笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「君花海棠の紅にあらず」とアニメ「天官賜福」、漢詩で「山河令」もはじめました。

「陳情令・魔道祖師」と「赤毛のアン」の四人/マシュウと江厭離の愛/ライリー詩「遠くへ」

今回は、私の好きなふたつの作品の登場人物が似ていた

それが嬉しかったのでこの気持ちを共有できる人がいるかも、という話である。


こういうふたつの物語の登場人物が似ている、というのは取りあげ始めるとキリがなく、またその物語を読んでいない人にはあまり興味がわかないものである。

 

しかし「赤毛のアン」は日本でも根強いファンが多く、少数かもしれないがこのふたつの物語が好き、もしくは知っているor興味を持たれる人もいるのではないかと期待して書いてみた。

 

ドラマ「陳情令」・アニメ「魔道祖師」は中国仙侠ファンタジーのブロマンス、原作魔道祖師はBL小説です。

ドラマは楽天・dTV・レンタルにて、アニメはWOWOWにて放映中、小説は日本語訳はまだ出版されていません。

 

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グリーンゲイブルズスノークイーン

 

赤毛のアン~それぞれの時代~

赤毛のアン」と言えば、私の中では村岡花子さん訳の新潮文庫世界名作劇場のアニメである。本を読んでいる時の登場人物の声は、アニメの声優の声で再現されるくらい。

アニメはTOKYO MXで毎週月曜に放映中で、10月12日は奇しくも第48話「マシュウ我が家を去る」である。(全50話)

 

舞台となったカナダのプリンスエドワード島(PEI)にも聖地詣でをし、グリーンゲイブルスに恋人の途、輝く湖水、モンゴメリの生家のニューロンドン、教えた校舎の残るロウアーベデック、クイーン学院の舞台の州都シャーロットタウン。どこをとっても物語そのままの風景に感激し堪能してきた。ロブスターも美味しかった。

遠いことだけが難点で、英語圏で治安は良いし、物語が好きならばお薦めの旅行先である。

島の赤い土が印象的で、ドラマや旅番組で見かけると、プリンスエドワード島はこれこれ♪とワクワクしてしまう。


そして昨年WOWOWで再放送していたアニメ「赤毛のアンを思い出していた。

WOWOWでは世界名作劇場をシリーズで紹介しており、2019年8月より放映された。

 

初めてアンを読んでいた時は、ダイアナとの友情、そしてアンとギルバートがどうなるかばかり気になり、「アンの愛情」で二人が結ばれ、良かった~となっていたものであった。

 

しかし大人になりこの物語を読み返すと、マリラたち大人目線で見えてくるものがある。

そもそもマシュウの手伝いのための男の子と思っていたのが、女の子だったら相当戸惑うだろう。

また初めの頃のアンはそれはもうやらかしの連続で、引き取ったばかりのマリラはさぞ大変だったろうな、と思うし、アンがどんどん成長して分別がつき、家を離れてしまった時のマリラの寂しさも伝わってきた。

それは自分がたどってきた何がしかの思いと重なる部分がでてきたからなのだろうし、同じように感じる方は多いように思う。


 

そしてこのWOWOW再放送時には今までになく、マシュウの一貫したアンへの信頼と愛情が、アンをどれだけ力づけたか育んだかを実感していた。

それまではマシュウの話は死の影を落とすこともあり、気持ちとして遠ざけていた面があったが、ちょうどこの年は身近な人のそれを経験することが続いた、というのもあったのかもしれない。

 

 

陳情令・魔道祖師と赤毛のアン

アンとマシュウの二人の結びつきの強さが、あらためて心温まるものだったとしみじみ思い出していると、なんだかこの感じ、似ている。と思い浮かぶ。

師姉・江厭離と阿羨・魏無羨のふたりに。


ドラマ「陳情令」第2話を見返していた時、2話最後の彩衣鎮での場面で、魏無羨のことをこぼす江澄に、江厭離が「快活なのは悪いことじゃないわ」 「性格は変えられない」と言う場面があり、この時から江厭離は魏無羨を丸ごと受けとめている発言をしていたのかと感じいっていた。

 

そういえばアンも魏無羨も孤児である。

そして小言が多く愛情深いマリラが、江澄に重なってくる。

そうなると好敵手で一時は気持ちのすれ違っていたギルバートは、藍忘機になるのか、などと連想してしまった。そういえば陳情令を初めて観た時も、他の物語より何より「忘羨」を見たがっていたものであった・・・。変わらないなぁ。

 

私的には、マリラ=江澄がちょっと性格的に面白いなと。

ふたり共に、自分の気持ちを口にするのは苦手で、愛情と反比例に厳しく接してしまうところなんか。

そしてマリラの目が悪くなりグリーンゲイブルズを手放す話が出た時に、アンが大学進学を諦めて教師になるところも、金丹のくだりと似ていなくもない。

物語はじめの頃に、アンがリンド夫人に謝るまで自室にいるようにマリラに言われ、マシュウがそっと部屋へ行きとりなした場面も、子どもの頃、江澄に部屋を閉め出された魏無羨を、江厭離がそっと迎えに行ったのとすこし重なってくる。

 

そしてなによりどんな境遇でも生き生きとして魅力的なところが、アンと魏無羨なのである。おしゃべりなところもネ。

 

赤毛のアンを思い出したあと、アニメ「魔道祖師」第6話で師姉が出てきて、魏嬰が金子軒を殴った理由を察して、「ずっと見守ってきた私をごまかせると? 気に食わないだけで殴るわけがない」と語る場面では、なんだか目頭が熱くなってしまった。

 

マシュウもたえずアンを見守っており、討論クラブのコンサートでも反対するマリラに対して、アンを行かせるべきだといつになく主張する。そうして行くことがかなったアンは「マシューは私のことがちゃんとわかるのよ。わかってもらえるって、とても嬉しいわ」と喜んでいる。(原作第19章)

 

マシュウや師姉のような存在が、与える力というか温もりというか確かさというか、そういうものをあらためて感じている。


赤毛のアンの中国語タイトル
中国での「Anne of Green Gables」は、「緑山牆的安」もしくは「红头发安妮」。

台湾の「清秀佳人」は、アニメ「赤毛のアン」を指すようです。

中国での「赤毛のアン」の人気はどうなのかな?

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島の名所・フレンチリバー

 


赤毛のアン関連本について
赤毛のアン」は私の中で周期的にブームになる物語で、その度に「赤毛のアン」関連本を読んでいる。

 

今回は勢いに乗って、松本侑子さんの「赤毛のアンプリンス・エドワード島紀行」「誰も知らない赤毛のアン」、文春文庫「赤毛のアン」、「赤毛のアンに隠されたシェイクスピア」を読んでみた。

 

赤毛のアンプリンス・エドワード島紀行」は、島内のアンにゆかりのある所が満載で、特にグリーンゲイズルズは各部屋の紹介と見取り図まであり、物語に出てきた草花も楽しめ、訪れた気分になれる図説本である。

 


「誰も知らない赤毛のアンでは、プリンスエドワード島の歴史や物語に出てくる草花の意味、モンゴメリ自身の生涯や執筆への思いが、「赤毛のアン」と結びつけて詳しく解説されていて、読みやすく面白かった。作者が人気の自作シリーズに複雑な思いを抱く、というのは時々耳にするので、そうだったのか・・・。

 


それを踏まえて読んだ文春文庫本は、丁寧な訳注も付いており、いっそう物語の世界に奥行きが感じられ浸っていた。

「魔道祖師」の日本語訳本が出たら、きっと読み落としていたいろんな発見があるのだろうと思う。

 

また今回はじめて、マシュウの年齢が60歳であると気付き、思っていたのと違っていた。(原作第1章)

というのも、かつてマリラはギルバートの父親と親しかった、とあったから、なんとなくマリラは40代くらい、マシュウは50代くらいかと思っていたのだ。

アンが引き取られた年齢は11歳(原作第5章)なので、ギルバートが少し年上としても、そんなものかと。

しっかり読んだら、マリラは幼い頃に自分の器量を噂されたのを「50歳になるまで一日と忘れられなかったほどだった」とある。(原作第9章) おやまぁ

 


そして赤毛のアンに隠されたシェイクスピアは、なにげない一文が、シェイクスピアをはじめとする英米文学から取られており、それを読み解く松本侑子さんもだが、作家というのはここまで考えて物語を作っているのかと、改めて感じ入る。

 

 

James Whitcomb Rileyの詩「Away」

そして何より「赤毛のアンに隠されたシェイクスピア」の最後に紹介されている、マシューを喪ったアンがアラン夫人からかけられる言葉「いま、マシューは、ちょっと遠くにいるだけなのよ」。(原作第37章)

 

その言葉は、アメリカの詩人ライリー「遠くへ」の詩から引用されているとあり、その詩が心に残った。本には詩の日本語訳全文が載っており、興味がある人は本を読んでもらいたい。

 

ここでは原文英語の詩より、胸に沁みた部分を抜粋している。サイトより引用。拙訳は参考までに。

 

James Whitcomb Riley「Away」

I cannot say, and I will not say
That he is dead– . He is just away!

私は言えない、そして言わない。
彼が死んでいるということをー。彼はただ遠く離れているのだ!


With a cheery smile, and a wave of the hand
He has wandered into an unknown land,

にこやかな笑顔で、手を振って
彼は見知らぬところへとさまよっていった


And left us dreaming how very fair
It needs must be, since he lingers there.

彼がそこにとどまっているから、
そこは とても良いところに違いないと

われわれに夢想させたまま 去っていった。

And you–  O you, who the wildest yearn
For the old-time step and the glad return–,

そしてあなたがーおお、あなた、
懐かしい足取りでの 喜ばしい帰還を請うている人よ

 

Think of him faring on, as dear
In the love of There as the love of Here;

彼が ここを愛しているのと同じくらい大切に、
そこを愛して旅をしていると考えてみて

(略)

 

James Whitcomb Riley on Poeticous.

 

なんだか今はすこし遠いけれど、でもいつか自分も辿り着くような、そんな所でのびのびとしている、─そんな気にさせてくれたのである。

 

 

 

fuenone2020.hatenablog.com

 

外部サイト

赤毛のアンに隠されたシェイクスピア

赤毛のアンに隠されたシェイクスピア

  • 作者:松本 侑子
  • 発売日: 2001/01/26
  • メディア: 単行本
 
誰も知らない「赤毛のアン」 背景を探る

誰も知らない「赤毛のアン」 背景を探る

  • 作者:松本 侑子
  • 発売日: 2000/06/26
  • メディア: 単行本