笛の音と琴の調べ

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蓮花塢扁額/書経 惟懐永固,明徳惟聲,詩経 穆如清風⑲陳情令と中国文学

陳情令・蓮花塢と書経

陳情令24話でみられる蓮花塢の扁額の文字は、『書経』に関したものである。

書経』は五経詩経書経礼記易経・春秋)のひとつで、中国では『尚書』で通っているのだが、日本では『書経』の方がメジャーである。中国古代の歴史書で、伝説の堯舜から周王朝の君臣の心得などが記されている。

原作小説には扁額の文字は記されていないので、陳情令のドラマオリジナルである。陳情令につられて、ついに書経にまで触れることと相成った。

1.惟懐永固

第24話、江澄は蓮花塢で江氏家主を継承、そこに映る扁額は「惟懐永固」。江澄もこの場面で「この家訓を守り続け」と宣言している。

書経 商書 太甲上』
王惟庸罔念闻。伊尹乃言曰:“先王昧爽丕显,坐以待旦。旁求俊彦,启迪后人,无越厥命以自覆。慎乃俭德,惟怀永图。若虞机张,往省括于度则释。钦厥止,率乃祖攸行,惟朕以怿,万世有辞。”

先王は、夜明けから身を清めて心を静め、その徳を明らかにして静座して朝が来るのを待ち、政治をとり行われました。また、広く優れた人材を求め、後世の人々に目を見開かせ、正しい徳に導こうとしたのであります。(略)あなたに課せられた倹約の徳を守り、王朝に与えられた永遠の企図をおはかりください
山口謡司「書経」2019 角川書店

(殷王朝)の初代 湯王の跡を継いだ第4代の王(太甲)は、摂政である伊尹の言葉に従わず、父・太丁の喪に服する礼すら欠いていた。そこで伊尹が太甲に訓戒を説いたもの。

江楓眠の跡を継ぎ、雲夢江氏宗主となった江澄への責任と期待が感じられる。

この扁額は蓮花塢の中央の建物である試剣堂に対して向かって左の建物で、かつて魏嬰と江澄が双傑の話をしていたのもこちらの建物側だった。ちょっと連想して遠い目になる思いがしてくる。

2.明徳惟聲

第11話の江氏一同な食事の場面で映る扁額、第24話で祠堂の廊下で魏嬰と江澄が金子軒の噂話をしている場面で映る扁額「明徳惟聲」。これも『書経』にあるのだ。扁額文字は太字、関連のある箇所は下線を記した。

書経 君陳』
王若曰:“君陈,①惟尔令德孝恭。惟孝友于兄弟,克施有政。命汝尹茲东郊,敬哉!昔周公师保万民,民怀其德。往慎乃司,茲率厥常,懋昭周公之训,惟民其乂。我闻曰:②‘至治馨香,感于神明。黍稷非馨,明德惟馨。’尚式时周公之猷训,③惟日孜孜,无敢逸豫。凡人未见圣,若不克见;既见圣,亦不克由圣,尔其戒哉!尔惟风,下民惟草。④图厥政,莫或不艰,有废有兴,出入自尔师虞,庶言同则绎。尔有嘉谋嘉猷,则入告尔后于內,尔乃顺之于外,曰:‘斯谋斯猷,惟我后之德。’呜呼!臣人咸若时,惟良显哉!”

①汝は立派な徳を身につけ、親には孝、兄には恭である。親に孝であれば兄弟に友であり、それを政治にまで推し及ぼしていくことができるのである。

②最上の政治はよい香りを発して、神をも感じさせる。しかし、それは神に供えるもちきび・うるちきびが香りがよいのではなくて、神を祭る人の明らかな徳のために香りがよいのであると

③毎日一生懸命勉め励んで、決してなまけて遊んでいてはならない。

④政治上の計画をめぐらすに当たっては、困難が伴うことを絶えず覚悟してやらなければいけない。
小野沢精一書経 下」1985 明治書院

これは周公の没後、第2代成王が君陳に東方の統治を命令した策命の文。聲は香りの意味である。

雲夢江氏家訓「明知不可而為之」の出典は『論語 憲問』40であり、④の莫或不艰は、その『論語 憲問』の中の21「為之也難/これをなすのは難しい」、41「末之難矣」とも語釈にある。
雲夢氏家訓にちなんで、孔子ゆかりの『尚書』から取ったのだろうか。

3.穆如清風

第18話で幼い江澄が犬の事で怒って、魏嬰を追い出している部屋は、試剣堂に向かって右側で、一般的に嫡男の居住場所にあたる。この扁額「穆如清風」は『詩経 大雅 烝民』にみられる。

詩経 大雅 烝民 八』
四牡骙骙,八鸾喈喈。
山甫徂齐,式遄其归。
吉甫作诵,穆如清风
仲山甫永怀,以慰其心。
四頭の馬 走りつづけ、鈴の音 鳴り響く
仲山甫 斉にゆく、早く帰りたまえとぞ
吉甫 よみ歌を作る、ゆかしくも涼風のよう
仲山甫 もの思はす、さればその心慰めむ
白川静詩経雅頌2」1998 平凡社

周公の名臣 仲山甫を讃える歌。「奥ゆかしさは、清風のそよぐようだ」という意味。

蓮花塢つながりで記しておくと、江厭離がいた奥にある東屋は「風臨軒」とある。

おまけ

この『書経』は日本の年号である「明治」や「昭和」「平成」などの出典ともなっている。

明治:『書経 周易』聖人南面而聴天下、向正確には『易経』出典らしいです。
昭和・明和:『書経 堯典』百姓明、協万邦。
平成:『書経 大禹謨』地史記』からも出典あり。
『大禹謨』は、座学で魏無羨が「洪水の治水で、流すは上策/ 大禹治水亦知,堵爲下策,疏爲上策。」と言った禹である。

 

 

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