笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「君花海棠の紅にあらず」とアニメ「天官賜福」、漢詩で「山河令」もはじめました。

魔道祖師日本語版小説感想 第4巻

第4巻+小冊子2021年7月27日(火)に発売された。
オリンピックの4連休をはさむため、21日には都内、22日には主要都市、26日には店頭に並んだ所が多かったようではある。

私は個人的に盛上がっているドラマの最終回(君花紅)と重なり、いちどに盆と正月が来たかのようで、正月(ドラマ)を優先させて、お盆(最終巻)をゆっくり迎えた次第。

魔道祖師4巻

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小説魔道祖師4巻

帯のコピーはとても話題になっていた「誓おう、愛は傍に在ると」。歌いあげる感じの、どこか漢詩の読み下し文調なのも秀逸ですね。「我在」も感じさせてくれている。うさぎさんも移動していてほっこり。

表紙は観音廟の誓いの場面。表紙カバーを外すと、オレンジ色である。蘭陵金氏の黄色かとも思ったが、裏は剣・避塵と忘機琴のイラストだった。はじめはあまり深く考えなかったが、読み終えると「この巻は赤かピンクでも良かったのでは」と思い始め、中国での黄色本にはいわゆるアダルトな意味があることに気づく。いやいや、黄色は皇帝色でもあるし、風水では金運だし……でも裏は歳華でもなく恨生でもなく、避塵なんですよね……haha。もしや婚礼の「」と「黄」を混ぜた色なのか??勝手に言ってます。384pで厚さ2.4cmほど。

4巻特典版は、そのイラストから破廉恥boxというネーミングがなされ話題になっていた。魔道祖師の「恥知らず/不知羞」じゃないんだなぁと思ったものだ。私は本を箱に収納する習慣がないのと、3巻の絵柄ではなかった事もありアニメイト通常版である。Boxは店で見た感じではコンパクトでしっかりした作りに見えた。

第4巻の感想

4巻には仙門百家が蓮花塢に揃う所~本編最終話と、番外編の「家宴」「香炉」「朝暮」が収録されている。

この巻は物語の鍵がとかれるのだが、忘羨のラブラブパートでもあるので、もはや喜劇にも思えてくる。

そして日本語版小説では、温寧の印象が強く残った。ドラマやアニメとも異なる温寧のこの言葉にしがたい感じが、心地良いし救われた。

第十九章 丹心

《蓮花塢での告発~温寧、江澄に告げる》

郭璞の『文選 遊仙詩七首之五』に

悲来恻丹心,零泪缘缨流

われも世俗から認められぬままに在ることを悲しんで、心のおくそこまでを痛め、
涙が出て冠のひもをつたって流れる。
丹心:赤心、まごころ、とある。
斯波六郎・花房英樹「文選」1963 筑摩書房

遊仙は、心を仙境に遊ばせて世俗を超越すること。游仙诗七首之五は、俗世間を狭しとし、山林に行き、道を楽しみたい、というもの。

☆  ☆  ☆

藍思追が、魏無羨に大根扱い、含光君にウサギの群れに放り込まれたことを語り、似た者同士だなぁ。

女性ふたりの告発を受けて、いっせいに評判の勢いが変わる事に呆気にとられる。原作の方が、このあたりのたたみかける感じの勢いがあるな。

魏嬰と藍湛で焼餅を食べるペースが異なるのが、気性というかテンポの違いのようでもあり面白い。

魏嬰が木から落ちて藍湛が受けとめる場面はやっぱり好き。そしてそれを目撃していた、江澄の動揺と妬くような思い(弟弟子として)が伝わり、そこへ三者の食い違う思惑が重なり、もはやコメディである。そんな中、温寧頑張った。

第二十章 寤寐

《蓮花塢の蓮を食べる~風呂》

詩経 周南 关雎(かんしょ)』

關關雎鳩 在河之洲
窈窕淑女 君子好逑

參差荇菜 左右流之
窈窕淑女 寤寐求之
求之不得 寤寐思服
悠哉悠哉 輾轉反側
(略)
窈窕淑女 琴瑟友之
(略)

和らぎ鳴くみさごは河の州に
しとやかな淑女は、良い人の連れ合い。
流れに沿うて長く短く生い茂るあさぎは、右に左に探し求めて摘み揃える。
我にふさわしきしとやかの美き乙女は、寝てもさめても思い求める。
思いがかよわねば、寝てもさめても思い悩む。
(略)
たおやかの良き乙女は、琴を弾いて友と親しむ。
高田眞治「詩経 上」1996 集英社

この詩は、解釈が多岐にわたっている。
みさご:雌雄仲睦まじく操の堅い鳥、としてとらえる。(牧角悦子氏)
よき乙女を思いこがれて夜もすがらねがえりする悩みの歌目加田誠氏)とするものもある。

☆  ☆  ☆

三進式とは、中庭群の数を「」で数えるらしい。一進式だと「口」(線の部分が建物)、二進式は「日」、三進式だと「目」のようになる(間隔は漢字とは少し異なるのだが)。

含光君から追い出されようと、「俺の鼓動を聞いて」と言っていた復活したての魏嬰よ……。ヒーローなんだかヒロインなんだか。

女将の【他是,你是。不一样的,但都好】という表現が印象に残っており、「含光君は綺麗で、魏無羨は粋といった風情ですね。同じではないですけど、どちらも目を奪われます」と日本語訳を味わう~。

酔った藍湛の口角を引っ張って笑ったところを見ようとする場面が好き。原作小説は「藍忘機の笑顔」をなんとか引きだそうとしていた印象が強く、小説でそういう箇所を見つけるのが好きだった。

「ここに参上/ 到此一遊」は、最近読んでいた西遊記にも【斉天大聖到此一游】とあった。斉天大聖は孫悟空のこと。ちなみに孫悟空が書いたのは釈迦如来の中指(柱)である。
 小さな二人の人間の絵も描いていた事から、あの落書きをかつての魏無羨の部屋で見たのか。玄武洞から蓮花塢へ送り届けた時に、見かけていたのかな。

温寧が顔中に石炭の粉をつけて、一心不乱に落書きの痕跡を削っている場面がイイ奴すぎて愛おしい。

江澄が随便を人に抜かせている場面で「ボロい剣」って……と気になったが、やはり原文も【一把破剑】だった。俄然、随便を応援したくなった。

この章の醍醐味はなんといっても「風呂」の場面。ドラマで夷陵老祖がツライ頃、原作小説でこの酒パートを探しあてて、火花のあたりからワクワクして読んだものだ。あの時は、薄暗い灯(中国語読解力)で浮かびあがっていたものが、いまや昼間の明るさ(日本語)になってくっきりハッキリ見えるようになると、少し受ける印象も変わってくる。艶っぽいことは、ほの暗い方が想像が広がるなぁ。

この章で気になったのは、藍忘機はいつから酔いが醒めたのか。
おそらく、急に振り向いたあたりと思う。さすがにシラフでは泡ブクブクはしないかなと。藍忘機も酔いが醒めたら風呂の中とは、顔には出さなかっただろうが、ドギマギしただろうなぁ。

第二十一章 恨生

《風呂で正気に戻る~観音堂金凌を盾に》

「恨生」は、特にコレといった出典元はわからなかった。
とはいえ白居易の『琵琶行』の一節にもあり、詩の調子がこの章で語られる金光瑶や江澄の切々とした思いと重なったので記しておく。
琵琶の語りというと、平家物語の栄枯盛衰を思いだし、この白楽天の琵琶の調べと、この章の語りにどこか通じる思いがしたのだ。刀の描写があるのも〇。私だけかもしらんが。この琵琶は、淪落した歌妓が奏でている。長いのでごく一部だけ抜粋。

白居易 『琵琶行』

(略)
似訴平生不得志
(略)
別有幽愁暗恨生
此時無聲勝有聲
銀瓶乍破水漿迸
鐵騎突出刀槍鳴

あたかも日頃の、とげられぬ思いを訴えるかのように。
別に心中に秘めた悲しみと、人知れぬ恨みが生まれるが、
このときに、音のないのは、音のあるのにまさる。
再び静寂が破れると、銀の瓶がサッとわれて水が噴き出すように、
鉄の甲冑の騎馬武者がとび出して刀や槍を打ち鳴らすように、音がほとばしる。
石川忠久「白楽天100選」2001 日本放送出版協会

★  ★  ★


観音堂での、魏嬰が藍湛に「全部覚えて一つも忘れないから」にはウルッとした。

藍忘機の笑顔ー晴天の日差しが雪を照らして反射したような淡い笑み、ほのかにまぶしい感じが伝わってくるようだ。

江澄の傘の場面はドラマと同じくカッコイィ。そして切々を思いを訴える江澄が切ない……。

魏嬰の前世の折り合いをつけようとしている場面は、胸迫る思いがする……。

金光瑶が魏無羨に言う、蘇涉は関係なく恨みを買いやすいと言う残酷さよ。

過去の遊郭の場面は、なんとも言い難いものがある。
そして金光瑶が温宗主を殺したのも金光善の命令だったのか。聶明玦に問い詰められても金光善は素知らぬフリしていたが、実は繋がっていたのか、そしてドラマ以上に、金光善の面倒な理由が容赦なかった。

江澄と金凌をかばう温寧の姿……どうやったら穴がふさげるんだろう。

第二十二章 晦蔵 / 藏鋒

《大哥あらわる~江澄見送る》

晦蔵は自分の才能を目立たぬように隠すこと。
蔵鋒は用筆法の一。「黒幕」にて解説。

☆  ☆  ☆

藍曦臣に刺された後の金光瑶のべらんめぇ口調に、悪友な薛洋を思い出していた。金光瑶の話し方は、うやうやしく残酷なことを告げることが多いので、結構大事なポイントだな。

そして、金光瑶の「死んでくれますか?」はなかったのか、と改めて知る。うーむ、そうなのか……。

仙子が姑蘇藍氏の抹額を真似るのがカワイイのだ。賢いし演技派~。

 

第二十三章 忘羨

《藍思追の再会~忘羨》

 

藍思追の幼い事を魏無羨に言いつのる場面に泣ける。わかっていても泣けた。

浸猪籠は、なぜに「豚?」とも思ったが、番外編・家宴の「豚と白菜」由来なのね。長老が行う私刑らしい。ちなみにこれで亡くなると、人間には転生できないのだとか。

原作小説を読んでいた時は、ドラマの夷陵老祖と含光君の頃だった事もあり、この場面はなんだか知らない強烈な「カタルシス」があったものだが、今読むと日本語という事もあってか「あっけらかんとしているなぁ」と思う。だいぶ、忘羨に対してくすぶる思いが昇華されてしまったからかなぁ。


そして陰虎符のことを気にしていた様子の少年が気になった。いつの時代もそのような思いを抱く人はなくならないのか。

「早完了」の日本語版、英語版、タイ語

日本語訳で藍忘機が「……とっくに三拝した!」と発言したことから、波紋が広がった【……早完了】。

私は原作小説を読んだ時、直前の魏嬰の言葉が「終わったな」だったこともあり、藍湛の言葉もこれに対しての「とっくに終わっている」と思っていた。

そしてしばらくして作者が微博2018.3.17で「忘羨の三拝は二回目の【】前だ /【】は本土で削除された部分と思われる。この場面のこと。一回目は風呂桶壊し。」と言っていたというのをあとで知り、「ふたりは割と律儀に関係を深めるからそうだろうな」と軽く考えて終わった記憶がある。

いろいろと解釈があり、翻訳でも分かれているようで、英語訳では

「Lan Zhan,You're doomed.(略)If your uncle knew he'd drown you in a pig cage"(略)"...I have long since been so."」

だった。

ならば手持ちのタイ版ではどうなのか? タイ語はさっぱり分からないのでおおよその検討をつけて、スマホで該当とおぼしきページの写真を取り、せっせと翻訳にかける。第5巻157ページの二行目にそれらしきを捕獲! 直前には「浸猪籠」の注釈4がついている。

タイ語版でこの台詞は

「จบเห่ไปนานแล้ว!」

翻訳をかけるとのんきにも「お久しぶりです」になってしまうので、コレは違うだろうと解体してみる。
すると
จบเห่:I'm doomed,万事終わり、ไปนานแล้ว:ずっと前。となり、
後半をもう少し詳しく見ると、
ไป:行く、~してしまった、นาน:長い間,久しい、แล้ว:もう~した,すでに。となる。
これらをつなげると「もう長い間終わっている」になるのか。タイ語のニュアンスは分からないので明言はできないが参考までに。

陳情令のエンディングに日本版があったように、小説魔道祖師・忘羨の日本版というサプライズなのかな?


物語のさいごは、魏嬰の【藍湛,看我,快看我!】。
そんなふたりの姿が、これからもずっと続いていくのだろう。

 

番外編については次回に。

 

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▼いよいよ英語版が発売されるそうですよ。ロシア版の挿絵という情報も。

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外部サイト

 ▼英語版ペーパーバック

▼日本版ラジオドラマ魔道祖師特大ポスター&A4ファイル付、ラジオドラマ「魔道祖師」津田,森川,石田インタビュー、「天官賜福」神谷浩史インタビュー

▼販売終了していますが、BOXイラストの参考までに

www.animate-onlineshop.jp