笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「愛なんてただそれだけのこと」「宮廷の諍い女」を更新中。⇩カテゴリー選択はスマホでは左にフリックしてください。

李白 侠客行にみる魔道祖師,陳情令/金庸 侠客行/陳情令4周年記念によせて⑳中国文学,ブログ3周年

6月27日ドラマ『陳情令』が本国放送開始された日で、今年は4周年となる。
毎年、公式からもなにがしかのお祝いがされており、今年は記念グッズの発売が告知された。
ドラマ陳情令公式Twitter

ついでに当ブログも開設3周年なのだが、毎年、陳情令を祝うのに忙しくなおざりなままである。開設当初は近い方が覚えやすくて良さげであったが、もう少しズラした方が落ち着いてまとめられたなぁと思わないでもない。クリスマス等メジャーなイベントが誕生日の方はこんなお気持ちだったりするのだろうか。

当ブログもちなんだ記事を毎年挙げており、今回は『魔道祖師』や『陳情令』とも縁の深いであろう李白の『侠客行』を取りあげる。中国ドラマでも時々出てくる漢詩で、『長安二十四時』でも出てきたようである。

侠客を称え、中国戦国時代の趙の侠客や、信陵君と肉屋の朱亥の親交を詠じたもの。ドラマ『夢華録』第24話で蕭欽言が詠じていて、調べる内にひらめいた! 信陵君や肉屋の朱亥と言えば、記事『魏無羨の名前の由来』で触れていた人物たちなのである。

本当に魏無羨の名前の由来かどうかは、作者でない限り分からず、このブログはあくまで中国文学の中にドラマの片鱗を見つけて楽しもうという趣旨で記しているので、その点はご容赦を。

史記 魏公子列伝』に、魏無羨の名前や物語のエピソードの元らしきエッセンスは感じられたが、なぜにこれらの人物の名前を取りあげたのかが当時はよく分からなかった。

が、『侠客行』という漢詩が由来であれば、『魔道祖師』のテーマにどんぴしゃりではないか。なんとなくであるが、墨香銅臭氏は李白にちなんだものを記しておられるような気がしている。史記 魏公子列伝』については繰り返しになるのでここでは省略します。

李白(唐代)《侠客行
赵客缦胡缨,吴钩霜雪明。银鞍照白马,飒沓如流星。
十步杀一人,千里不留行。事了拂衣去,深藏身与名。
闲过信陵饮,脱剑膝前横。将炙啖朱亥,持觞劝侯嬴。
三杯吐然诺,五岳倒为轻。眼花耳热后,意气素霓生。
救赵挥金槌,邯郸先震惊。千秋二壮士,煊赫大梁城。
纵死侠骨香,不惭世上英。谁能书閤下,白首太玄经。

趙の侠客は縵胡の冠ひも、帯びる剣は呉鈎、刃は霜雪のごとく輝く。
銀の鞍は白馬を照らし、流星さながら、さっと駆けぬける。
十歩進む間に一人を殺し、千里の行く手を遮る者はない。
事成し遂げれば上着を払って立ち去り、その名のたたぬように深く身を潜める。
ゆったりと信陵君をたずねて酒を酌み、外した剣は膝の前に横たえる。
炙肉をば朱亥の肴とし、觴を手に侯胤に酒を勧める。
三杯の酒に契った事の重さは、五岳さえ、かえって軽く思わせる。
目がくらみ耳が熟した後には、その意気は白い虹が立ち上るほど。
趙国を救おうと金の槌を振り下ろせば、邯鄲の人々はその功しに震え驚く。
千秋ののちも二人の壮士の名は、大梁の町にしかと轟くであろう。
死してなおその侠香は香り立ち、世上のいかなる英傑にも恥じぬもの。
しかれば、誰が書閣にこもり、老いさらばえて太玄経の著述を事とするだろう。
和田英信「李白 上」2019 明治書院

呉の剣というと、含光君の剣を連想し、霜雪には宋嵐、事を成し遂げた後に身を潜ませるあたりは聶懐桑を彷彿とさせる。

ちょっと面白いのは、最後の段で侠客の対比として白髪になるまで研究に勤しむ学者を挙げており、書閣、と聞くと蔵書閣を思い出すのだ。


そしてこの漢詩そのものが小説の冒頭に出てくる金庸の小説もあり、その名も『侠客行』なのだ。なにかオマージュされているものがないかと読み始め、最もおぉぉとなったのが、第六章に出てきた、

「気寒西北」の白万剣と「風火神龍」の封万里は、合わせて『雪山双傑』と呼ばれ、武林での名声は名高いとある。
金庸,岡崎由美,土屋文子「侠客行」1997年 徳間書店

である。みなさん、双傑ですよ~~~。

つらつらと『魔道祖師』『陳情令』を連想した箇所を挙げてみました。深読みし過ぎな面もあろうかと。

 

金庸侠客行』と魏無羨や藍忘機

第一章。一頭は頭から尾に至るまで黒く、四足だけが白い。『烏雲蓋雪』と呼ぶ名馬である。いま一頭は四足が黒く、馬体は純白。書物に「墨蹄白兔』と記されるもので、国内ではきわめて珍しい。
白馬の騎り手は白装束の女、鬢に赤い花を簪し、腰には緋の帯をしめているが、それさえなければ喪服と見まごう装いである。帯には白鞘の長剣を佩げていた。黒馬のほうは壮年の男、黒の衫を羽織り、腰に佩いた長剣の鞘も黒い。

白と黒の対比は魏無羨と藍忘機、そして暁星塵と宋嵐でも用いられているし、魏無羨の両親である魏長澤と蔵色散人もそうである。そしてなんといっても「喪服と見まごう」というのが含光君!なのだ。

 

第三章。「母さんがいつも言ってる。『狗雑種、おまえは一生、人様にものを頼むんじゃないよ。人にくれる気があれば、頼まなくったっていいし、その気がなければいくら頼んだって嫌われるだけさ」。

魏無羨の母親・蔵色散人の教えを思い出す。
そして主人公の呼び名である狗雑種と、犬が恐い魏嬰。ちなみに狗雑種とはいわゆるthe son of bitchという意味らしく、なんだか妓女の子呼びも思い出す。

第八章。石破天が言う「ひとを傷つけず、自分も傷つかない技ってないかなあ。みんな楽しく、仲間になって、喧嘩しないですむような」。

魏無羨の「洪水などの水害も流れを良くすることが上策、浄化が効かないものをなぜ利用しないのか」が思い浮かんだ。

 

第十七章。わが派の掟の第三条は、「武芸の心得なき者を害するべからず」、第四条は「無辜の者を害するべからず」。

魏嬰はその為に戦っていた。

 

第十章。「金鳥とは太陽のことよ。陽が昇れば、雪はどうなる?」「解けます」「そうよ。陽が昇れば、雪は解けて水となる」。

太陽=魏無羨、雪=座学時代の藍忘機、というイメージ。

第十三章。「石夫妻は武林によい人脈を持っている。二十年来、私財をなげうって数々の苦境を救い、しかも見返りを求めたことはない

逢乱必出の含光君を思わせる。


侠客行と江澄と虞夫人

第五章。泥人形の中に木像が隠されており、そこには神功が描かれていた。
仏法では貪瞋癡を『三毒』と称する。財色をむさぼるのが貪なら、禅悦・武功にひたるのも貪。

三毒!江澄の剣名。

 

第十四章。丁不四は九節鞭の遣い手で、金色に輝く軟鞭で、九つの節をもち、拵えは黄金、先端は龍頭をかたどり、宝石をちりばめて、燦然と光を放つ。剛猛にして華麗、見事な品だ。

虞夫人や江澄の鞭である紫電を思わせるな。

第十四章。高三娘子は鉄火の気性で、気位も高い。本人の腕がたしかな上に、父に祖父、師は、いずれも関東の武林で名の知れた人物(略)。関東の武林に聞こえた美貌は、四十近くなった今も衰えておらぬ。

虞夫人の呼び名でもある三娘子!寡婦というのが異なってはいる。

侠客行と夷陵老祖

第一章。侯胤は大梁の亥門の監者であった。大梁城の東に山があり、地勢が平夷なことから夷山という。ゆえに城の東門は夷門と称された。

夷陵という地名は他にあるのだけれど、夷陵を連想してしまう。

 

第一章。子供が左手に持ってる、黒ずんだ鉄板は、伝説の『玄鉄令』のようだ。

皆が欲しがるのは陰虎符や陰鉄のようだ。

第二十章。隠さぬ財は盗みを招く、という。絶世の技を身につけたと武林に知れれば、羨望が妬みや憎悪を呼び、伝授を強いたり秘密を明かせと迫るものが出よう。それが叶わねば、手立てを尽くして害をなそうと図るだろう

陰虎符=絶世の技であり、隠さぬ財で、それを求めて夷陵老祖は恐れられ、ひいては排除された。

 

侠客行とそれぞれ

第二章。丁不三は、『一日不過三』で一日のうち殺すのは三人と決めている。

聶懐桑の「一問三不知」を思い出す。

 

第九章。老婆が丁不四たちに言う「皆が「丁氏の双雄、雲泥万里」と言い伝えるのも無理はない。(略)兄貴が雲弟が泥よ」。

なんとなく、金子軒と金光瑶の待遇の違いを思ったのだ。

第九章。史婆婆が冷ややかに言う「平地の虎は犬にも勝てぬ」とはこのことよ」。

小説『魔道祖師』第1巻第二章、魏無羨が舎身呪で召喚され、夷陵老祖が甦ったのに出て来たのは残飯……という場面でも出てくる表現である。


第十一章。史億刀が張三、李四と義兄弟の誓いを立てるのだが、仮の名で誓うため成立していない。

三尊の誓いのようだ。。。

第十三章。石夫妻には2人の息子がおり、長男が満1歳の時に悪い女が母親を殺しに来て、次男は生後1ヶ月。女に次男をさらわれた。

年はさほど変わらないが、なぜか気性は全く異なるふたりである。


などなど列挙してかえって分かりにくいかもしれないが、読みながら『魔道祖師』『陳情令』を思った箇所をまとめてみた。


この金庸侠客行、最後、そう来たか!とスカッとする中、敢えてルーツを不明にしたのは何故なんでしょうね。ストンとお話が終わるのがヴェルディのオペラのよう。

興味を持たれたら是非、金庸の『侠客行』もご一読くださいませ。

 

肖戦主演の『射鵰英雄伝』が公開されたら、再販となっておジャンさんの帯付き文庫本が出たりしないかしら。蒼穹の昴』で宝塚スターな帯を見た。需要はあると思うのだけれど~。

 

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