成化十四年
成化十四年というタイトル通り、明の成化十四年(1478年)で、皇帝は憲宗成化帝の時代。BS11にて2022年3月1日(火)より月~木放送されている。
観ていると料理と背景の歴史ネタと声優が気になり、調べついでにまとめてみた。全48話。
キャストと声優その1
・唐泛(とうはん):官鴻(グアンホン)『流星花園』花澤類 / 苏尚卿『山河令』曹尉寧、『陳情令』金光瑶、『魔道祖師』金凌、『長歌行』司徒朗朗
・隋州(ずいしゅう):傅孟柏(フー・モンボー)『最后的诗句』施人杰 / 本人
・汪植(おうしょく):劉耀元(リウ・ヤオユエン)『了不起的裴千户』程宝 / 孙郎朗『有翡』李晟
・裴淮(はいかい): 毛毅(マオ・イー)『三十而已』姜辰 / 本人
・賈逵(かき):劉承俊(ユ・スンジュン)『岳飛伝』金兀朮 / 齐斯伽
・ドゥルラ(朵儿拉):鹤男 『了不起的老爸』汤小希/ 徐佳琦『山河令』顧湘、『大唐流流』皇太子妃孙灵淑
・ウユンプラガ(乌云布拉格):张艺泷『道士下山』孫風英/ 本人
・冬児(とうじ):黄杨钿甜 『琅琊榜 弐』林奚(子役),『狼殿下』红儿/ 何冠男
1話
唐泛が梅ダレを付けていたのは【烤梅肉】かな。梅花肉は肋骨の間 背中の肉で、焼く前に叩くことで筋が切れて味が染みこむ。梅花肉は胛心肉ともあるので肩ロースか。
3話
梨の汁物は【梨汤】。梨と氷砂糖で作るらしく、甘いのね。肺熱や咳や痰に良いらしい。
4話
日本語を話しているし、忍者?と思っていたら倭寇が出てきた! 侍なのね……。
6話
皇太子が読んでいた『通鑑節要 第三巻 後秦記』は『資治通鑑』の抄本。
唐泛が賜わった状元糖は牛軋糖(ヌガー)の創始。明朝の状元の商辂が、夢で文昌殿の前で跪き、筆墨紙硯にピーナッツと砂糖と牛を見た。後日その夢を解いてもらい、麦芽糖とピーナッツを煮詰め牛に見立てて飴を作る。そして郷試、会試、殿試で首席の三元となる。やがて受験生に縁起の良い飴となったとか。
緑豆汁は【绿豆浆】。緑豆を水で煮て白糖を加えたもの。小豆で作る冷やしぜんざいのようなものか。清熱解暑に解毒と暑さ対策になるようだ。
ひし茶は菱の実のお茶でいいのかな?
名臣狄仁傑(てきじんけつ)は、武則天に信頼された宰相。
ふたりのお風呂場面もあった。敵にまわるのかと思った万貴妃の宦官 汪植が、意外と唐泛や随州と手を組む辺りは安心感がある。とはいえ、一番、やり口は残忍なんだけど。
7話
唐泛が冬児に教えていたのは『百家姓』。
岳帥緱亢、況後有琴。
梁丘左丘、東門西門。
商牟佘佴、伯賞南宮。
墨哈譙笪、年愛陽佟。
第五言福、百家姓終。
と言い終えていた。
姓が韻を踏んで列挙されており、漢字を覚えるためのものとか。
江西の黄元米果、江西省の伝統漢族料理で、もち米やうるち米を灰水に浸し黄梔子を加え加工したお餅。明代には地方の貢品であった。溪黄という灌木を灰にした黄元柴灰を用いるのが特徴である。灰水に浸し瓶で3年位保存でき、炒めたり揚げたりして用いる。
霊芝を黄耆(おうぎ)に。唐泛が髪を下ろしていると乙女感が増すわね。医師裴淮のプロ根性たるや……。
成化帝の生母である周皇太后が保護する皇太子。万貴妃に殺された紀淑妃は、史実のようである。
謎解き時は説明映像が入り面白いが、今までの謎が解かれると、元許婚や皇太子を思う太監だったりと、後味はあまり良くない……。
8話
三衛は永楽帝の頃より明の支配下にあり、朶顔衛(ウリヤンハイ)・福余衛(オジエト)・泰寧衛(オンリウト)の三衛を総称して、ウリヤンハイ三衛と呼ぶ。頻繁に遼東を侵すも、明はオイラトとの戦に疲弊、三衛を野放しに。成化3年、明と朝鮮が女真族を討ち各部族はほぼ滅亡。近年軍馬確保のため馬市が開かれ、生き残った女真族が潤っている。ウリヤンハイ三衛の使者、建州女真の使者、広寧の官吏が迎えに来る。広寧守備は城門で待つ。南宋がフビライに滅ぼされたのは、馬の産地である燕雲十六州を失った。:馬市(ばし)は、指定された場所で一定の期間をかぎって開かれる中国とモンゴルの交易場。
汪植の干支は午。玉にニッコリは、史実の汪直が宝石好きの万貴妃のために賄賂を取ったが由来か。成化14年は1478年なので、干支が午年だと1450年生まれかと思ったら、驚異の17歳らしく1462年!?
随州が送った暗号は「闞暾 夜墟 静邸(かんとん やきょ せいてい)」の文字。半切を用い、1組の漢字を声母と韻母に分け、組み合わせる。困 kùn+于 yú+吉 jí=「吉安にて困窮」。
音韻学では、闞暾kan tunならば、k,tが声母、an,unが韻母となり、kunは困。ye xu→yuで于 、jing di→ji で吉となるようだ。声調もないし、どうやって膨大な漢字から言い当てるのか?とも思うが、そこは唐泛だもんね。
唐泛たちは北京から舟で京杭運河を南下し、安慶まで2日、長江に入れば1日で鄱陽湖(はよう)に着く。蛟竜口(こうりゅうこう)から贛江(かんこう)に入れば吉安まで5~6日:京杭運河は北京と杭州を結ぶ大運河。そこから南西の方角にゆるゆるとおりていくイメージ。地図で見ると確かに長江や贛江が流れている。
偽汪植あらわる。吉安は小さな罪でも等しく罰せられる町と化していた。牢にいたのはあの薬の少年か!
9話
吉安で唐泛が食べていた峡江米粉。吉安の混ぜ麺で有名らしい。煮てもふやけず、炒めても切れない:江西省吉安市峡江県の伝統的小吃。後世の嘉靖帝が若かりし頃にこの麺を食べて気に入り、のちに「忠貞米粉」と名付けた。米粉だからビーフン系か、ベトナムではフォーとなり、タイではバッタイとなる。
汪植が女真族の指揮使に言う~。李満住(りまんじゅう)は女真三衛の中で最強で、明や朝鮮に恐れられていた。息子の古納哈(グナハ)は尊大で、成化3年に建州左衛の長 董山(とうざん)と入貢した際に都で暴れ官位を要求、董山と古納哈は帰路の広寧で強奪を行い、守備軍により董山は死に、古納哈は逃亡。陛下は激怒し女真の討伐を命じ、魚有沼(ぎょうゆうしょう)率いる朝鮮軍と明の両軍で建州を平定し、李満住父子は戦死し、女真は族滅:李満住は満州建州女真の酋長。魚有沼は朝鮮王朝初期の武臣。
黄景隆は「大仁は仁ならず」「上善は水の若し」情を捨ててこそ民を救えると説く。
『荘子 斉物論』
夫大道不称,大辩不言,大仁不仁,大廉不谦,大勇不忮。道昭而不道,言辩而不及,仁常而不成,廉清而不信,勇忮而不成。
老子『道徳教』第八章
上善若水,水善利万物而不争。
ようやく唐泛とドゥルラたちとのやり取りに展開がみられてきた。ウユンプラガの通訳もイイ味だ。
10話
隋州をかばう少年、偉いぞ。汪植に下馬を支えてもらう唐泛。今まで汪植が手伝ったのは陛下1人という恐れ多さ。人知れず賈逵を遣わす汪植、仕事も早く有能ね。
ドゥルラの破れた外套を繕ってあげる唐泛。料理はポンコツだけれど裁縫はできるのね。あの箸は両親の形見。言葉は通じないけれど、気持ちが通じた良い場面。
馬の下手人は朶顔衛の指揮使の弟で博打の借金の為だった。陳将軍は「督公の悪評は事実ではなかった」と見直した様子。隋州が心配だけれど羊も美味しい唐泛。
汪植は、広寧から江蘇の太倉を南下、劉家港から長江に入れば鄱陽湖に着く。蛟竜口から贛江に入れば吉安は、以前にも言っていた。
11話
早速船酔いしている唐泛。汪植、強がる姿が面白いってSね。オイラト人もやっぱり船酔いさん。
冬児の神童ぶりは碁にもあらわる。『三字経』を唐泛は3日で覚えたが、冬児は3時間。三字経は漢字三文字で一句の学習書。そして冬児がまさかの二面打ち!塔矢アキラか!
あれ?この御者は……すり替わったか! 布政使、按察使、指揮使が審問に呼ばれる。布政使は地方省の行政をつかさどる長官。按察使は司法監察を、指揮使は軍政をつかさどり、共に一省の政務を担う。見事、汪植がお裁き~~~。
船の上で唐泛とドゥルラがそれぞれの言葉を教え合う場面も好き。星【星星 xīng xing】はオデゥод、海【大海 dàhǎi】はタンガスтэнгэс、船【chuán】はオンゴチонгоц、箸【筷子 kuàizi】。モンゴル語でタンガスは小さい海の意味かな?船という固有名詞はないとか。
そして唐泛とドゥルラの声優は、『山河令』の曹尉寧と顧湘の声優なのである!声が転生して船の上で言葉を教え合うとは!!
……とこれが書きたくて、10話のところを11話までまとめることとあいなりました。
初回の感想
テンポよく進み、アクションもジャッキー・チェンがプロデューサー&アクション指導とあって華やかで、バディものとして初回から面白かった。
そう、最初はバディものと思っていたのだが、段々感じるこのブロマンスを通り越した原作BL感。もちろんドラマはあくまでブロマンス。
それは壁ドンあたりから感じられたが、唐泛の住む所がなくなり隋州の所へ引っ越す辺りでかなりBL度が高まった。というか、隋州が周皇太后縁な御曹司設定という所で益々濃くなる。
そして唐泛は料理が壊滅的で、隋州は料理の腕が素晴らしい所で、スパダリ認定となり私的には決定である。
ヤギを抱える唐泛も可愛いんですけどね。
そんなふたりに、汪植という切れ者宦官が加わるのが、良いパワーバランスとなっている。ドゥルラや冬児など女性陣も強くて賢いのもよき。
スタッフ
・プロデューサー: ジャッキー・チェン
・監督: 郭爽、楊歓
・脚本:邵天、瞰景、程曦、孙文、魏军
外部サイト