笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「蓮花楼」「古相思曲」「ロングシーズン」「宮廷の諍い女」「月に咲く花の如く」を更新中。⇩カテゴリー選択はスマホでは左にフリックしてください。

尚食40話最終回感想 時代背景/一笑図,徐妙錦,呉昭儀

OPの「ヤイヤイヤ~♪」も今回が最後。

40話メモ&感想

馬を走らせる漢王を、連射式の矢(神機銃箭)が一斉に襲う。宣徳帝が弓で漢王の馬を射貫き、漢王はお縄となる。

谷應泰(清代)《明史紀事本末 卷27》

辛巳,駐蹕樂安城北,城中黑氣黯黲,大軍壁其四門。賊乘城舉礮,大軍發神機銃箭,聲震如雷,城中人股栗。

 

游一帆は漢王も趙王も手玉に取っており、「叔父上たちはただの駒だった」と告げる宣徳帝。趙王はわざと狼の群れに投げ込み救っていたという……そんな恩を忘れることはなかった游一帆。宣徳帝は「朱瞻礼」と一帆に呼びかける。

游一帆は「学門や武芸、謀略でも劣らないのに手を血で汚して唾棄されるだけの存在」と言い、宣徳帝と游一帆の一騎打ち! 村を訪れる朱瞻基との回想が流れるのは、やはりあの場面はブロマンスだったのですね?
 宣徳帝の刀を自分に刺し、「妻を殺した者は体を千に切り刻まれるが父を殺した者は?」と問い、笑って逝く游一帆~~~。趙王よりも漢王の方が悲しそうなのはやはり父親なのね。


日が昇り、長い夜が明ける。

胡皇后も生きている!

方典膳が陳蕪に思いを告げる。え?陳蕪、何も言わないの?と思っていたら、傘を差しかけていた。わざわざ差しかけるという事は好意はあるという事かな。殷紫萍はその様子を見て、何か思うところがある様子。

漢王が毒杯をあおると、孟紫澐も残りを奪って飲み干す。孟紫澐の思いは恩義なのか交わした情愛なのか?ふたり牢の中、抱き合って死す
《明史紀事本末 卷27》にある漢王の最期とは随分、異なってはいる。

谷應泰(清代)《明史紀事本末 卷27》
漢庶人高煦鎖縶之內逍遙城,一日,帝往,熟視久之。庶人出不意,伸一足勾上踣地。上大怒,亟命力士舁銅缸覆之。缸重三百斤,庶人有力,頂負缸起。積炭缸上如山,燃炭,逾時火熾銅鎔,庶人死。諸子皆死。


蘇月華が見送りにと走りながら、第2話の子供時代の回想場面が流れたのはホロリとした。

殷紫萍がついに尚食となる!が、浮かぬ様子の殷紫萍。なんと職を辞して「料理の絶技は民間にある。夢を叶えるには腕を磨き続けねば。あなたに代わり世間を見てくるわ。あなたの歩かなかった道を私が歩き、果たせなかったことを全部果たしてあげる。そして天下一の厨師になってみせるわ」と宮中を後にする。そう来たか~。殷紫萍は途中で退場しないか気になってたから、良かった良かった。


袁琦は務めを騙って広東へ買い付けに人を送り、民を搾取し重税を得ていた。宣徳帝は涙をこぼしつつ凌遅刑に処す。凌遅刑は薛洋@魔道祖師が常萍にしたやつ。最も残忍な死刑で、謀反のような大逆の際に処される。
趙王は鳳陽へ隠居。謀反の首謀者は生きながらえて、実行犯は酷刑という、この不条理さ……。
 実際に袁琦が処刑されたのは宣徳6年の出来事。第36話で阮巨隊や武莽などの名前が連ねられていたのはここにかかっている。

《明宣宗章皇帝實錄 卷之八十五》
宣德六年十二月四日
內官袁琦內使阮巨隊阮誥武莽武路阮可陳友趙誰王貴楊四保陳海等伏誅初巨隊等往廣東等處公幹而以採辦為名虐取軍民財物事覺下錦衣衛獄究其所由皆琦指使於是籍其家金銀以萬計寶貨錦綺諸物稱是又所用金玉器皿僭侈非法皆四保與海為之法司議罪應死 上命凌遲琦而斬巨隊等十人時內官裴可烈亦以貪暴下錦衣衛獄死


胡皇后は「千金翼方 五」を。唐の医学家 孫思邈が編纂したもの。

宣徳帝が尋ねると、孫貴妃が「千年万年後には私も雨露となり、風となり雲となります」と。


皇后胡氏は病が多く皇子を成さぬ
、本人の望みに従って長楽宮に居を移しこれまでと同じく扶養する。と勅命。
 史実ではこれは宣徳3年春の出来事。宣徳帝と孫貴妃の間に第一子 朱祁鎮(英宗)が宣徳三年二月に誕生している。

《宣宗章皇帝實錄 卷三十九》
宣德三年三月一日
宣德三年三月癸未朔命駙馬都尉西寧侯宋瑛太子少傅工部尚書兼謹身殿大學士楊榮為正副使持節冊貴妃孫氏為皇后初皇后胡氏為皇太子妃 上即位立為后踰年嬰疾久弗瘳請於

 

《明史》列传 卷一
◎后妃
宣宗恭让皇后胡氏,名善祥,济宁人。永乐十五年选为皇太孙妃。已,为皇太子妃。宣宗即位,立为皇后。时孙贵妃有宠,后未有子,又善病。三年春,帝令后上表辞位,乃退居长安宫,赐号静慈仙师,而册贵妃为后。诸大臣张辅、蹇义、夏原吉、杨士奇、杨荣等不能争。张太后悯后贤,常召居清宁宫。内廷朝宴,命居孙后上。孙后常怏怏。正统七年十月,太皇太后崩,后痛哭不已,逾年亦崩,用嫔御礼葬金山。


孫貴妃が問いかけた「私は前世で陛下に借りを?」に、ブンブンと大きくうなずくこちら側の視聴者たち。

「雪降る中~♪」の歌声に乗せて、胡善祥が徐妙錦と宮中を馬車で出て行く。富察皇后@瓔珞~~~皇后でも紫禁城の外に出ることができてますよ~~~。

徐妙錦永楽帝の徐皇后の妹で、徐皇后亡きあと、皇后となるのを断った人物。《名山藏》や《明文海》に記載があるそうだ。ドラマ『永楽帝』で江厭離の子役@陳情令が演じていたお転婆な子ね?  姚子衿が皇太孫の側妃を断る時に、「永楽帝を断った女人がいる」とか言っていたのはこの人なのかな。

野菜を運ぶ蘇月華、尚食となった方含英の姿が!!そして蘇月華の笑顔


宣徳2年
皇帝が戯れに描いた「一笑図」。「笑」が「⺮」と「夭(犬)」から成っていることから、竹と犬を描いた絵は「一笑図」と称される。「宣德二年御笔戏写一笑图」という文字に落款が押されている。現在はアメリカのネルソン・アトキンス美術館所蔵。

呉氏の家族は罪に問われないようだ。

孫貴妃が言う「青青たる子が衿、悠悠たる我が心、一日見わざれば三月のごとし」。『詩経 子衿』ですねっ。これは子衿の名の由来で書こうと思っていたら、ドラマ内で自ら言っていたのね。

青青子衿,悠悠我心。
一日不见,如三月兮!

鳥も飛び、画面が引いていく中、窓の中ふたりはキス

40話料理メモ

殷紫萍の炒飯を泣きながら食べる子衿。第26話で新婦を送りだす時に食べていたものかな。

孟紫澐が漢王に雲呑(扁食)と酒を届ける。このお酒は毒入り……。 兄弟たちは母上の作る雲呑が一番の好物だったとは、母上はドラマ『永楽帝』でまだ初々しい賢女な徐皇后ね? あんなに賢そうな母親からなぜにこの兄弟たち……って父親(永楽帝)の血筋か。『永楽帝』では漢王が生まれた時に大粛正の因縁があったしなぁ。

物語は中国宮廷料理の美食で始まったけれど、最後は守山糧の保存食や、思い出の炒飯や雲呑という日常的な料理で締めるのがイイね。

(完)

尚食ドラマ完走記

40話をかけぬけ、瓔珞と傅恒も今世でめでたしめでたし~~。

「瓔珞」がドラマティックなストーリーだったので、なんとなくそんな手応えな話になるのかと期待半分、ビクビク半分だったが、実際は割と淡々としており、最後は3人もの女性が生きて(←ココ大事)宮中から出て行ったという、想定外な展開となった。

これって『瓔珞』で、乾隆帝が瓔珞に嫻妃父の事を相談した時に、瓔珞がこのような事を言っていたよね(あれはすり替えだったけれど)、この手があったのね。同じように側妃となる事を嫌がった韓国ドラマ『赤い袖先』とは対照的な最終回となったなぁという感想である。


料理ドラマ
は『花小厨』でも感じたが、ストーリーを作るのが難しく、どちらかというと『風味巡礼』や『孤独のグルメ』みたいな、1話完結なショートストーリーの方が合っているのだろう。

様々な実在する中国料理史実の小ネタなど、トリビア的な発見という意味では記事をまとめていて面白いドラマだったが、そのまんま見ていると淡々としておりちょっと感情が盛りあがりにくい作りだったなとは思う。

話は変わるが、先日、トンカツが美味しいと評判の店へ行き、ヒレカツヒレレアな火加減で衣も薄く揚げられ、実にヒレカツも豚汁も上品であり、なんとなくこのドラマが思い浮かんだ。トンカツと言うと、細かいパン粉は好みだが、も少し衣がガシッとなっている方が食べ応えがあるなぁとも思ったり。料理の味は食の好みにもよるよね。『瓔珞』は衣がハッキリしてるし、ご飯もキャベツもお代わり自由でガツンと来るイメージ。

個人的にはいろいろ知る楽しみが多かったので満足なドラマだった。

時代としては明代の永楽20年(1422年)から宣徳2年(1427年)までの間の物語。
 殉葬が象徴する太祖の祖訓へ挑む孫貴妃だったので、それが後半もう少し描かれるのかと思っていたが、次代へ托す張皇太后への言葉だけになったのは、途中で放送回数が減らされたんだろうか? 游一帆の絵のあたりも最後に何かわかる仕掛けだったような気がするが、サラッと流されていた。

何かと出てきた太祖の祖訓、明代第3~5代目のこの頃になるとなんだか遵守せねばならぬ大層なものに思えていたが、ドラマ『永楽帝』のホームドラマ感ただよう初代太祖家族の頃を見ていると、なんだ、祖訓っていわゆる家訓的なものじゃないの、という思いになる。とはいえ家訓なだけに、変えることが難しいという側面もあるのだが。


殷紫萍
は何かやらかすのではと思っていたので、最後あっけらかんと去って行くのは意外だったものの、天下一の厨師を目指すというのも思えば夢が広がるよね。傍にいなくても姚子衿と殷紫萍は知己、ということで。いつかどこかで医師として活躍する胡善祥と出会ってほしいな。

張皇太后孟尚食が目指したものが、個人の欲望ではなく大局を見据えた志なのは頼もしかった。姚子衿の目指すものがなかなか分からなかった一方で、張皇太后は皇太子妃の頃から馬皇后や徐皇后を準拠としていて、ドラマ『永楽帝』を見ていると、確かに賢女なおふたりなのでこんなドラマのような皇后だったら任せられるなぁと思ったり。とはいえ、このあと、明代王朝は宦官の専横がはびこっていくワケなのだが……。


思わぬ展開だったのが呉妙賢、史実を辿っていると、呉昭儀は孫貴妃以外で子供を産んだ唯一の妃嬪だったので、まさか漢王スパイとは思わなんだ。
 月日が流れ、孫貴妃の生んだ英宗オイラトに捕まった事により、呉昭儀の生んだ朱祁鈺が景泰帝となり、返り咲いた英宗は殉葬を廃止するのだけれど、景泰帝の妃嬪は殉葬にしたという因縁があるのがなんともいえない。
 ちなみに成化帝は孫貴妃の孫だし、男装していた固安公主@成化十四年は呉昭儀の孫にあたる。そう考えると中国ドラマも一層楽しく思える。


サブタイトル
の「美味なる恋は紫禁城で」。
尚食だけでは分かりにくいので、「中国宮廷料理」「瓔珞と傅恒のルーツをくんだ恋愛」「舞台は紫禁城」と伝えたかったのだろうが、このタイトルを回収したのは方含英だったのかも。そして一番ドラマティックな人生を歩んでいたのは孟尚食よね。アップダウンが激しすぎる。

どちらかというと恋愛というより、皇后や宮女の役割とは、という意味合いが強くお仕事ドラマ系なイメージ。

善人がすぎる姚子衿であるが、第24話で殷紫萍が唱った『琵琶記』のヒロインを踏襲していると考えると割とすんなり受け入れることができ、登場人物たちは良い恩とそうでない仇にはそれぞれきっちり返ってきていたように思えた。

そんな恩を取り巻く絆がメインに思え、第32話で殷紫萍が口にしていた「心をとかさない美食はない」が印象的だったので「美味なる膳(善)は心をとかす」という感じかしら。


書籍でしか知らないような料理が実際に作られて出てきていたのは豪華だったし、唐の韋巨源『焼尾宴』などは人間の業を感じるような献立が並んでいた。

今回、日本語と中国語の料理名が並んでいたのはとっても有り難かった!是非、料理系はこの表記でお願いしたいものだ。

 

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外部サイト

▼許凱、呉謹言のインタビュー記事。

 

▼中華料理特集