笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「愛なんてただそれだけのこと」「宮廷の諍い女」を更新中。⇩カテゴリー選択はスマホでは左にフリックしてください。

赤い袖先12話,13話感想史実/英祖の金縢之詞漢文,日月五峯図,葬家の狗

12話「正祖の即位」感想(吹替版17,18話)

英祖と世孫
英祖とチョ堤調尚宮
和緩翁主と養子チョン・ベギク
それぞれの積もる思いが顕わとなった回。

英祖はサンを息子のイ・ソンと混同し、前の左議政に呼びかける。そんな英祖にサンは最後の責任を果たすよう迫る。

王妃、ドギムを伴って登場~、そして雷!

金縢之詞はここにあるの??
英祖が金縢之詞を読みあげる。

血の付いたチョゴリよ、血のついたチョゴリよ。
桐の杖よ、桐の杖よ。
そなたの無実を訴える忠臣はおらぬのか。
余は後悔しておる、後悔しておる。

血衫血衫
桐兮桐兮
誰是金藏千秋
予懷歸來望思

金蔵千秋」は、それぞれ世継ぎの潔白を訴えた中国王朝の家臣たち
金蔵則天武后に対して李旦への疑いに抗議して切腹(命は取り留める)、
千秋は戾太子劉拠の乱(巫蠱の禍)で、武帝劉拠の無罪を訴えた史実にならう。
最後の一節は「帰ってきてほしい」という意味合いが強いのかな。良い場面だ。

亀の玉爾を翁主から世孫に渡すようにと言い「王としての私は命が尽きてしまった」は泣ける。


明るい日の下で見る広寒宮の本拠地はこんなのだったのかという感じ。堤調尚宮はウォレに「頼れるのは仲間、信じられるのは自分」と龍袍を渡す。

英祖は堤調尚宮に「残った記憶で慚愧の念」「遠くへ去れ」と言うが、堤調尚宮は「宮女が王を慕うのは愚かなこと」と言い、英祖の前で命を絶つという最期。

王妃キム氏はある意味、貸しを作れば応じてくれる存在でもあるのか。


チョン・ベギクは和緩翁主
の命を嘆願。元は漁夫の子で亡き夫に少し似ていたと言われ、翁主に跪拝する。母をすぐに亡くし母上と呼べるのが嬉しかったと、この場面、泣けたよ。いまひとつ真意が分からなかったベギクだが、思えば翁主を案じていたのね。漁夫の子と言うのも史実だそうで、翁主の夫である鄭到達の遠縁にあたる。


王様崩御
。ちょうどドラマ『尚食』でも代替わりだったので、王権交代は大変なのだと実感。
大殿へ白梅も移動、ドギムは『詩経』の「恵而好我,携手同帰」を思い出し、宮女の満足のいく人生とは「自分が望む生き方」と話す。

堤調尚宮の亡骸は簡素なむしろを乗せられ宮中を出た。宮女仲間のボギョンは宮中を出て市井の人となり、髪型も変わっている。『尚食』では代替わりした宮中での妃嬪達が描かれるが、こちらは宮女達の行く末がわかる。


王となったサン
蕩平策で党派間の均衡を図るのは難しい。先王(英祖)は互対(各党派から均等に登用)し、領議政は老論派、左議政は少論派と能力に関係なく置いた。これらの派閥争いで、思悼世子の米櫃事件も起きている。

サンに傷の具合を尋ねるのはドギムだけ。サンはドギムに「そばに置きたい」「家族になりたい」と。
(つづく)

いまひとつの金縢之詞の場所がよく分からなかったが、ドギムの肩「明」、恵嬪指輪「五」、揮項「峯」を「日、月、五、峯」と繋げて、『日月五峯図』すなわち王の玉座の後ろに描かれている絵画を意味するそうだ。韓国の紙幣1万ウォン札にもこの図柄がある。


13話「謀反と救命」感想と史実(吹替版19話)

いよいよ王様となったサン。左翊衛も内禁衛将となっている。いや、内禁衛将は女人の心はさっぱりだと思いますよ?と思っていたら、最近婚姻したらしい。確かに勇敢な姿は見たいけれど、刀剣振りまわすのはコワイよ。そして「あらまぁ汚い人」の口真似~がオモシロイ。結局は同情を買えとアドバイスしてた。

逆徒はウォレか。そしてあっさり捕まっちゃった。回想でドギムの父親は思悼世子を誤った道へ導いた逆賊扱いされており、ウォレはドギムに守ってあげると言ってくれていた。

牢でのドギムとウォレの場面はとても良かった(泣)。「私は好きなようにしちゃダメ?」が印象的で、「みんなが好きになってそばに置きたがる人は、宮中では毒になる」の言葉も重い。手持ちの布でウォレの髪を結んであげるのが、宮女として送りだそうとしているようで切ない……。


正祖はドギムを「葬家の狗(そうかのいぬ)」みだいだと。

《史记 孔子世家》(3)之孔子周游列国
“东门有人,其颡似,其项类皋陶,其肩类子产,然自要以下不及禹三寸。累累若丧家之狗。”子贡以实告孔子孔子欣然笑曰:“形状,末也。而谓似丧家之狗,然哉!然哉!”

「東門に人がいて、その額は帝に似ており、その項は皐陶(の臣)に、その肩は子産に似ています。しかし腰から下は、禹よりも三寸短く、その疲れたさまは、まるで喪家の狗(喪中の家の犬、一説に宿無し犬の意味)のようでした」。あとで子貢が孔子にありのままを告げると、孔子は欣然と笑って言った。「容貌についてはどうかと思うが、喪家の狗に似ているというのは、そのとおりだわい。そのとおりだわい。」
小竹文夫・小竹武夫「史記4 世家下」1995 筑摩書房

 

賭けで水切り対決をする事となり、ドギムは正祖に大きな石を渡そうとするが、内禁衛将に邪魔された。友の爲なら案外ずっこぃドギムちゃんに、意外と正祖は石切りが上手かった。正祖はドギムの友への笑顔にも嫉妬していたのね。正祖の温情で一応賭けに勝ったので、宮女キム・ボギョンが帰ってきた~~~。

王妃は大妃となり、兄が流刑? さらっと言ったけどそんな事が??
気になって調べてみたら、大妃キム氏は貞順王后で、兄の金亀柱は政治的な流れの中で流刑されていた。

ホン・ドンノ兼司書は都承旨となり、サンの異母弟である恩全君の処刑について言及。そしてかつての左議政であるホン・ジョンヨの元にも訪れる。ドンノは王の寵愛が頼りとここまで上り詰めてきた。ホン・グギョン(洪国栄)と呼ばれていて、同族なのね。

和緩翁主の息子も処刑、退室時に「チョン氏の妻」と呼ばれて、礼をしている。
 史実でも翁主は正祖即位後は爵位を剥奪され「鄭妻」とされたようである。もっとも義理の息子であるチョン・ベギクは鄭厚謙で、義母である翁主をかばってではなく、恩全君を担ぎ出そうとした派閥のリーダーだったようだ。

正祖は泥酔、一本線や丸を描いて蘭だと渡している。弟の処刑がされたようだ。案じるドギムにサンは「一番苦しめている」とドギムに言い、「私を退けようとした罰だ」と迫り、ま、王様だしねと思っていたら、寝オチかーーい。白梅が映る。

大妃は諫択令を出して、側室をあてがおうとしている。母である恵嬪は、かつて弟や甥を殺されそうになった時に大妃を頼ったようだ。勧めた側室候補はホン・ドンノの妹。あの宮中へ届けに来ていた子か。恵嬪にドギムは断っていた。

ドギムは「王は人に献げない、自分に何も残らず、自分を失いそうで怖い」とサンに告げる。

朝議で副校理シム・フィウォンが正祖に志を尋ねると、「堯舜でもあるまいし3つは多いな」「治水だ」と告げる。大妃もまた、正祖に「大叔父、叔母養子、弟を殺したが、功績は?」と迫る。堯舜は中国古代の伝説の明君たちで治水に関しても名前が頻出するが、「喪家の狗」の典拠でもちなんだ名前が出ているのだ。
 史実でも正祖が即位後、暗殺しようと刺客が送りこまれ、関連人物が逮捕された中で弟・恩全君の名が浮かびあがったようである。
大叔父は母・恵嬪の叔父にあたる、ホン・ジョンヨ(名は洪麟漢)。
叔母養子は和緩翁主の養子・チョンベギク(名は鄭厚謙)。ドラマではさらっと描かれていたが、洪麒漢たちは思悼世子や正祖にはにっくき政敵だったようだ。

ドンノ妹が元嬪となり、淑昌宮住まいとなる。今宵は王は淑昌宮にお渡り、ドギムは「王に仕える宮女にすぎない」と自分に言い聞かせている。

元嬪が幼いなぁと思っていたら、史実でも元嬪洪氏は正祖2年(1778年)に12歳位で後宮入りとあった。恵嬪とも遠縁で、大妃金氏を通した諫択によって後宮入りしている。

諫択(カンテク)は朝鮮王朝の女性を選ぶ行事で、を選ぶ諫択はあっても、妃より格下であるを選ぶのはそれまでの朝鮮王朝においても例がなく、それを実行した洪国栄の威光を感じるな。
 最終的には3人まで候補を絞り、選ばれなかった2人は生涯独身を貫かなければならず(もしくは側室となる)と選ばれ損じゃないか、その辺りは『尚食』の姚子衿と同じ境遇なのね……。

「ホン氏」「キム氏」と言うとピンと来ないが、「洪氏」「金氏」と見ると、なにかと朝鮮王朝で出てくる外戚なのだ。
(つづく)

 

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