笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「君花海棠の紅にあらず」とアニメ「天官賜福」、漢詩で「山河令」もはじめました。

陳情令の脚本と構成②制作/原作小説「魔道祖師」とドラマ「陳情令」の違い

1.はじめに

ブログを始めた当初の記事(2020年6月26日)で、私はドラマ「陳情令」の構成について触れている。それは当時WOWOWでの週一の4話更新であまりに辛かった思いを記したものである。

私は陳情令・魔道祖師の構成について関心が強い。記事をあげた当時の反応はさほどでもなく、こういった方面に興味のある人はあまりいないのかと思っていたが、気づけばこの記事はわりと読まれているようである。

またいろいろ調べている内に、中国サイトにて陳情令プロデューサーの楊夏(ヤン・シア)さんが脚本について触れている記事があったので、それらと「陳情令」の改編について、また「構成」について思い気づいたところを、さきの記事のアンサーとして述べてみたい。
記事は昨夏に見つけていたが中国語ということもあり延び延びになり……。慎重にまとめたつもりではあるが、記事よりの引用・翻訳なので、違っているところがあるやもしれませぬ。

2.それぞれの中国での連載・放送開始日

まず、メディアミックスごとの中国での連載・放送開始日を時系列で整理してみる。日付については中国のサイトを参考にした。

原作小説「魔道祖師
本編連載:2015年10月31日~2016年3月1日
番外編:~2018年1月1日
原作小説魔道祖師同人歌「同道殊途」配信:2016年9月11日
単行本(台湾平心出版社繁体版)発売:2016年12月8日

漫画「魔道祖師
連載:2017年12月9日~現在

ラジオ「魔道祖師
猫耳FM:2018年6月1日~2019年10月18日

アニメ「魔道祖師
騰訊視頻アニメトレーラー:2017年11月(おそらく)
前塵編放送:2018年7月9日~10月6日
羨雲編放送:2019年8月3日~8月末

ドラマ「陳情令
撮影期間:2018年4月16日~2018年8月24日(4ヶ月)
騰訊視頻放送:2019年6月27日~8月20日

3.ドラマ「陳情令」とアニメ「魔道祖師」について

ドラマ陳情令は、正式開机前の「準備に2年半」とある。【正式開机】とはクランクイン(撮影開始)を意味するので計算すると、準備を始めたのは2015年10月辺りになるのだ。ちょうど魔道祖師の小説連載が始まってすぐに準備にとりかかった、ということなのだろうか? 版権を取るよう会社側に働きかけた時期も含んでいるのだろうか?

アニメ魔道祖師の方が1年ほど中国配信は早かったのだが、陳情令の構想段階が長いために、アニメの脚本はわからず、独自に進めておられたのが興味をひいた。楊夏さんも、「アニメも非常に優れているが、比較するならば原作小説とであり、改編の創作過程でアニメを参考にする手立てはなかった」と話している。お互いの制作陣は、視聴して「そうきたか」と思ったのだろうか。

キャスティングは、江厭離役の宣璐が、2016年末にオファーがあったと特典映像で話されていたので、その頃からだろうか。

美術はアニメもドラマも似ている気がするのだが、全くの独立だったのか、相互作用していたかは制作時期が重なっており不明である。しかしアニメのトレーラー公開が2017年11月頃なので、陳情令の美術道具衣裳の準備(6ヶ月とある:2017年10月頃か?)が始まった頃と前後はしている。設定集を見る限り、似ている部分もあり関連があるように思えるのだが、これは推測である。

衣装など美術関係がどのメディアミックスもわりと共通しており、このルーツがどの時点であったのか気になっている。この時系列一覧を見ていると、同人歌「同道殊途」が最も早く世に出たように思われるが、どのように共通認識になっていったのか興味深い。
2021.2.26追記。以前に同人歌を紹介していたのに、この一覧に載せていなかったと思い出す。あらためて見ると、江厭離の色使い以外は、ほぼ今のイメージと同じである。となると、小説の二次創作イラストで強い影響を与えた絵師さんがおられるのだろうか。


YouTube 同道殊途・新旧版比較(7:50)

4.陳情令の脚本について

脚本の研磨に2年費やし、各話のプロット(分集大綱)だけでも5ヶ月かかったようだ。
脚本のプロットには3つのバージョンが作られた。
ドラマ放映分
②物語が起こった時系列通りのもの
完全に原作小説に添った物語。

最終的には、①原作の核心を損なわないようにして、できうる限り物語に厚みをもたせ、回想シーン(フラッシュバック)をおりいれるストーリーとなった。
②はWeTV特別版にあたるのだろうか。
アニメは③に近く、ラジオ漫画は③である。(BL描写の本国規制はあるよう)

5.原作小説「魔道祖師」とドラマ「陳情令」との違い

私が陳情令について書く際には、原作小説も参考にしており、その箇所を精読して気付くのは、原作は忘羨(藍忘機と魏無羨のカップル)以外肝心なエピソードは結構曖昧であるように思えた。おおよそ魏無羨の共情で語られ、「魏無羨の推測」が多い。

それは元々原作が忘羨を主体としたBL小説であり、いわばそれ以外の物語はそれらに深みや面白さを与えるためだからかもしれない。
またあえてはっきりと書かずに、より複雑な印象を与えつつ、読者に想像の余地を残そうとしているのか。曖昧なものは、実に想像がひろがりやすいのだ

その原作の曖昧でどちらにでも取れる描写を、陳情令では映像化ということもあり、一方に比重をかけて踏み込んだ解釈をし、明白に描いていることが多い。
そして原作ではっきり描かれなかった部分を、「……とあるが実は……」とばかり、「江澄が魏無羨を倒したとあるが実は……」と話を付け加えてもいる。

そうやって原作ではぼんやり描かれていた忘羨以外の登場人物を浮きだたせた分陳情令では忘羨の関係が不明瞭となり、逆に彼らについて視聴者の想像が膨らみやすくなったと言えるかもしれない。

原作小説は、ドラマで描かれなかったエピソードも多く、読むと発見があっていろいろと繋がり、また魏無羨の心情の吐露が興味深い。

5.ドラマ「陳情令」の醍醐味

「陳情令」の改編となった部分も、原作では短くしか描かれなかった部分を、広げてみたらどうだろうか?という発想のようにも思われる。

江厭離が座学に参加していたら金子軒とどうだったか? 藍曦臣と金光瑶が逃亡先でなくもっと早くに出会っていたら? 魏無羨と温寧との結びつきとは? 薛洋や温情や綿綿がもっと早くから活躍していたら? 魏無羨と藍忘機や聶懐桑が、座学のあとも一緒に行動していたら? 魏無羨や藍忘機が暁星塵や宋嵐と実際に会っていたら? 金光瑶が薛洋と悪友になったのは? 蘇涉が鬱屈したのは?  聶懐桑が用意周到に手をまわしたことは? お見合いで悪評高くなってしまった(原作者設定)江澄が若い頃に恋心を抱くなら? 藍忘機が夷陵老祖をなんとか助けようとしていたら?

……といったように結末は変えないが、読者の「もしも~なら」を叶えたifワールドとなっており、それが大きな改編ポイントで、ドラマの醍醐味のような気もしている。 

6.「陳情令」つらい。中国仙侠ドラマにありがちな展開

そして、陳情令が辛かった点であるが、当初から物語が「忘羨」であるのはわかっていた。そうしてドラマを見ている中で、玄武洞のあとに、忘羨は離ればなれとなってしまい、そして物語も辛い雲夢江氏のパートに入っていく。

おおよその中国仙侠ドラマであれば、ああいった場面ではもう一組のカップの話が出てきて、そちらの話で救われて辛さを乗りきれることが多い、しかしいかんせん、陳情令は原作がBLなだけに、他のカップルを入れようもなく、ただただ時折の忘羨場面を頼りに、ひたすら耐えるしかなかった。江澄と温情がちらっと出てきたが、その二人すらも思いが通じあったわけでもなく、忘羨推しな当時の私には印象にもあまり残っていない。

そこがハマってあれこれ考えてブログまで書く要因にもなったが、相当辛くもあった。他の登場人物に思いいれのある方は、また違った思いでおられたとは思う。

今、思えば、その癒やしパートは、江厭離や藍曦臣だったのかもしれないが、その二人がクライマックスで迎える最後を思うと、なかなかの修羅でしかない。


そして、陳情令が現世となり、一気に謎解きや義城編となると、関心は他の登場人物にも移り、最後の黒幕が分かった時に、この物語の縦糸が見えたのだ。

忘羨の物語は横糸で、黒幕を取り巻く物語が縦糸で、この物語を紡いでいたのだ。そうわかった時に、私が陳情令で辛くなりだした時のあの先の見えなさは、この縦糸が物語の奥底に流れていき、表面には見えなくなっていた時だったのかと思いいたった。

縦糸が見えた途端に、陳情令の辛さは変化し、また違った意味で物語にひきこまれる。それは今、アニメで初見の人が感じているであろう「どこへ連れていかれるのだろう?」という思いと似ていた気がする。

アニメ日本語吹替版の感想を見ていると、やはり時系列が飛ぶと、話が分かりにくいと思う人は多いようだ。
ドラマが、最初にドラマチックな崖場面を持ってきて、過去篇を一気に通したというのは、理解しやすさという点でも、正解であったように思われる。
アニメ羨雲編の、辛いあとに切ないパートを入れる作りも好きではあるのだけれど。


物語の全貌が見えると、こんどはその織り込まれ方の濃やかさ、なんとも言えない美しさに魅せられて、いまだに鑑賞しては思いを綴る日々なのである。

 

 

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