笛の音と琴の調べ

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漢詩と光の列 山河令25話感想/晁補之 憶少年,古詩十九首

25話の漢詩篇はいつもに増して長いので、単独にしました。

25話 悪夢

1.温客行が言う

霜降 越せば冬 蠟八 越せば新年
過了霜降便是冬 過了腊八便是年

蠟八旧暦の12月8日。五穀豊穣を祝い、春節を迎える準備をする。中国北方には【小孩小孩你别馋,过了腊八就是年】という言葉もあるらしい。仏教では釈迦が悟りを開いた成道の日でもある。

2.ナッツを勧める温客行に、周子舒が言う

その口で商いをすれば 大金持ちになれる
就你這口才 引車売漿早就富甲一方了

史記 魏公子列伝

公子引车入市,侯生下见其客朱亥。

公子は車を町中に乗り入れた。侯生は車を下り友人の朱亥に会い(公子を横目で見た)

成語。【引车卖浆】大きな車をひいて小さな飲み物を売る、平民百姓を指す。魏公子については「魏無羨の由来」でも解説。

 

3.周子舒が杯をかかげて言う

天涯孤独な 根なしの行客
我本天涯孤鴻 無根行客

蘇軾『卜算子 黄州定慧院寓居作

缺月挂疏桐,漏断人初静。
谁见幽人独往来,缥缈孤鸿影。
惊起却回头,有恨无人省。
拣尽寒枝不肯栖,寂寞沙洲冷。

かたわれ月は葉のまばらな桐のこずえ、人しずまり漏刻の音もやんだ。
ときどきはただ独りでさまよう人があり、はるかな空にはつれにはぐれた雁の影。
ふと驚いてふりむいてみて、この恨みわかってくれるひとはいない。
どこみても寒い枝鳥さえとまらず、楓ちりはて沙州の風は肌さむい。
倉石武四郎「宋代詞集」1970 平凡社

 

晁補之『憶少年 別暦下

无穷官柳,无情画舸,无根行客
南山尚相送,只高城人隔。

官道の柳は尽きず、舟の画は無情であり、旅人は根無し草である。
南山は依然として付き従って送り、ただ望楼は人を隔てるだけだ。

晁補之(ちょうほし)。

古詩十九首 其三

青青陵上柏 磊磊涧中石
人生天地间 忽如远行客
斗酒相娱乐 聊厚不为薄
(略)
青々とした丘の上の柏の木、ごろごろとした谷川石。
自然は常にかわらないのに、この世における人生のはかなさは、遠出の旅人が、たちまち通り過ぎるようなものである。
せめては一斗の酒を酌みかわして共に楽しめば結構これで十分、不足などとは思うまい。
内田泉之助・網祐次「文選 詩篇下」1964 明治書院

人生は無常だが、これを悲しむよりは、むしろ命に安んじて行楽しようとの意を述べている。

 

4.温客行が周子舒の名前の由来を言う

子の手を執りて 雲の舒ぶるを眺める
執子之手 坐看雲舒

詩経 邶風 撃鼓

执子之手 与子偕老

14話-7で解説。魔道祖師Q10話にも出てきた。

王維『終南別業

中岁颇好道 晚家南山陲
兴来每独往 胜事空自知
行到水穷处 坐看云起时
偶然值林叟 谈笑无还期

行き到る 水が湧きだすところに
座して見る 雲がわきたつときを

 

陳継儒『小窓幽記

宠辱不惊,看庭前花开花落;

去留无意,望天上云卷云舒

寵愛され貶められることは驚くことでもなく、庭の花が咲き落ちるのを見るがごとし。官職の進退は雲が巻き広がるがごとく変わりやすく、特に意に留めることでもない。

『小窓幽記』は明代の代表的な作品で、格言が収録されている。よく見れば、花は周子舒が描いていた梅の花を思い出すし、官職は天窗に思えなくもない。

 

5.周子舒が温客行に言う

客行は楽しといえども 早く旋帰にしかず
客行雖雲楽 不如早旋帰

古詩十九首 其十九

明月何皎皎 照我罗床帏
忧愁不能寐 揽衣起徘徊
客行虽云乐 不如早旋归
出户独彷徨 愁思当告谁!
引领还入房 泪下沾裳衣

なんと月の光の明るいことよ。私のベッドのうすぎぬのカアテンを照らしている。
私は旅に出ている夫の身を思い、心配で寝られぬままに、衣のすそをとってたち上がり、あたりをぶらぶら歩いて見る。
旅行は楽しいといっても、早く帰宅する喜びには及ばぬでしょう
などと思いながら、戸口を出て独りさまよいあるく。この心のうれいは誰に告げようもない。
首をさしのべて空しく遥かの方を望み、やがて帰ってわが部屋に入れば、涙は流れて衣裳をぬらすばかりである。
内田泉之助・網祐次「文選 詩篇下」1964 明治書院

思婦の詩で、月夜夫を憶うて感傷にひたる情をのべたものとある。

 

6.曹蔚寧が黄鶴たちに言う

今からでも遅くない 改心せよ
亡羊補牢 猶未為晩

戦国策 楚策四 二〇三

庄辛对曰:“臣闻鄙语曰:‘见兔而顾犬,未为晚也;亡羊而补牢,未为迟也’。臣闻昔汤、武以百里昌,桀、纣以天下亡。今楚国虽小,绝长续短,犹以数千里,岂特百里哉?

庄辛がお答えして言うには、「臣の聞くところでは、世間の諺に,『兎を見つけてから犬を捜しても、まだ遅くはない、羊を取り逃がしてから囲いを修理しても、まだ遅くはない』と申します。臣は、『昔、殷の湯王・周の武王はたった百里四方の土地から起こって栄え、夏の桀王・殷の桀紂王は天下に君臨しながら亡んだ』と聞いております。いま、楚の国は小さいと申しながら、長いところを絶ち切って短いところを継ぎ足せば、まだまだ数千里四方となります。僅か百里四方の小国などとは、比較になりません。
林秀一「戦国策 中」1981 明治書院

荘辛が、襄王に、寵臣をはべらすばかりで国政を顧みず楚も危ういと進言したが、聞き入られなかった。すると秦に攻められ、危うくなった襄王が荘辛を召還して意見を求めた時の言葉である。これらの忠告を聞き入れ、荘辛に位を授け、秦から土地を取り返した。

 

7.緑柳翁が言う

夫婦は同じ林の鳥 災いあらばそれぞれで飛び立つ
夫妻本是同林鳥 大難臨頭各自飛

無名氏『馮玉蘭 第二折

嗨,正是夫妻本是同林鳥,大難來時各自飛。夫人,我也只保得自己性命,保不得你了。

まさに夫婦は林に住む鳥で災いあればおのおの飛び立つである。夫人よ、私も自分の命を守るのみであり、そなたのは守ってやれない。

 

8.小怜が沈慎に言う

いつまで恨み合うのですか?
冤冤相報何時了啊

经撰杂譬喻 卷下

古德云:「冤冤相报何时了?」大太太、小太太不明因果,仇恨未消,因而彼此冤冤相报,生生世世承受无量苦果。

仏教故事。

9.顧湘が沈慎に言う

死ぬ間際の者は嘘などつかない
人之将死 其言也善

論語 第八 泰伯4

曾子言曰:‘鸟之将死,其鸣也哀;人之将死,其言也善。’

曽先生がみずからいわれた。鳥の死にぎわの鳴き声の、なんと哀しげなことよ、人間の死にぎわに残すことばのなんとりっぱなことよ、といいます。
貝塚茂樹論語」1973 中央公論新社

この段は君子の心がけをつづいて説いている。

 

10.顧湘が曹蔚寧について言う

どんな夫だろうと従えと言うでしょ
俗話嫁雞隨雞 嫁狗隨狗

欧陽修『代鳩婦言

人言嫁雞飛,安知嫁鳩被鳩逐。

鶏に嫁いだら鶏を追って飛ぶと人は言う、鳩に嫁いだら鳩を追うとどうして知らないであろうか。

 

11.墓前で張成嶺が言う

死者の魂は消えず
死去人一霊不昧

韓偓 『贈僧

三接旧承前席遇,一灵今用戒香熏。

韓偓(かんあく)。霊魂。

謝冰心 『<寄小読者>四版自序

感谢上帝,在我最初一灵不昧的入世之日,已予我以心灵永久的皈依和寄托。”

天に感謝します、私が最初に霊魂としてこの世に出る日には、すでに永遠に帰依し託す魂を与えてくれたことを。

『子どもの国のみなさまへ をとめの旅より』倉石武四郎訳がある。

 

12.墓前で温客行が言う

蒼天に道はなく 善悪も報われない ならばいっそ己が悪鬼となって 天に正義を問うべきだ
蒼天無道 善悪無報 既然如此 我寧願化身悪鬼 与老天討還一個公道

印象的な台詞なので挙げてみた。

 

25話感想

紅緑婆翁の夫婦愛と、顧湘の曹蔚寧への思いに涙す。

悪夢で眠れない様子の温客行を、周子舒はお酒に誘う。この円窓に映るふたりが美しい。ついに温客行までもがCMナッツをお勧めしだした。まぁお酒のおつまみに合うものね。

周子舒は趙氏の義荘で名前を呼ばれたことで縁者と思い、温客行は周子舒の流雲九宮歩、白衣剣、姓が周で正体がわかったようだ。周子舒は温客行に「お前もいつだって戻ってこられる」と言う。帰る場所があるのは嬉しいはずなのに、いまとなっては複雑な身の上の温客行……。

顧湘と曹蔚寧は、緑紅翁婆に連れられた小怜を見かけ、曹蔚寧は見捨てられないと義を取り友を救うと言う。エライぞ、腕が伴っていれば~だけど。顧湘が断剣山荘へ行くと言うが、艶鬼はいないよ~。

桃紅&緑柳黄鶴が会い、大石鎮の古廟で落ち合うはずが、黄鶴は毒蝎に追われているようだ。小怜を取引に使えず、黄鶴は妓楼へ売り飛ばすと口汚く言うが、桃紅はかばってもいる。

黄鶴が小怜に語った20年前の青崖山の戦いは、五湖盟が魔をのぞくという大義で群雄をだまし、瑠璃甲を狙い容炫を攻撃したというもの。緑柳は纏魂糸で腕をなくし、一人息子も青崖山で失ったようだ。曹蔚寧が小怜を助けようとするが、緑紅翁婆にはかなわず。黄鶴は倒された。そこへ現わる沈慎、顧湘が連れてきたようだ。沈慎は傲崍子の時と同じ登場だな。

小怜は五湖盟の真実を知り、緑紅翁婆ふたりを見逃すようにと頼む。桃紅は納得していないが、緑柳は江湖を退くと宣言。沈慎も恨みは次世代に引き継げないと剣をおさめた。この夫婦愛も伝わるものがある。

曹蔚寧に知られまいと、自分を殺すように言う顧湘の場面が泣けるのだ…。「鬼の日々を終わらせ人の道に戻り、一生を共にしたかった」。沈慎は小怜を連れて去る。群鬼冊には顧湘は載っていないらしい。


すっかり拳法を教わる気満々の張成嶺。大師匠へ挨拶に墓参りに行くことを提案。温客行はあくまで「秦荘主」と呼ぶ。あれやこれやと思いを畳みかけ墓に語りかける張成嶺。周子舒は心で思うほうが伝わると言う。

ひとり残った温客行は秦懐章に語りかける。「耐えがたい時に自分ではなく甄衍の悪夢と思ってきたが、甄衍になる幸せな夢を見ているだけと気付いた。20年復讐の念だけで谷主になり関わった者たちを殺してきたが、心の恨みは消えない。すでに地獄に落ちた後で、なぜ人への道を示すのか」と嘆く。そして「あなたがくれたひと時の光に感謝します」と話す。光と言われると、臨終詩の【天窗通冥室/ 天窓は冥室に光を通す】を思い出す。

曹蔚寧は意識を取り戻し、顧湘はふたりの相性が悪いと言うが、曹蔚寧は「私の命を君に」と返す。なんとかうまくいってほしいなぁ……。
(つづく)


記事タイトル名は、温客行が語った光にちなんで、山人たちのヘッドライトの列。深夜に登山し、山小屋には灯がともり帰ることもできる。登山者の多い山河令にはそんな風景が広がっているように思うのだ。

WOWOW放送:2021年11月4日(木)深夜

 

 

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