笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「愛なんてただそれだけのこと」「宮廷の諍い女」を更新中。⇩カテゴリー選択はスマホでは左にフリックしてください。

卿卿日常9話,10話感想/列女伝 孽嬖伝,詩経 大雅 蕩,柏舟,卓文君 怨郎詩,螺螄粉,金酸棗

9話感想

載笛の教える学堂の扁額「積薇成著」。
微細なものが積み重なって、次第に顕著となることを指し、六少主のことよね。
六少主の案が採用され、三少主と共に貸倒金回収にあたることになる。

倹約令が発令、岸こと三少主は浪費癖があり、母は金川出身らしい。三少主は何かと自分を絵に描かせたがり、現代なら自撮りばかりしていそうね。

嫡長主は自分の案が却下され、郝葭にあたり散らして食事もさせないとはDV夫じゃないの。正室の趙芳如ですら、実家の事を事前に相談されずに違和感がある様子。


黛川
の臭くて辛い料理、臭豆腐や螺螄粉に李薇が興味を示し美味しくパクついている所を、趙芳如に見つかり怒られる。なれど李薇が完食しているのを見た趙芳如は「味の本質を分かる者は少ない」などと言って満更でもない様子。黛川料理みたく、とっつきにくい趙芳如も、付き合ってみれば~という事なのかしら。

螺螄粉(ルオスーフェン)は、広西チワン族自治区柳州市の小吃で、タニシビーフ。タニシの出汁にビーフン、酸味な漬物や辣油の辛さがミックスされており、この酸笋(筍漬物)がなかなかに臭い一品らしい。

李薇は畑作りに精を出し、豆苗(芽苗菜)は7日、えのき茸(朴蕈)も数日、青菜(小白菜)も20日で育つと宋舞に話している。シンデレラの灰かぶり時代みたいな格好もカワイイ。

三少主に協力させるために、二十四節気女子たちが押し寄せてきた。羊の丸焼き(烤一只羊)を用意させると言う董海棠。


貸倒金を取り立てにいざ参る。
三少主は「成功あるのみ/只许成功」
六少主は「失敗は許されぬ/不许失败」。

・姜家(新川礼儀司 前侍郎 姜和均):喪服の人たちが騒ぎたてる。
・楊家:六少主が言葉通り殴ったのかな? 扁額「安居楽業」。
・囲っている若い女性を連れていこうとする。「詩礼傅家」。
三少主の従者は洗硯(孙奕)。
・証書を食べてしまう男性、何枚も用意している。「和楽融融(円満和やか)」。

六少主が仕官したら故郷に帰れると嬉しそうな李薇。霽川では側室は揶揄されると知ると、正室にして帰そうとする六少主。李薇を帰すつもりなのね。先代の十三少主が側室から正室にした例もあるようだ。

正室にするために、李薇を試験で一番にする助け、と言う名の親しさが増すやつね。葱で生け花をしていると、宋舞が「茄子やニラ、唐辛子も生けたら?」と憎まれ口をたたき、ナイスアイディアと取り入れる李薇。
この野菜の花も李薇の仲間っぽぃよね。唐辛子は上官婧だろうけど、他の野菜は誰かしら?

手に手をとってそろばん教えてます

そろばんの練習に不慣れの李薇を、中越しに手を取って教える恒例のドキドキタイム。挿入歌『南風』が流れる。
 蘇家令が言う「昔は分からなかったが、今なら分かる。愛には人間を変える力がある」には、昔って『贅婿』のアワビ時代な鲍文翰のこと?などと連想しちゃうよ。

金川の交渉に、三少主と六少主が派遣される事となる。

野菜ができて、李薇が夫人たちにお裾分けするのも良いね。
えのき茸も食卓に上がっている。

六少主が「別れて以来…」と読みあげた李薇の字は、弟の十一少主よりも下手らしい。字が下手なのは、原作転生ものアルアルね。

卓文君は古代四大才女の1人で、司馬相如と駆け落ちをした。
 才色兼備な女性で、心変わりした司馬相如に数字を連ねた文【一二三四五六七八九十百千万】(億/同音である憶や意がない、という意味)を送られ、返した詩がコチラ。
 数字詩とも言われ、送られた文の数字1から万まで織り込み、また数字を折り返すという巧さがお見事。そして司馬相如の心も取りもどしたそうな。

卓文君(両漢時代)《怨郎诗》
一别之后,二地相悬。
只说是三四月,又谁知五六年?
七弦琴无心弹,八行书无可传。
九连环从中折断,十里长亭望眼欲穿。
百思想,千系念,万般无奈把郎怨。
万语千言说不完,百无聊赖,十依栏杆。
重九登高看孤雁,八月仲秋月圆人不圆。
七月半,秉烛烧香问苍天,
六月伏天,人人摇扇我心寒。
五月石榴红似火,偏遇阵阵冷雨浇花端。
四月枇杷未黄,我欲对镜心意乱。
忽匆匆,三月桃花随水转。
飘零零,二月风筝线儿断。
噫,郎呀郎,巴不得下一世,你为女来我做男。


墨でお互いの顔に落書きをしあうふたり~~~。

ED:不才『至味』。

 

10話感想

李薇が「一番しかダメなんですものね」と言うと、頭をこずいている六少主。すっかり打ち解けている。


列女伝』の妾を題材にして、女子のあるべき姿を問う。
・上官婧:英雄の気概、剛直さと無私の心、悪事を許さぬ義侠の振る舞い【顶天立地,浩然正気,路见不平行侠仗义】。
・李薇:女の徳を論じるべきを「女子万歳」と書いた。女子の徳は多様である。例えば善良な心を持つ者(郝葭)、勇敢な者(上官婧)、思慮深い者(阮思思) 友と仲よくできる者(二十四節気たち)、善に性別の違いはなく徳も男女を問わない。両性は平等に扱われるべきだ。
急遽、入学した宋舞が1位となる。

ここでのお題は『列女伝 孽嬖伝』(げっぺいでん)について。『列女伝』は前漢劉向が記した女性の史伝で、女性の模範たるべく賢女ばかりが描かれているが、この『孽嬖伝』は「悪女/ 女禍」とされた女性たちの章なのだ。孽は災厄、嬖は悪意により愛をかちとる女という意味。

劉向が『列女伝』の編纂をしたのは、前漢 成帝後宮の乱れを糾正するもので、そのために成帝の趙昭儀を連想(どちらも姓が趙で、娼妓あがり)させる趙悼倡后を、『列女伝』最後に据えたのではないかと、山崎純一氏『列女伝 下』の余談にある。趙昭儀と言えば、『君花海棠の紅にあらず』でおなじみな趙飛燕の妹。

列挙すると、夏桀末喜、殷紂妲己、周幽褒姒、衛宣公姜、魯桓文姜、魯庄哀姜、晋献驪姫、魯宣繆姜、陳女夏姫、斉霊声姫、斉東郭姜、衛二乱女、趙霊吴女、楚考李后、趙悼倡后の15人。
 それぞれ国の名前+主君で女性の夫+女性の名前となっており、夏桀末喜ならば、夏の桀王の妃 末喜、である。
 新川出身の厳女官は当然、孽嬖伝の女性たちを反面教師としたかったのだろうが、他の川出身の女性から見れば、そうではないと価値観が異なるのが面白いところ。

もっとも『列女伝 孽嬖伝』を読んでみると、おおよそ美女私通をして我が子を王位につけようと画策、というパターンばかりで、後半は飽き飽きしてきた。注釈の史実の方が面白いのである。欲目に見ても上官婧の言うような人物は見当たらないが、夏の末喜(ばっき)の、「女子の身で丈夫(おとこ)の心を持ち、剣を佩き、冠を戴いていた」というあたりが、かろうじて勇ましいかなぁ?

 

蓮子羹を作らせ、書を読むのに化粧をしている李薇に気付く六少主。

生け花で、線型 麒麟塊型 麝香撫子,薔薇と勉強熱心な李薇。


金川へ入り、野宿している三少主を見ていると蘇るのは、『贅婿』での耿直のデタラメ地図でさまよう蘇文興~~。

賊の火木門たちが襲ってきた。六少主、強い~~~!
置いて行かれた従者の洗硯。金川は競争社会らしい。


金川
はキンキラキン。「四海隆盛」の扁額。

金川(邱心志)は『天龍八部』の段誉パパな段正淳!《斗罗大陆》兰德、《诛仙Ⅰ》田不易。
曾祖伯父様呼びする三少主、金川夫人が三少主 母の祖父の姉の娘らしい。
金川の掟は「返済できぬなら命で償え/欠债还钱,杀人偿命」。六少主は匪賊の討伐を提案して、分割払いを承諾させる。

金川夫人(刘苏)《青青子衿》郑奉玉と、金川少主 元序(姚冠宇)《王者游戏·觉醒2018》赵鹤が登場、姉の元英に比べて小指分ほどの仕事しかできていない。

九川の長い川3本はすべて金川の海に注いでおり、金川は水路の便が大変よい。

六少主は年齢と誕辰を尋ねられる。中秋節で8月15日。長寿麺食べてお祝いしていたもんね。このフラグは……。

詩経の試験対策を六少主から授けられる李薇。「板八章章八句 蕩之什」。楊女官の以前の主 和夫人が好む詩なので出題されると予想。
『蕩』は、周の滅亡に際して、殷の紂夏の桀を挙げて為政者たちを諫めたもの。

詩経 大雅 蕩之什 蕩』
荡荡上帝,下民之辟。疾威上帝,其命多辟。天生烝民,其命匪谌。靡不有初,鲜克有终
文王曰咨,咨女殷商。曾是彊御?曾是掊克?曾是在位?曾是在服?天降滔德,女兴是力。(略)
文王曰咨,咨女殷商。人亦有言:颠沛之揭,枝叶未有害,本实先拨。殷鉴不远,在夏后之世。

詩文は「初め有らざるなしを主題に詩をつくれ」で、「大雅」の一節。

李薇は試験で1位となり、六少主のお土産は金酸棗(きんさんそう)。中国では広東・海南・福建省などで栽培されている。棗の一種かと思ったが違うようで、日本名だとタマゴノキかな?

六少主は新川主から、「まもなく春節で、年明け後に新居に入り、2月1日正式に参内」と言い渡される。

新居を見に行くふたり。新居は霽川風で、宋舞の部屋も用意するのね。

李薇は新居を「静園」と名付け、「詩経」柏舟の「静かにこれを思う」から。
六少主は「我が心、石にあらざれば転がせず筵にあらざれば丸め込まれず」と詠じる。

邶風(はいふう)は衛国の歌で、邶とは殷 紂王の都であった朝歌より北を指す古い地名である。
柏舟は次のようなものらしい。

雨期に入る三月には、柏の枝で舟を作り、それに二つの人形を入れて川に流し、それを犠牲として河水の平安を祈る風習があった。その時に、女子が最愛のものを河水の神に献げる意を歌っている(赤塚忠氏)。

あまり縁起が良い詩ではなさげに思えたが、物語もこれから3月に向かうことを思えば、示唆に富んでいる気がしないでもない。

詩経 国風 邶風 柏舟』
泛彼柏舟,亦泛其流。耿耿不寐,如有隐忧。微我无酒,以敖以游。
我心匪鉴,不可以茹。亦有兄弟,不可以据。薄言往诉,逢彼之怒。
我心匪石,不可转也我心匪席,不可卷也。威仪棣棣,不可选也。
忧心悄悄,愠于群小。觏闵既多,受侮不少。静言思之,寤辟有摽。
日居月诸,胡迭而微?心之忧矣,如匪浣衣。静言思之,不能奋飞。

浮かびたゆたうあの柏舟。漂いながら流れゆく。胸やくうれいにいねられず、心に深い痛みあり。飲んで遊んで酒のないわけではないけれど。
私の心は鏡ではないので、すべてを受けとめることはできない。さりとて兄弟はいるが、たよるころはできない。彼らのもとへ行って訴えても、彼らの怒りにあうだけだ。
私の心は石ではないので、簡単に転がりはしない。私の心は席ではないので、くるくると巻き上げられたりはせぬ。礼儀正しく威厳を保ち、卑屈になどなりはせぬ。
心は憂いにうちしおれ、ささいな事までがうらめしい。つらい目にあうことばかりが重なり、悔りを受けることもしばしばである。一つ一つを詳細に思いかえし、両の腕で胸をバシバシと打ちたたく。
太陽よ月よ、どうして二つながらこもごも暗いのか。心の憂えること、まるで汚れた上着のよう。つくづく思いかえせば。思いきって飛びたつこともできぬまま。
石川忠久,牧角悦子「詩経 上」1997 明治書院


ついに蘇家令が動いた!「新夫人など来ません」と手を振るのがカワイイ。六少主を代弁して「正室にしたい、あなたが好きだからです」と言っちゃった~~~。

犬小屋の設計図を持ってくる六少主。
そして「君が好きだ」と言った~~~!

ED:叶炫清『南風』。
(つづく)

李薇が六少主に向けるリアクションが可愛くて、六少主も控えめながら好意を寄せていてホッコリする。蘇家令がヤキモキするのもコミカル~。

しかし意外と借金取り立てには容赦なかった六少主……。中国ドラマ『30女の思うこと』でも債権取り立てがあり、何となく日本ではこの手の事は後ろ暗く、主人公クラスは手を染めない(でも周りにはさせる)イメージがあるのだけれど、中国では割と堂々とするよね。それだけよくある事なのかな。

卓文君や、列女伝の孽嬖伝が興味深かった回。
上官婧や李薇推しな『孽嬖伝』と、和夫人推しの『詩経 蕩』で、殷王や夏王関連をぶつけているのが面白い。

 

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