35話メモ&感想
殷司膳の話を胡皇后は気に入り、配膳係に任命される。
游一帆は孫貴妃に、陳蕪には東廠(宦官による特務機関)を使わねばならない理由があると話す。
掟では皇后のみである金宝金冊を、孫貴妃に与えたようで、張皇太后はそれを認めた。
宣徳元年6月。
陸墓参拝に携わった者は重罰で、五城兵馬司は叱責を受けた。陳蕪の東廠の者は腕を上げ錦衣衛も出遅れるほど。農民は冬は兵役があり断れば首をはねられる。
畑仕事で負傷した宣徳帝の手当をする游一帆はなんだかブロマンス……。そう思っていたら、ふたりきりになると刃が光るのは狙っているのか。宣徳帝に才を発揮させると言われ躊躇していた。
太祖皇帝は養済院を建て孤独な老人や疫病の者を守ろうとした。北京の養済院は4500人を抱え、負担は重い。身寄りのない寡婦や病人などが収容された福祉施設。
《太祖高皇帝實錄 卷三十四》
洪武元年八月十一日
鰥寡孤獨廢疾不能自養者官為存恤京師被火之家中書省量加賑卹民年七十以上者許令一子侍養免其差役御史臺提刑按察司乃耳目之寄務在振肅百司慎選賢良方正之人以佐朕不逮民間有不便事宜與利所當興害所當除詔書所不載者有司明白具聞於戲民墮塗炭十有七年今天下甫定光嶽之氣於焉始復繼今宜各修爾業厚爾生共享太平之福以臻雍熙之治
袁琦は「宮中に葉が茂り続ける木などない」と孫貴妃を目の敵。
殷司膳が孫貴妃の所に行っていることを知り、たちまち不機嫌となる胡皇后。
とある老女の孫は戦で亡くなり生活も貧しくなっていた。苦しい心の内を話す宣徳帝に、足も洗い寄り添う孫貴妃。繕い物をして眠ってしまった宣徳帝をいたわっている。
孫貴妃は胡皇后と対峙。
つらい時には己に言い聞かせる「水は善く万物を利して争わず」「岩が立ちふさがるなら回り道しよう」「根気よく努力を続ければ叶う/滴水穿石的一天」。天子ですら思うようにならず履物が破れるまで自分で見聞きするしかないのだと語る。
感じるところがあったのか、冷えた膳を食べ始める胡皇后。
『老子 第八章』
上善若水。水善利万物、而不争。処衆人之所悪。故幾於道。
居善地、心善淵、与善仁、言善信、正善治、事善能、動善時。
夫唯不争、故無尤。
工部尚書が宣徳帝に怒られている。5000人もの子供を都へ呼び匠を学ばせているようで、工部省書は内官監の指示と主張。内官監は袁琦だが、袁琦は濡れ衣と言う。
《宣宗章皇帝實錄 卷十九》
宣德元年 七月 十日
○辛丑 上謂行在工部尚書吳中曰前日卿奏內官監欲取民間幼丁學匠藝行移應天府選取五千人彼幼未諳事令習技藝不能則必加督責其父母之心如何且人家誰無幼子爾其體此心速止之
35話料理メモ
配膳の順序は濃い味から薄味というという原則があるらしい。
包米果。漬物と茄子が入ってさっぱりしている。元軍の撤退した江西南安府の城内で兵糧が濡れ、器用な婦人がその米を集め米乳を作り、蒸して皮にし具を詰めて茶油を塗ると美味になった。香りが良い。
江西赣南地区の伝統軽食。《上犹县志》に逸話が残っている。見た目や食感は腸粉に似て見えるが味は異なるようだ。
蟹黄湯包。熱い。三国時代に劉備に嫁いだ孫権の妹孫夫人は、故郷を離れても好物の蟹を恋しく思い、夫人のために作られた。冷めると蟹の臭みが強くなる。
肥腸粉は軍屯鍋盔(かかい)に合う。鍋盔も三国時代の将軍、姜維(きょうい)が伝えた兵糧。殷紫萍が游殿に鍋盔を手渡し、花椒が鍋一杯分入った辛さってどんだけよ。さすが殷紫萍、杖刑のお返しかな。肥腸粉は四川省成都の伝統軽食でとっても辛そうだ。
胡皇后が取ったのは羊頭籤(ようとうせん)。宋の宰相王安石は富と名誉に執着せず、読書中の羊頭籤が楽しみだった。王府で一番の作り手は厨師でも王夫人でもなく……。羊肉を豚の網脂を巻いて揚げたもの。
《王荆国文公遗事》
第一条就记着这款零食:喜食羊头签,家人供,或直看文字,信手撮入口中,不暇用筯。
何だ湯(啥湯)。"中身は何だ?"スープ【就是啥湯啊】。江蘇省徐州の有名軽食で、鶏と大麦を煮込んだもの。饣它汤とも言い、英語名は"what soup"。
大根酥餅。発糕。山査子飴。胡皇后も口にしている。笑うと胡司膳に似ているな。高級な山査子飴はこんな感じなのね。
小麦の揚げ菓子(炸饊子)を呉昭儀にあげる胡皇后。香ばしくてさくさく。
三絲眉毛酥。甘い物。上海の名物点心。肉,椎茸,冬筍の3種の具が入ったパイ。
炸醤麺。孫貴妃の手打ち麺。
揚げ蓮根(炸蓮)。蓮根は殷紫萍が朝取ってきたもの。西施は好んで蓮根を食し美を保ち、後世美容によいと信じられるようになった。
魚の開きのほぐし(魚鲞絲)。粥はこの魚とよく合う。
酥山。暑いときに良い。
暑さで怒りっぽい宣徳帝に、らっきょうや胡椒など刺激物を入れないように殷紫萍に言う孫貴妃。
どどーんと中国料理と逸話を入れてきた回。何だ湯が気になるよね。今回は揚げ物が多いかな? クイズの回収はされるのかしら……。
殷紫萍がドラマで最も成長していて頼もしい存在となっている。子供のあしらいも上手ね。
外部サイト
▼許凱、呉謹言のインタビュー記事。
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