第二期が始まったラジオドラマ魔道祖師で、魏無羨が蒔花女(じかじょ)見たさに、軽妙な漢詩を繰りだしていると聞きこみ、出典の漢詩を調べてみた。
蒔花女は、魔道祖師Q版でも面白かったが、ラジオドラマ版も工夫が凝らされている。
★良辰~良辰美景奈何天
京劇『牡丹亭 遊園』『還魂記 第十幕 驚夢』侍女春香の一節。牡丹亭は娘が生き還る物語。魏無羨が「美わしい時節と景色」を挙げていく。
・江楓~江楓漁火対愁眠
張継『楓橋夜泊』第二句。江楓眠の漢詩でおなじみ。秋の長江の美しさを詠う。
・接天~接天莲叶无穷碧
南宋・楊万里『暁出浄慈寺送林子方』。6月の西湖の蓮の美しさを詠っている。
・ただ鸳鸯~只羡鸳鸯不羡仙
初唐四傑のひとり・盧照鄰『長安古意』の俗語で「鴛鴦のように終生仲睦まじくあれば、仙人にならずともよい」。『長安古意』の中に「借問吹簫向紫煙」という句もあり、次の杜牧『清明』の句に掛けているのか?
天tiān 眠mián 仙xiānの韻を踏んでいる。
そして魏無羨は蒔花女にしばかれる。
★借問~借問酒家何処有
晩唐・杜牧『清明』で清明節を詠っている。清明節は祖先を祀る日。「酒屋はどこかとたずねれば」。姑蘇~につづく。
・姑蘇~姑蘇城外寒山寺
張継『楓橋夜泊』第三句。「姑蘇の寒山寺」にちょっと笑ってしまった。これを聞いたら、藍啓仁の血圧まで上がりそうだ。
・垂死~垂死病中驚坐起
唐・元稹『聞楽天授江州司馬』。「半死の病人も驚き、起き上がって坐ると」。自身も流謫(るたく)され病気も加わって沈んでいるところへ、白居易が朝廷から放遂されたと聞いて驚き悲しんだことを詠った。
・淡笑~淡笑風生又一年
宋・辛棄疾『念奴嬌・贈夏宋玉』か。
またも魏無羨は蒔花女に怒られている様子。
★去年~去年今日此門中
『人面桃花』の崔護『題都城南莊』第一句。「去年の今日にこの門で」、この日は清明節であり、杜牧『清明』と同じ時節。人面桃花も娘が生き還るお話。
・死去~死去元知万事空
南宋・陸游『示児』、「死んでしまえばすべて空しいと重々承知していたが」。陸游の詩集『剣南詩稿』の最後の一首で、死の直前。世を去るに臨んて゛心残りは、金に領土を奪われた状態が続いていること、とある。
・人生~人生自古誰無死
宋・文天祥『過零丁洋』、「人の一生、古来、誰にも死は訪れる」。状元で科挙に合格したことにより苦難に出会うが、忠誠心(丹心)と歴史に名を遺すことを詠っている。松枝茂夫『中国名詩選 下』1986 岩波書店
・桃花~桃花依旧笑春風
崔護『題都城南莊』第四句、「年々歳々花相似たり」の意。
懲りずに打たれる魏無羨、ついに拝顔。
★親から~親曽見、全勝宋玉、想像賦高唐
宋・蘇軾『満庭芳・香叆雕盘』。この句は中国サイトの翻訳に【我亲自看见了,比《高唐赋》里还要美的人】とあったので、「この目で見た(蒔花女)は、(宋玉の)高唐賦の巫山仙女よりずっと美しい人だった」という意味か。ここでも宋玉が出てきている。
魏無羨の洒脱さがうかがえるようだ。
①良辰~の漢詩を魏無羨、②借問~の漢詩は藍忘機が主語として考えると、再会前か後かで切なさか今の幸せなのか、感じられるものが変わってくるなあとも思う。2021.9.6追記
……などと真剣に考えていたが、②第4句の淡笑~を追っていくと、【垂死病中驚坐起 淡笑風生又一年】はネットスラングだった……。ネット用語は難易度が高杉くんである。真面目に考えこんでいたのを、魏無羨の笑い声が聞こえてくるようだ……。2021.9.7追記
🌸墨香銅臭原作「#魔道祖師日本語版ラジオドラマ 」
— mimi fm@「魔道祖師」日本語版ラジオドラマ 第二期8月6日配信開始/一期前編CD好評発売中! (@mimifm11) 2021年9月1日
🌸第二期 小劇場「蒔花女」
MiMi URL:https://t.co/25mDzaHVGz
CAST
魏無羨:#鈴木達央
藍忘機:#日野聡
藍思追:#小林裕介
藍景儀:#下野紘
蒔花女:#平出まどか 他#魔道祖師 pic.twitter.com/LWmJSb1MvE
▼Q版蒔花女と漢詩
▼陳情令19話&43話の台詞について
▼『楓橋夜泊』について
▼『朝暮』の漢詩について
▼原作の蒔花女
▼『人面桃花』がコチラでも出ています。
▼過零丁洋
外部サイト
▼日本版ラジオドラマ魔道祖師A4ファイル付、ラジオドラマ「魔道祖師」津田,森川,石田インタビュー、「天官賜福」神谷浩史インタビュー
▼ラジドラ魔道祖師クリアファイル付き、魔道祖師ラジドラインタビュー
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