実を告げる。むむ、これは……。

西涼を指さし:一場 玉宝釧の一節。続きは「無義的強盗罵幾声」と強盗呼ばわり……。

・証文:中華民国23年2月23日の日付。1934年。

長生殿:崑曲。楊貴妃玄宗の物語。

小上墳:花旦。こちらも妻・簫素貞を置いて科挙の試験を受けたが、三年ぶりに妻と再会する戯曲。歌いながら細かいステップで踊り続けるらしい。妻=奥方か?


www.youtube.com

第6話 魂の演技

二旦那の魂を持っていかれたような佇まいと、降りしきる雪が印象的で好きな回。


長生殿」に、二旦那が自分の人生を投影し、過去の回想が流れ。

イギリス留学中に父親が亡くなり帰国を余儀なくされ、姉は恋人と別れ司令官の側室に、豪商の娘であった奥方もまた、大きな商談も担っていたのを家庭に専念することになったと語られ、「人生とはままならぬものだ.。人は孤独であり満たされることはない」と。楊貴妃屈服せずに死を選んだという場面に「この梨の木がこの私楊玉環が尽き果てる場になるでしょう」と挿入される。

舞台上の楊貴妃な商細蕊と程鳳台が対話している。「ただ見届けて」「手放しさえすれば。ー大切ななにかだ。運命を受け入れろ」「それで人生に意義が?」と。

母親は家を捨てて京劇に戻ったとも語られ、「楊貴妃」は母が演じ愛した演目でもあった。

歌が流れる。二旦那は降りしきる雪の中、放心しながら家にたどりつく。商細蕊がその後ろ姿を見送っている。夢うつつな瞳で「夢とは一生であり、一生は夢のようだ」「彼の魂には厚みがある。繊細で豊か全てを包み込む」と語る。とても美しい印象に残る回。

劇場前で待つ二旦那は、いわゆる出待ちというものでしょうか。商老板のケーキもぐもぐ場面。二旦那の商老板への賛辞は、食べる手を止め聞きいる商細蕊。「百年の離別 須臾にあり。一代の紅顔 君主のために尽きぬ」は最高のくだりと言い、商細蕊も「歌うたびに泣きそうになる」と答える。商老板の『長生殿』を「盛唐伝」と評する二旦那。一幕「貴妃を葬る」の前の「黒髪を献上」「再度のお召し」での玄宗の二心への疑問を口にしている。

水雲楼で芝居談義のつづき。カストラート南府劇団の太監と同じと言う。長白山の以北では葬儀の時に歌を送り、歌い手は喉から血が出るまで叫ぶ。なぜか初舞台の時の衣装を着ている商老板。「衣装は本物でないと」と話している。二旦那は大学で文学を専攻し、次のような戯曲を書いたらしい。

愛する男と駆け落ちする:『李千金』、男は商いのため家を出て二度と戻らず一人女は家を守る:『秦羅敷』、自分で自分の運命を握ってこそ幸せになる、機織り店をひらくという物語。商老板はそんな女を演じてみたいと。

仮面を勧める二旦那に、京劇の花臉は、顔の全体を塗ってから、目をひんむいて、表情を作り出すものと。

酒を酌みかわし、知音になる二人。二旦那のことを金持ちで力を持っている林冲の妻を奪おうとした高衙内みたいな人と思っていたと言う商細蕊。二旦那はお泊まり。

翌朝、商老板は「王の若様は蜜を採る蜂のよう、花が鮮やかに咲き乱れた~」と、お焼き売りと張り合う。

天橋の大道芸や露店のにぎわいの中歩くふたり。お焼きも干柿(柿餅)も食べない二旦那。スリも商家の棍法で立ち回り、捕える商老板。お見事です。

6話の京劇メモ

・梨の木、百年の離別:『長生殿 埋玉楊貴妃の一節。

南府劇団:宮廷の劇団。太監は宦官。

長白山白頭山。中国吉林省北朝鮮の国境地帯にある。

李千金:崑劇『牆頭馬上』。実は親が許婚としていた裴少俊李千金は知らずに恋に落ち、駆け落ちする。

秦羅敷:『秦羅敷』。楽府「陌上桑」の桑摘みの美女。京劇では一人舞台のよう。

林冲高衙内:『野猪林』。『水滸伝』の登場人物でもある。

・王の若様は:『玉堂春』の蘇三王金龍と話す一節。蜂が王の若様なら、3話の『人面桃花』の蜂は、姜会長ではなく二旦那か。

 

 今回は3話分にしようかと思っていたが、6話は印象深い回で、長生殿の楊貴妃は重要なモチーフでもあるので、2話分にしました。

そしてなんのことはない、YouTubeに京劇動画があがっているではないですか。灯台もと暗しでした。



fuenone2020.hatenablog.com

fuenone2020.hatenablog.com

fuenone2020.hatenablog.com

fuenone2020.hatenablog.com

fuenone2020.hatenablog.com

fuenone2020.hatenablog.com

fuenone2020.hatenablog.com

fuenone2020.hatenablog.com

fuenone2020.hatenablog.com

fuenone2020.hatenablog.com

fuenone2020.hatenablog.com

fuenone2020.hatenablog.com

fuenone2020.hatenablog.com

fuenone2020.hatenablog.com

▼陳情令の楊貴妃

fuenone2020.hatenablog.com

林冲について

fuenone2020.hatenablog.com

fuenone2020.hatenablog.com

fuenone2020.hatenablog.com

 

 

外部サイト