中国ドラマ『孤城閉〜仁宗、その愛と大義〜』が、2023年5月17日(木)からBS11にて各話月~金放送で始まった。BS版は全69話。オリジナル版タイトルは《清平乐》。
時代は宋代仁宗で、『夢華録』でも見かけた皇后劉娥に興味を持ち見始めた。淡々とした押え気味な色合いの中に、宮廷ドラマの割にはドロドロし過ぎない人間模様が興味深くて見続けることに。
料理をメモする位のハズが引用漢詩も気になり、覚書として記しています。
1話料理メモ
七宝擂茶と酥餅(スーピン)、新鮮な果物。砂糖漬けのスモモと雪花糕、梅肉入りの千層酥。七宝擂茶は紅豆,もち米,刻み生姜,白胡麻,ピーナッツ,緑豆,緑茶を炒めて砕き、湯を加えたお茶。
夕餉は冷菜(肘花,熏鱼是冷盘)、羊肉(炙羊肉)、魚の羹(鱼蓉粟米羹)、吐蕃の豚肉(吐蕃猪肉)。
2話漢詩メモ
三春渾:三春の輝き。寸草の心三春の輝きに報い得ん。
孟郊(唐代)『遊子吟』
慈母手中线,游子身上衣。
临行密密缝,意恐迟迟归。
谁言寸草心,报得三春晖。
慈母が手にもつ糸、それが旅人の身につける衣となる。
出立に際して一針一針縫う。危惧するのは子が遅々として帰ってこないこと。
誰が言おう、わずか一寸の草の思いが、春三月の日差しに酬いられると。
川合康三「中国名詩選 中」2015 岩波書店
豚の干し肉。
皇太后が「恐れられたくば力を、敬われたくば徳を身につければ良い」と皇后を諭すのがなんだか納得。
3話漢詩メモ
妟殊が詠じる。
小楼の重き簾を飛びゆく燕。夕暮れに庭で散りゆく紅の花弁。独り欄干にもたれ肌寒さを感じる。軽やかな風は緑の幕を生み、まばらな雨が蓮の葉を揺らす。酔い覚めれば人は散り憂いはただ増すばかり。まさに本人の詞。
妟殊(宋代)《浣溪沙·小阁重帘有燕过》
小阁重帘有燕过。晚花红片落庭莎。曲阑干影入凉波。
一霎好风生翠幕,几回疏雨滴圆荷。酒醒人散得愁多。
周公いわく君子は無逸であるべし。まず農耕の困難を知れば小人の依を知る
桂花糖、太祖は永慶公主に言った。富貴に生まれたなら慎み深く生きよ。悪行の片棒を担ぐな。羽毛を使うとカワセミがいなくなる。
《宋史·太祖纪三》
魏国长公主襦饰翠羽,戒勿復用,又教之曰:‘汝生长富贵,当念惜福。
4話料理メモ
王曽は陛下に『尚書』の皋陶謨(こうようぼ)を勧めている。皋陶は禹と論じた際、君主を民の模範に据え、言行を慎むことを何よりも重視した。次に九徳を説き、その筆頭に寛容さを挙げている。王曽は「仁」と書き記し、己の強さを恐れるがゆえに、聖君は過ちを犯さぬよう慎重になるのだと説く。程琳は『武后臨朝図』を太后に献上していた。
皇太后は『尚書』洪範編によると「君主の過ちは禍を呼ぶ」と引用。
清風楼で、梁元生が羊羔酒(ようこう)と棗の蜂蜜漬け、胡桃を勧めている。国から麹を買って酒を造れるようになり酒楼が活気づいている。羊羔酒は羊肉と餅米と麹で造ったお酒。
韓琦と清風楼の張麗華との一件は、芝居にもなっている。
あ、宋代の推しのアクスタ(木像)だ。
若き陛下は妟殊に会っていた時、「人生に困難は付き物で、鋭さはそれを増す。才をひけらかすな」と言っている。
《解厄鉴》
藏锋卷一
厄者,人之本也。锋者,厄之厉也。厄欲减,才莫显。
5話漢詩メモ
陛下を遠目に見ながら「之に就けば日の如し…貴けれども舒らず」と呟く。
『史記 五帝本紀』
帝尧者,放勋。其仁如天,其知如神。就之如日,望之如云。富而不骄,贵而不舒。黄收纯衣,彤车乘白马。能明驯德,以亲九族。九族既睦,便章百姓。百姓昭明,合和万国。
天聖5年(1027年)、欧陽修が「地図の管理の出典は『周礼 司空』、鄭康成の脚注によると漢の司空は専門職でしたが、周の司空は地図の管理だけではない。周と漢の司空のどちらを論ずれば?」と尋ねる。
欧陽修の「君は美しい顔で柔らかい頬を赤らめる。そのしなやかな裸の腰」をお気に召さない皇太后。
欧陽修(宋代)《醉蓬莱·见羞容敛翠》
见羞容敛翠,嫩脸匀红,素腰袅娜。
明道元年(1032年)。元旦の大朝会。虎の置物もある。
李氏は死去に際して宸妃に昇格。李順容は若くして先帝に仕えた。非常に温和で人柄も申し分ない。己の使命を守り謙遜の徳を守った。その行いを常に慎んだのだ。
大中祥符8年(1015年)の大みそか。先帝は六郎を花火に見に水亭へ連れていった。李氏とその娘がそこにいた。
(つづく)
青年時代の陛下 趙禎と韓琦が清々しかったので、もうちょっと見ていたかったかも。
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