笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「愛なんてただそれだけのこと」「宮廷の諍い女」を更新中。⇩カテゴリー選択はスマホでは左にフリックしてください。

尚食17話料理感想/王維輞川図,韓愈,山家清供,梵正,乾淳歳時記

17話メモ&感想

あの窓際の花は胡皇太子妃が飾っていたのか。意味ありげな花瓶だと思っていたら、朱瞻基の『壺中富貴図』に同じような形の花瓶が描かれている。台北故宮博物院所蔵。牡丹は張皇后が特に好んだ花だとか。

回想で姚子衿は継母の徐氏に、宮中に入り本来の地位を奪い返すように言われている。徐氏(许榕真)は『大唐流流』の傅三夫人。

皇太子妃が入れ替わった理由は、張家が媚びるのを永楽帝が警戒したから。姚子衿は皇太子に「妃嬪はイヤ、陛下や誰かのために生きたくもない」と言う。誰かの思惑で運命を左右されたくないのだろうし、散々前世で妃嬪を味わったしね。とはいえここは宮中……。部屋を出た姚子衿がまぶしそうにしていた太陽はなんの象徴かな、天子なのか思い人なのか。

張皇后は夫の為に縫った衣も捨ててしまう。胡皇太子妃は裁縫が苦手のようだ。民間の姑は若い夫婦が揉めた際嫁の側につく、それはかなり出来た姑なのでは……。


張皇后からのお題は「古」。顔真卿の書体が用いられている。唐代の名臣で著名な書家。これを書いたのは皇太子なので、王羲之から顔真卿になっているような。殷紫萍が彫った豆腐の牡丹、スゴすぎる。

黒猫が眠っている絵を、袁琦がすばらしいと言っている。以前姚子衿が黒猫を抱いていたっけ。せっかく皇太子に夜の散策へ誘われたのになぜか断る胡皇太子妃。風流を解せず、合わないふたりってこういう事なのね。早く医術書を読みたかったの?

姚子衿が絵を描いていると游一帆が現われ、姚子衿は提案も断りなぜ朱瞻基を恨むのかと逆に問う。游一帆は「そなたが菩薩なら私は羅刹だ」と。羅刹は鬼神の総称で地獄の獄卒でもある。またしても游一帆と蘇月華!

輞川図・文杏館のあたり
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輞川図(もうせんず)。『清異録』によると唐の梵正という尼の厨師は発酵させた魚や干し肉瓜類を使い景観を作った。梵正は五代の名女性料理人で、古代十代名料理人の一。

陶谷(宋代)《清异录·馔羞门》
比丘尼梵正,庖制精巧,用鲊 脍脯,醢酱瓜,黄赤色汁成景物,若坐及二十人,则人装一景,合成辋川图小样。

蘇月華は冷菜で輞川図を再現すると言う。盗みまでする蘇月華、どうしちゃったんだ。「道義に背いてでも成し遂げるべきことがある」という蘇月華の思いは游一帆と同じか。姚子衿が描き加えたのが本物との違いなのかと思ったが、特に何も言わなかったな。

姚子衿は殷紫萍に「腹が立つ相手ほど冷静に向き合わなきゃ駄目よ」と言い、喜怒哀楽を顔に出さないように伝える。ここで詠んだ一節。

韓愈(唐代)《送进士刘师服东归》
落槛阱,坐食如孤豚。丈夫在富贵,岂必守一门。
公心有勇气,公口有直言。奈何任埋没,不自求腾轩。
仆本亦进士,颇尝究根源。由来骨鲠材,喜被软弱吞。
低头受侮笑,隐忍硉兀冤。泥雨城东路,夏槐作云屯。
还家虽阙短,把日亲晨飧。携持令名归,自足贻家尊。
时节不可玩,亲交可攀援。勉来取金紫,勿久休中园。
猛々しい虎が落ちて檻に入り、座して食す姿は豚のごとし。(略)
頭を垂れて侮笑を受け恨みを隠す。これに抗うことなし

進士となり任地へ赴く人に韓愈が送った詩で、引用されたのは下線部である。これに姚子衿のカウンターパンチを思うのは詩の出だしの虎。確か虎は、尚食では游一帆のハズ。

 

皇太子才人何氏、趙氏、焦氏、曹氏と一気に出てきた皇太子の妃嬪たち。こんなに才人がいてよく皇太子妃も暢気に過ごしていたなぁ、胡尚食の焦る気持ちが分からないでもない。古典を解す妃嬪もいたようだが、押しつけられるだけで意中の妃嬪はいないと言うことでもあるのか。

思いのほか蘇月華がブラックで、姚子衿はホワイトすぎて、登場人物に感情移入しにくい物語ではある。とはいえ調べ始めると深読みかもしれないが色々と繋がり興味がつきないのだ。

17話料理メモ

皇太子のリクエストで梅花湯麺を届ける姚子衿、梅は以前摘んだ物なので香りが薄く旬の物には及ばない。姚子衿のことか? 山茶花の花が飾られている。

林洪(南宋代)《山家清供・梅花汤饼》
泉之紫帽山有高人,尝作此供。初浸白梅、檀香末水,和面作馄饨皮。每一叠用五出,铁凿如梅花样者,凿取之。候煮熟,乃过于鸡清汁内。每客止二百余花可想。一食,亦不忘梅。后留玉堂元刚有诗云:恍如孤山下,飞玉浮西湖。

山家清供』は南宋の林洪が記した料理書。この出典で”一度食べると忘れられない梅”という表現が気になるな。


胡皇太子妃は姉に聞いた茉莉湯を皇太子に出している。今頃の物は香らない。

第1局 孟尚食側。宋の「乾淳歳時記」記載の「春蘭 秋菊」で白石榴と梨を蘭、みかんを菊に見立てている。皇后は梅に漬けすぎ酸味が強いと言うが事実とは異なっていたようだ。作ったのは方典膳だが、梅は姚子衿?
胡尚食側砌香桜桃(せいこうおうとう)はお気に召す。

周密(南宋代)《乾淳岁时记》
○重九
又以苏子微演梅卤,杂和蔗霜、梨、橙、玉榴小颖,名日春兰秋菊。

蘇月華は野菜を彫って絵画を作り出している。食材を変更し胡瓜か冬瓜かと殷紫萍。

胡尚食側。郭貴妃が解説、グルメな夫の寵妃だけに料理評論もピカイチね。『輞川図』の「鹿柴」の景色で、王維は晩年輞川に隠居し友人たちと野を歩き詩作を楽しんで記念に絵を残した。華子崗に欹湖(いこ)、文杏館、辛夷塢もある。茱萸沜(しゅゆはん)も。張皇后は料理の中の人物像を見て、様子が一変する。舟の上のを食べちゃう呉才人。輞川図は唐の王維が清源寺に描いた壁画で消失しており、模写が残されている。

王維(唐代)《鹿柴》
空山不见人,但闻人语响。
返景入深林,复照青苔上。

王維は輞川という川(陝西省藍田県の南)のほとりに別荘があった。そのなかの二十のスポットを選んで、友人の裴迪とともに詩を作り、各自の二十首をまとめて『輞川集』という詩集を編んだ。これはその中の鹿小屋の辺りを描いた一首。森林の静寂は詩人の愛するもの。
川合康三「中国名詩選 中」2015 岩波書店

この心境まで料理で表現するのは難しいよね……。

孟尚食側。周公は24の気に応じ暦を定め、24種の型と二十四節気の野菜で24の雲呑を作る。夕顔と羊肉の餡、香椿・蓴菜じゅんさい)・空心菜・艾(よもぎ)などの葉野菜を温室で育てる。蝦と水菜、空心菜と魚の餡、蜆と生菜、蝶の形は甘い味の蓮根、豆苗は新鮮な芽と茎を鴨油にあえる、香椿には上等な肉を合わせ秘伝の味付け。皇太子とおぼしき鴨とあえられた豆苗ちゃんは誰かしら。
(つづく)

 

ここで出てきた『輞川図』、模写であるため様々なバージョンがあるようだが、折しも2022年11月22日から静岡県立美術館で『輞川図巻』が修復され全巻初公開されるとか。これは気になる!

 

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