あれよあれよと最終回を迎えた『贅婿』。
最初の商人ドラマはどこへやら~という展開であった。最終回への流れは『慶余年』を彷彿とさせるが、イメージしていた中国ドラマを越えて「青年コミック」なノリでした。
第21話と第32話を中継して、全36話ドラマ完走記もちょこっと。
21話「脱出の手立て」感想
この回は楽しくて好きな回。
蘇仲堪と蘇文興親子が耿ちゃんの地図を辿って、酸梅湯や温泉へ向かうのが愉しい。馬車も盗られてしまった。酸梅湯は伝統的な暑気払いの飲物で、烏梅、山査子、桂花、甘草、氷砂糖から作る。烏梅は梅を薫製にしたもの。
令牌が欲しいのに色魔と誤解されたり、後光がさしたり~。
何とか逃げようと縄で降りているのに、よりによって婿仲間に戻されてしまうコント。
1.お見合いにて、水の星座のところで言った
海纳百川、有容乃大
百の川を納め 容の大なるあり
林則徐の名句
海纳百川,有容乃大。壁立千仞,无欲则刚。
のようだ。
32話の漢詩
蘇檀児が出した離縁状(休書)。
休書
君当作磐石,妾当作蒲苇
蒲苇韧如丝,磐石无转移
若君有两意,必来相决绝
弃捐勿复道,努力加餐饭
■第一~四句は「夫は盤石 妻は葦、愛は変わらず」。
『孔雀東南飛』で劉蘭芝が姑に耐えきれず実家に戻る別れ際に、夫の焦仲卿に伝えた言葉。この言葉の前に、焦仲卿は「役所へ行って任務を果たし、必ず帰ってくる」と言っているのだ。
《孔雀东南飞》
(略)出门登车去,涕落百余行。府吏马在前,新妇车在后。隐隐何甸甸,俱会大道口。下马入车中,低头共耳语。誓不相隔卿,且暂还家去。吾今且赴府,不久当还归。誓天不相负,新妇谓府吏,感君区区怀。君既若见录,不久望君来。君当作磐石,妾当作蒲苇。蒲苇韧如丝,磐石无转移。我有亲父兄,性行暴如雷。恐不任我意,逆以煎我怀。举手长劳劳,二情同依依。(略)
■第五・六句の【若君有两意,必来相决绝】。
漢代の才女である卓文君の『白頭吟』と似ており、「闻」→「若」、「故」→「必」に変えられている。夫が妾をめとろうとした事を知った卓文君が詠んだもの。
卓文君(漢代)《白头吟》
皑如山上雪,皎若云间月。
闻君有两意,故来相决绝。
今日斗酒会,明旦沟水头。
躞蹀御沟上,沟水东西流。
凄凄复凄凄,嫁娶不须啼。
愿得一心人,白头不相离。
竹竿何袅袅,鱼尾何簁簁!
男儿重意气,何用钱刀为!あなたに二心あると聞き、ゆえに別れにまいりました。
■第七・八句の【弃捐勿复道,努力加餐饭】。
古詩十九詩にあり、別離を詠んだ詩の一部。
旅行く男に、家にのこる女が、愛情が薄れていきはしないか、不安を募らせている。
『古詩十九詩 其の一』
行行重行行,与君生别离。
相去万余里,各在天一涯。
道路阻且长,会面安可知?
胡马依北风,越鸟巢南枝。
相去日已远,衣带日已缓。
浮云蔽白日,游子不顾返。
思君令人老,岁月忽已晚。
弃捐勿复道,努力加餐饭。
贅婿’sが門番に問われた合い言葉でもある。
「思い悩まず/弃捐勿复道」の合い言葉は、
「食事に気をつけて/努力加餐饭」。
「加餐饭」は「食事を増やすように」という、相手の体を労る定型表現だそうだ。
贅婿全36話完走記
出だしは『慶余年』の商人版かといった様子で、江浩辰役に范閑な張若昀も出てきたし掴みはOK。第8話の漢詩辺りが個人的なクライマックスだった。
そこから物語はフランチャイズ展開となり、どんどん個人経営店が傘下におさめられていく様子は現代と重なり、最近のどこへ行っても同じような店構えの現実を憂う身としては、ここでもか……と暗然たる思いとなっていた。
そこへ駆け引きな宮廷モノとなり、あれれ?と思っている間に、霖安編の賊とのやり取りとなり、蘇檀児はなかなか出てこないし、出てきたら二度目の気持ちワル~いセクハラに遭っているし、楼舒婉は鮑に囲われちゃうし、なんだかなぁと思う日々。
そんな中での癒しは、勇ましい劉西瓜と勘違いしちゃう陳凡、F4ならぬ李貧・馮源・沈淼・高秋の活躍と、そして蘇仲堪と蘇文興親子となっていた。あの親子が癒しになろうとは。
なんとか霖安編が終わったと思いきや、寧毅は武都へ行く事になるし、蘇檀児は家業を譲ってしまうし、どんどん想像していた物語とかけ離れていく~。
護衛の耿直が亡くなったのも、『慶余年』オマージュならそうなのだが、なんだか寂しいなぁ。
楼舒婉が鮑文翰の情婦となった時は勿体なかったが、隠し金もたんまりあるし、女性達も救ったし、生き生きと自分を発揮していたので良かったのかな。シーズン2で力になってくれそうよね。
靖王として高崇@山河令が出てきたと思ったら、靖王の方が武王よりも器が大きいし、おまけに軍師らしき人物は、江浩辰因縁の相手・唐明遠だし。人質に取られた武王の皇子が、靖王の子として育てられるって、『慶余年』か~。死んだはずの秦嗣源が生きているのも……同じなのかな。
『慶余年』最後を思わせる終わりで、最後の最後は良かったが、途中のあっち行ったりこっち行ったりの中、最後まで見続けたのは『慶余年』効果が私の中では大きかった。
シーズン2はあるのだろうか?
▼卓文君
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