このシリーズは義城組の四人と、「陳情令」「魔道祖師」に登場する四人の関係を読み解いているものである。
陳情令・魔道祖師は忘羨の物語である一方で、謎解きも重要なストーリーだ。それらに関わる重要な人物といえば、三尊である藍曦臣・聶明玦・金光瑶と聶懐桑の、清心音・乱魄抄を取りまく四人である。
清心音・乱魄抄編
そんな名称もないが便宜上つけてみた。
ドラマ「陳情令」第39話ー50話。
原作「魔道祖師」第46章-50章、63章、64章、81章-110章。
この清心音カルテットを思いついたのは、ドラマ「陳情令」第40話ー第43話(魏無羨の聶明玦と共情の回)を観ていた時で、聶明玦の殺害をめぐる三尊の関係と義城組のソレが似ていたからである。
しかし義城編カルテットのc阿箐にあたる人物はこの時点では定まっていなかった。そして第44話ー第47話(思思・碧草が金光瑶を告発する回)を観て、聶懐桑がc阿箐のポジションと確信し、次のようになった。
義城編カルテットは、この四人組とも類似している。
a暁星塵ーb宋嵐ーc阿箐ーd薛洋
a藍曦臣ーb聶明玦ーc''聶懐桑ーd金光瑶
ただ、前回述べた金丹カルテットとは意味は変わり、義城編と清心音カルテットは次のような関係性となっているので、まとめて説明したい。それぞれ冒頭のスラッシュの左の人が、説明文の左側の人物に、右が右側の人物と呼応している。
a暁星塵/藍曦臣
b宋嵐/聶明玦は良き盟友である。救った相手d薛洋/金光瑶を信じていたが裏切られ、しかもb宋嵐/聶明玦を害するのに、知らずに自らの技で片棒を担がされる。
c阿箐/聶懐桑のことは気にかけている。
b宋嵐/聶明玦
a暁星塵/藍曦臣は肩を並べられる存在である。
d薛洋/金光瑶を怪しみ問いただすが、d薛洋/金光瑶のたくらみによりa暁星塵/藍曦臣の技でやられる。
c阿箐/聶懐桑
一連の状況に一番立ち会っている。
a暁星塵/藍曦臣を信頼している。
d薛洋/金光瑶のすぐ身近におり、b宋嵐/聶明玦へのやり口で真相に気付く。d薛洋/金光瑶の所業をあばき敵討ちをする。
b宋嵐とは初対面/聶明玦は共に育った大切な兄である。
d薛洋/金光瑶
a暁星塵/藍曦臣に好意をもつが、b宋嵐/聶明玦を殺害しようと、a暁星塵/藍曦臣を利用する形となる。
b宋嵐/聶明玦の気を激昂させ害する。
c阿箐/聶懐桑とは気安く話せる間柄である。
このように義城編カルテットと清心音カルテットは、c阿箐/聶懐桑の太字以外は、より複雑ながらも同じ物語となっているのである。
そしてc阿箐とc''聶懐桑の対比こそが、それぞれのカルテットが「陳情令」「魔道祖師」の物語で語られる長さの違いのようにも思われる。
ドラマでは描かれなかった部分もあるが、原作「魔道祖師」では
- a暁星塵とc阿箐の魂は、宋嵐の持つ2つの鎖霊嚢の中で共にいる(第42章)。ドラマでは暁星塵しか描かれず。
- b聶明玦とd金光瑶の魂は、七十二顆桃木釘で封印された棺の中に共におり戦っている(第110章)
という対比にもなっている。
ちなみに陳情令・魔道祖師の三組のカルテットでそれぞれ生き残ったのは
- 義城組は1人
- 金丹組は3人
- 清心音組は2人
である。
清心音カルテットと弦楽四重奏
このカルテットの役割は、ミリヨの「弦楽四重奏」を再び引用して次のようなものと考えている。
第1ヴァイオリン(藍曦臣)は支配的なパートであるが、第二ヴァイオリン(聶明玦)とヴィオラ(金光瑶)はグループの中心に位置している。彼らは高音と低音を結びつけるのに必要な絆を紡ぎだす。さらに彼らが穏やかで憂愁を帯びた固有の音色を響かせる機会に恵まれていないわけでもない。
チェロ(聶懐桑)は音響の建造物の基礎を担っている。もしもその和声的な土台やそのリズムの拍動がなくなれば、すべては崩れ落ちてしまうであろう。男性的な主張、叙情性、優しさの表現でチェロに優るものは何もない。
この清心音・乱魄抄カルテットはそれぞれ楽器に通じているので
- 藍曦臣:簫
- 聶明玦:太鼓 なんとなくイメージで
- 聶懐桑:短笛
- 金光瑶:琴
の四重奏を聴いてみたい。神秘的で幻想的な音色が聞こえてきそうである。
このように義城編カルテットは、それぞれ金丹カルテット、清心音・乱魄抄カルテットの原型となっている。
陳情令・魔道祖師は、これら三組のカルテットが重なり合って、美しく心揺さぶられる音楽を奏でているのである。
次回は、以前に「藍思追と金凌の考察②」で記した
[魏無羨ー藍忘機ー藍思追]
[江厭離ー金子軒ー金凌]
についての追記を述べたい。
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