笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。アニメ「天官賜福」「愛なんてただそれだけのこと」「恋心は玉の如き」を更新中。⇩カテゴリー選択はスマホでは左にフリックしてください。

魔道祖師日本語版小説感想 第1巻

第1巻2021年5月27日に発売された。現在3刷目となる大人気のようで拍手~。前回は特典版を紹介したので、今回は第1巻の感想をば。
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第4巻の感想はコチラ
番外編の感想はコチラ

第1巻について

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第1巻表紙

第1巻表紙は、白木蓮が描かれていることから蔵書閣の窓からの場面ですね。表紙見返しそでにも注目である。

表紙カバーを外すと、濃紺色であり、裏には魏無羨の随便と陳情のイラストが描かれている。帯のコピーは「時を越えた、運命の再会」。

第1巻は原作では第37章までとなっており、おおよそ義城の途中まで。
アニメは第2期を終えるところ。義城編は第3期でこれから放映なので、アニメで観たい、という方は第六章までで止めればだいたいは大丈夫とは思われる。
陳情令視聴時の私は、夷陵老祖のツラさを、第七章のお酒の場面までを読んで乗り越えていたので、そこまでもアリである。

タイ版と比べると、タイ語はさほど文字が詰まっていないのに対して、日本語版は二段組なので圧倒的に文字数が多い事がうかがえる。世界の翻訳版の中で、一番文字数が多くなっているのはどこの国なのだろう? 中でも日本は上位のような気がする。

そう考えると、魔道祖師コミックや資料設定集の翻訳化は結構難しいように思えてくる。スペースが限られている中、日本語翻訳文がおさまるのか?問題があるのだ。

個人的な中国語版と日本語版との違い感想

用語の説明に、漢字の読み方ふりがなとわかりやすい。翻訳もこなれていて、するする読みやすいのはさすが翻訳家&製作協力陣である。

中国語から日本語になった直感的な印象は、乱魄冒頭のような暗がりの洞窟ろうそくの灯で歩んでいたのが、昼間と変わらないような明るさとなって、それぞれがハッキリと見えてわかりやすくなった感じ。

さて、ここからは第1巻を読んだ人向けとなる。

今回、印象に残ったのは、原作小説を読んでいた時に読み飛ばしていた部分なので、初見組とはまた異なった感想と思われる。

この度で最も解像度が上がったのは、登場人物の風貌に関する描写であった。容姿については、細かいニュアンスがわかるわかる。金凌は冷たい感じだったのが意外。皆、あまり興味はないだろうが、莫子淵は「つり目でガラガラ声だったのか!」と感心していた。そういえばアニメの莫子淵はつり目か?

別称がいろいろあり、魏無羨は「無上邪尊」「魔道祖師」なのも面白い。
「召陰旗」にも「的旗」「黒風旗」。
「夜狩」は「遊猟」とも言うらしい。

術名も多く出ていて「明火符」「剣欄」「照妖鏡」「燃陰符」とある。

登場人物たちの口調や呼び方による雰囲気も、丁度良い感じ。

魏無羨:「俺」「あんた」「お前」「あいつ」。
藍忘機:「私」「君」。
江澄:「俺」「お前」「貴様」。
金凌:「俺」「お前」「あいつ」。
藍曦臣:「君」。
藍啓仁:「君」。
藍思追:「あなた」「君」。
藍景儀:「俺」「あんた」「あなた」。
聶懐桑:「僕」「君」。

公子」表記がそのままなのは嬉しい! ひとつだけ惜しいのが、藍忘機の「藍二公子」が「藍公子」なこと。ルビをふって無理矢理にでも「ランアールこうし」でも良かったなぁ。藍忘機の「藍二公子」、聶明玦の「大哥」にはこだわりがあるのだ。
「忘機兄」が「忘機さん」となると、なんだかお隣さんな感覚になる。

用語説明で「修士」とあり、今まで「仙師」「修師」と表記してきたので困ったなぁと少々思う。

あと、章立てが原作よりもまとめられていて、今まで原作小説〇章と記してきたので、表記としてコチラも困ったなぁと。

小説は小説と、虚心で読むのが良いのだろうが、読みながら陳情令とアニメの映像に、アニメ吹替版の音声が再生されてしまう。陳情令を見ていた時も、原作小説といったりきたりしていたので、なかなかそのものを味わうのが難しいという、贅沢な悩みとなっている。

第1巻感想

つらつら感想です。

第一章 復活 / 重生

物語の冒頭が、人びとの風評で始まるのが秀逸である。これによってある程度、魏無羨のイメージが出来るが、1周して物語を知ると「そう言われていたのか」となる仕掛け。
「死して屍拾う者なし」は【死無全屍】。「棺を覆いて事定まる」は【蓋棺定論】。

第二章 荒狂 / 潑野

莫家庄での出来事。

金氏が莫玄羽を迎えにきた時に、莫子淵が一緒に付いていこうとしたくだりで「市場で白菜を買うんじゃ無いんだから」「この一家どこから湧いてくるのか妙な自信があって」という表現が面白かった。

「虎も山を下りれば~」の【虎落平陽被犬欺,龍遊淺水遭蝦戲,拔了毛的鳳凰不如雞】は、「能力の高い人が苦境に陥ると、力を発揮できず、凡庸な人にも虐げられること」の喩え。

「役所に届けよう」とあったので、魔道祖師にも役所があったのね。

莫夫人や莫子淵とやりあった後に、魏無羨が「ららら~」と歌いながら逃げたのが、ちょっとミュージカルみたいな光景を想像して笑えた。

藍家の校服の内側は、細い糸で呪術を真言が刺繍されているとあり、想像するとスゴイ服だな。

藍忘機の琴の音が「冬の風が松林を吹き抜ける時のような冷涼さ」【甚是空靈澄澈,帶着一股泠泠的松風寒意】とあるのが美しい。

第三章 驕傲 / 驕矜

大梵山雲深不知処へ。

史記巻88 魏公子列伝第17

公子闻之,意骄矜而有自功之色

公子はその事を聞いて、得意げに自分の功績を誇りにする表情をみせた。
水沢利忠「新釈漢文大系89巻史記九(列伝二)」1993 明治書院

「大梵山/ fàn」を「大飯山/ fàn」と聞き間違えていた。 

魏無羨の「遭魏必吵」と、藍忘機の「遭乱必出」は対になっているのかしら。前者は「魏無羨が関わると争いの種になり」、後者は「騒ぎのある所には必ず現れる」。つまり「二人は必ず会う」という意味になるんだろか?(超意訳)

相変わらずの藍忘機の「万年喪主」は【披麻戴孝】。麻布の服を着て白い帽子を被り哀悼の意を示すこと。

第四章 雅騒

連れてこられた雲深不知処と主に座学時代。

雲深不知処の清涼さが伝わってくる描写である。冷泉には蘭草(フジバカマ)、蔵書閣には白木蓮が咲いている、と植物名が出てくるとちょっと嬉しい。

冷泉で含光君を覗いたと申告した魏無羨に驚いて、藍思追が甲高い声で叫んだというのも珍しくて想像してしまう、

雅正集を書き写す罰に対して「藍家に婿入りするつもりもないのに」と言っている若き魏無羨。

水行淵で「こういうのがあればなぁ」と言って、のちに召陰旗や風邪盤を開発したのか、発明家だ。

水行淵で船の喫水が下がっている事を知らせたくて、魏嬰が言った「藍湛、こっち見て!」の【看我】は、のちにも時々出てくるので印象に残っている言葉である。

座学時代、魏嬰が夜に天子笑を持って塀を登った所を藍湛に見つかり、抱きついて一緒に塀の外に落ちた場面があるが、復活後、藍湛の右胸の上で晩を過ごすことになったのは、対比となっているように思えた。

第五章 陽陽

冥室清河

章タイトルと、関連とおぼしき中国文学を参考程度に。

詩経 国風 王風 君子陽陽

君子陽陽  左執簧
右招我由房 其樂只且
(略)
あの方は屈託なげに
左の手には笛を持ち
右手で房中(東房)からわたしを招く
いかにも楽しげに
高田眞治「漢詩体系1詩経上」1966 集英社

この詩は解釈が分かれているが、”共に楽を奏せよと楽しげにすすめている”説を取った。笛といっても簫のようだが、細かいことはさておき、魏無羨と藍忘機が合奏することを詠っているようにも思える。2021.6.16追記

避塵はランタン代わりにもなり、自ら動いて壁をくり抜いてもいたのか。 

第六章 陰悪 / 陰鷙

清河、祭刀堂
藍忘機が魏無羨をお姫様抱っこ。中国語でも【公主抱(公主は皇帝・国王の娘,姫)】。
祭刀堂のカラクリがより明確になる。

第七章 朝露

櫟陽。このお酒の場面は、魔道祖師の癒やし場面~。

三国志 曹操 短歌行

対酒当歌 人生幾何
譬如朝露 去日苦多
慨当以慷 幽思難忘
何以解憂 唯有杜康
(略)

映画「レッドクリフ2」でも曹操が詠んだ詩。
”人生は朝露のようにはかない。酒を飲んで憂いを忘れよう”といった意味合いである。2021.6.16追記

酒家で魏無羨の肩を組んだ店員に「家の躾が厳しくて、自分の前で人が肩を組んだりするのが嫌いなんだ」と言っているのにも、「いやいや、他の人が組んでいたなら気にしてないって」と読者は言いたくなる一場面。どれだけ座学時代、睨んでいたんだ。

子どもたちが射日の征戦ごっこする中で、自分の役の子が隣に座るというシュールさ。しかも夷陵老祖の雰囲気をちゃんと出しているお子さま役者。笛クルクルまわしは子どもにも大人気。
そこで征戦ごっこを見ていて魏嬰の体中を走った痛みが、藍忘機役の子どもを見て消え去るというのがよきよき。

第八章 草木

義城編。藍忘機が小石蹴ってジリジリとは……。

点晴招将術が凄みがあって面白い。こういうのはチャイニーズホラーめいていて実写でも見たかったな。規制があるのかな?

ここで魏無羨がつぶやいた「明眸は恥じらい閉じて、赤い唇は笑みにほころぶ/ 媚眼含羞合,丹脣逐笑開」は、南朝梁の何思澄(かしちょう)『南苑逢美人』にある。

魏無羨が、辛い粥から、かつて夷陵で藍忘機と食事を共にした事を思い出し、「藍忘機の顔を見たくてたまらなくなっている」のに、ちょっとニンマリしてしまう。

魏無羨の「幽霊というのは度胸のある人が一番苦手なんだ。(略)仙門世家の弟子として何よりも重要なのは、度胸を鍛えることなんだ!」というのが妙に納得できた。


とにかく小説版の魏無羨はかわいいのだ。
魏無羨先生が少年組たちに教えをひもとく姿が好きな巻である。

 

 

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▼藍忘機が焚きしめていた香りは白檀。

 


【山野草】濃色フジバカマ