笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「君花海棠の紅にあらず」とアニメ「天官賜福」、漢詩で「山河令」もはじめました。

魔道祖師日本語版小説感想 番外編小冊子/蓮逢,奪門,鉄鉤,雲夢,朝暮

番外編は8編あり、
「家宴」「香炉」「悪友」「朝暮」は4巻に、
「奪門」「鉄鉤」「蓮蓬」「雲夢」は小冊子におさめられている。

発表順は、「家宴」「香炉1」「悪友」「香炉2」「奪門」「鉄鉤」「蓮蓬」「雲夢」「朝暮」。香炉は1,2が統合されている。

小冊子は128pで厚さ0.7cmほど。イラストは「雲夢」の場面かな?

 

家宴

結局のところ、林檎ちゃんの性別はどうだったんだろ?なんとなく♂のような気がしていたけれど。 大梵山の丸顔の少女とは、1巻で林檎をくれた少女か。ドラマでは阿臙(踊る女性)が林檎を渡していたからしばし考えた。
 ウサギを見て魏嬰が抱いた「藍湛は何歳から飼い始めたんだ?」には15,6歳ですとお答えしよう。

【一言九鼎】とは、一言が九鼎に匹敵するほどに重いという意味。『史記 巻76 平原君虞卿列伝第16』での趙の平原君と楚王との交渉における毛遂の働きが出典である。

毛先生一至楚、而使趙重於九鼎大呂。
毛先生三寸之舌、彊於百萬之師。

毛先生はひとたび楚に到着するや、趙を天子の宝器よりも重からしめた。
毛先生は三寸の舌で、百万の軍隊よりも強力だ。

九鼎は古代中国の王権や国家統一の象徴。「舌先三寸」はここから来ている。
防火、防犯、防魏嬰と、なんだかお札のようである。

香炉

白居易に『香炉峰下新卜山居草堂初成偶題東壁』という詩がある。

日高睡足猶慵起 小閣重衾不怕寒
遺愛寺鐘欹枕聴 香炉峰雪撥簾看
(略)

日は高くのぼり、たっぷりと眠ったが、まだ起きるのはめんどうだ。
小さな高楼で重ねたふとんにくるまっていると、寒さなど感じない。
遺愛寺の鐘が響くと、枕をたてにして耳をすまし、
香炉峰の雪は、簾をはねあげて、ふとんの中からしばし眺め入る。
石川忠久「漢詩をよむ白楽天100選」2001 日本放送出版協会

香炉峰は、江西省の廬山にある峰の名前で、形が香炉に似ているらしい。
なんとなく魏嬰が静室でごろごろしている様子が目に浮かんでくるようでもあり紹介してみた。

☆  ☆  ☆

魔道祖師界では名高い「香炉」。私も前評判は耳にしており、本編で盛りあがったこともありドラマ終了まで我慢して、最終回を迎えて晴れて解禁!して読んだ。

……あれ? なんだか本編のように自分の中で盛りあがらない。こんなことなら、あのツラかった夷陵老祖の時に読めば良かったと、ちょっぴり後悔していた。

今回あらためて読むと、やはり本編と番外編での忘羨が結ばれる場面で受ける印象が異なっていた。本編だと良かったね~と一緒に盛りあがったのだが、番外編だとどこか置いてけぼりな疎外感さえ感じてしまうのが、不思議だなぁと思ってしまう。

多分、本編でふたりが本懐をとげているので、私としてはそれで満足で、番外編になるとどうも身内目線になり、「仲が良いならそれでいいから、ふたりでどうぞ……」と目のやり場に困る感じなのだ。ある意味、江澄や藍景儀の気持ちがよくわかる。嗚呼、身内気分になる前に読みたかった……。

献舎される前の魏無羨と藍忘機が結ばれるところを、というファンの願望は叶えられているんだろうな。
 奪門と鉄鉤で繰り返されていたのが「生きている間に遂げられなかった思い」が高じた怨念たちの出来事だったので、忘羨の間で高じている思いが、このラブラブぶりなのかな、とも思ったりする。

悪友

とんだ厄災ぶりは薛洋もだが、一番は金光善じゃないか。と、読み進める内についに金光善への激しいアレルギー反応が出てきて、しまいには彼の血筋が呪わしくなり、金凌はもちろん、魏無羨の中にもその血があるのかとゲッソリして困っていた。1日くらいでおさまったけれど。「悪友」で嫌悪感の結界が切れたようだ。血が呪わしいとは、結構しんどい思いだと妙に実感してしまった。

そして、この章で思いがけず江澄の思いー魏無羨は死んでおらず、戻ったとしたら陳情を取りに来るはずだ、と思っていたことがわかる。うぅ、切ない。再会した時にそう言いなよ、と言いたくなるが、なんせ江澄は虞夫人系だしなぁ……。

そしてあらわれた暁星塵と宋嵐が、清々しいだけに複雑な思いになる……。まさに薛洋は有言実行だった。

 

奪門

「奪門」を読んで、「これこれ、こういうのを待っていたのよ」と思った番外編。
屋敷の意味が語られ、邪崇は主が言葉や行動で招かない限り侵入できない、ともある。藍忘機の顔に「彼(魏無羨)はおおげさなことを言って脅かしているのです」という表情がないという表現が面白い。

この秦家の家僕の扱いはあまり良いものではなく、「家僕」という身分の不確かさを感じると共に、魏無羨が受けていた扱いの異例さもうかがえる。資質はまったく異なるが、家僕だと彼のような目に遭う可能性もあったということか。そして金光瑤が学び舎へ行かなくなったことも思い出していた。

相手が戻ってきたのは、誰かがその事故に対する責任を取らなければならない」という言葉が重い。

淫魔と噂されていたと魏無羨が文句を言うと、藍忘機の笑いのさざ波、という表現も面白いな。

恨み始めると、自分こそが誰よりつらい思いをしてると思う、とあったが、自分のことで頭がいっぱいで他のことなど考えられる余地がなくなることはあるよなぁ。

鉄鉤

観音廟以来、魏無羨と金凌が初めて再会しており、「なんか用?」と言う距離感なのがイイ。金凌が江澄のことを気遣って「叔父上は金姓じゃないし」と言っているのを魏無羨がたしなめていたり。

とはいえ、魏無羨に「前までのバカみたいなお前」と言われている金凌よ……。
そして金凌は優しく話をされるのに慣れていないのね……師姉こそ、そういう人だったと思うと遠い目になってしまう。やはり金凌と魏無羨叔父とのやりとりは良いなぁ。

藍景儀の感情移入しやすい性分、好きよ。そして少年たちの名前を覚えてない魏無羨てば……。

死者が成仏できないのは、叶えられなかった願いがあるから。そして人間としての本性と人情の常に背いても、それは同じであり、存分に叫ぶと満足する。ということだった。このあたりはこの物語を通して述べられているように感じる。

 

蓮蓬

蓮蓬は蓮の花托。この章はずっと「蓮逢/ 蓮に逢う」だと思っていた。よくよく見ると草冠が付いていた。

李白に『蓮採曲』という詩がある。

若耶渓傍採蓮女
笑隔荷花共人語
(略)
岸上誰家遊冶郎
(略)
見此踟厨空断腸

若耶渓で舟をうかべて蓮の実を採る女たち
笑って荷花ごしに話し合っている
そのとき岸の上では馬にまたがった貴公子たち
あとを見送る採蓮のむすめたち、むねいっぱいの切ないおもい
吉川,三好「新唐詩選」1952 岩波新書

一,二行目、舟に乗って蓮の実を採り、賑やかな魏無羨たち。
三行目、岸には雲夢の女の子達もいたが、後段で雲夢の蓮池を訪れた藍忘機を貴公子と想像してみて、
四行目、魏嬰が(そこにはいない)藍湛に思いをはせている、と考えてみた。
小説後段では藍忘機の世話をやいた採蓮女さんも出てきている。

また、 lián という植物は、「 lián /いとおしい」と音を同じくするともあり、物語の心情とも重なっている思いがする。

雲夢蓮花塢

真夏の暑い中、必ず張り合う魏無羨と江澄の暑苦しさが青春している。そして西瓜を食べる内に、突然藍忘機のことを思い出しているのが良き良き。

虞夫人は人ん家の子供にも容赦ないんだな。とばっちりをうけて虞夫人に怒られる藍忘機も見てみたかった。顔に出さないけど藍忘機は目を白黒させていそうで、藍曦臣はその様子を見て悠長に「珍しいこともあるものだね」とか笑っていそう。

江厭離に藍忘機のことを聞かれて「俺よりほんのちょっとだけ格好いいかな」と認めている魏無羨。藍忘機が聞いたら耳が赤くなる案件……。

そして虞夫人が江厭離に「食べるってそれしか知らないの!?」と頬をつねってる場面。確かに原作の江厭離は食べさせている場面が多いので笑ってしまったし、江厭離もつねられるのだと知る。元気な虞夫人が嬉しいひとこま。そしていつも江楓眠は出てこない……ガックシ。

創作技が気になった。大慈の杵【大慈大悲杵】、百毒蛇蝎草、奪命水吹矢【夺命喷水箭】。どんなのなんだろ?

魏嬰の適当な歌はけっこう好き。花托精怪とあり、精怪は中国の怪の一種で、精霊のようだ。怪は人間以外の死物が化けたものデシタネ。

魏無羨は藍忘機を誘ったのに拒絶されたのを恨みがましい思いでいる一方で、ひとり蓮の実を食べている江澄よ……。そういうところなんだなぁ。

雲深不知処

元気なウサギと、そのウサギを捜しに来る静かなウサギにほっこり。

皮が取り除かれ整然とした西瓜が姑蘇藍氏らしい。このあたりは魔道祖師Q8話が思い浮かぶ。そしてアニメ魔道祖師前塵編6話で「藍忘機の3歩以内に近づくと凍る」と言われていたのは、藍曦臣の冗談だったのか! 冗談もお好きなのね。そして花托の蓮を食べてみたいが弟の表情で満足するって……おかんか。

この蓮蓬では、虞夫人、江澄、藍曦臣のそれぞれが描かれている。
虞夫人は西瓜を見ていて欲しくなるけど、それがいっそう怒りを招いている。
江澄はお返しなら花托を投げようと思っていたけれど、魏嬰の言葉でそうはせずに、頑なにひとりで食べている。
藍曦臣も茎つき花托をこっそり試してみたくなるけど、そうはせず弟の表情で満足している。
なんでも生の蓮の実の芯は苦いらしいが、
三人三様のホロ苦さがあるよなぁ。

雲夢

町で魏嬰が藍湛にいろいろ食べさせて「奇妙/奇怪」と言うのが面白い。

藍忘機が魏無羨に手料理を作ったのを褒められて、嬉しさをかみ殺している様子を想像すると微笑ましいのだ。

そして不細工なロバのぬいぐるみと目が虚ろな白磁の亀をGetして、しれっと蘭室に亀を置いているのもお茶目である。その白磁の亀は「不羈の職人」が作ったことにするらしい。

そしてなんといっても魏無羨が藍忘機に言う「お前って奴は、子供の頃からほしいものがあっても言わない」からの、ほしいものにはちゃっかり輪っかをかけるという行動で示す含光君。さすがです。

そして雲夢へふたりで訪れて、魏無羨の話に笑顔になる藍忘機。月の光がその笑顔にとけていく姿とは美しい。

朝暮

ラジオドラマの蒔花女の漢詩を調べていたら、朝暮らしきものを発見。

戦国時代・宋玉高唐賦(こうとうふ)』

昔者、楚襄王与宋玉遊於雲夢之台 望高唐之観。
(略)
去而辞曰:妾在巫山之陽 高丘之阻 旦為為行雨。朝朝暮暮 陽台之下。

昔、楚の襄王と宋玉が雲夢の台に遊び、高唐の楼観を遠くに眺めた。
(神女が)去る時に言った「わたしは巫山の南の丘におり、には雲となり、夕暮れには雨となり、朝も夕もそこにいる」。

楚の懐王が高唐の旅で巫山の神女と夢の中で結ばれた物語から、「朝雲暮雨」は男女のかたい契りを意味する。「巫山之夢」でも知られる物語。2021.9.2追記


山魈は、伝説の一本足の山の妖怪。中国には【宁遇豺狼,不碰山魈 】(たとえ山犬や狼に遇っても、山魈には会うな)という言い伝えがあるそうだ。妖怪のことなのかマンドリルのことなのかよくわからないが。魏無羨に限っては、この言い伝えは当てはまらない。

そして「また明日/ 明天見」と言えることの重みよ。

☆  ☆  ☆

番外編だと、断然「蓮逢」が好きで「雲夢」も良い。日本語翻訳でじっくり読むと魔道祖師らしさを感じる「奪門」や「鉄鉤」も面白かった。

そして作品を大切に思う人たちの手で送りだされた、日本語版小説を読むことができたのが実に有り難かった。

 

 

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