笛の音と琴の調べ

ドラマ「陳情令」・「魔道祖師Q」・小説/アニメ「魔道祖師」の感想や考察を綴っているブログです。「君花海棠の紅にあらず」とアニメ「天官賜福」、漢詩で「山河令」もはじめました。

漢詩で月見酒 山河令 9話,10話感想/天涯浪客,壮士行,将進酒

馬聞遠@曹蔚寧くん、生日快楽~♪

9話は漢詩的にはハイペースで息切れ……。ゼイゼイ。月が綺麗ですね。

9話 高山流

1.方不知の亡骸を前にして、温客行が周子舒に言う

誰も取らない李は渋いに決まってる
李生大路無人採摘則必苦

劉義慶『世説新語 雅量第六』
度量の広い人物の話だが、【雅量】には「酒量の多いこと」の意味もあるようだ。

竹林の七賢王戎(おうじゅう)のこと。王戎は神童の誉れ高く、周りの子供たちがたわわに実ったスモモを採る中、子供・王戎は採らずこう言ったとか。「木が道ばたにあるのに実がたくさんついている。これは苦い李に違いない」。そして実際にそうであったとか。目加田誠世説新語」2003 明治書院

 

2.方不知に用いられた暗器

雨打芭蕉

【雨打芭蕉】は中国古典文学でよく用いられる表現。芭蕉は大きな葉が特徴的。針が雨のようなイメージなんだろか?けっこう音がしそうだが。

ちなみに小説魔道祖師初回特典版の画集(琴瑟相和)に収められている絵の中に、雨打芭蕉な場面がある。

 

3.温客行が料理を持ってきて周子舒に言う

今朝 酒あれば 今朝 酔うと言うだろ
今朝有酒今朝醉

晩唐 羅隠『自遣』

得即高歌失即休 多愁多恨亦悠悠
今朝有酒今朝醉 明日愁来明日愁

意を得れば高らかにうたい、意を失すればそれでおしまい
幾多の悲痛、幾多の憤懣があろうと、心はゆったり
今日、酒があれば、今日酔いに任せ
明日、悩みが生じたら、明日悩む
川合康三「新編 中国名詩選 下」2015 岩波文庫

「自遺」は憤懣を吐き出すこととある。

 

4.温客行が張成嶺を気にかける周子舒に言う

成嶺を救ったからといって 一生守るつもりか?
救人救到底 送仏送到西

文康『児女英雄伝』

姐姐原是为安公子而来 如今自然送佛送到西

姐姐が安公子を助けるなら 仏を天竺へ送り届けることになる

「送佛送到西」は、人を助けると、最後までやり遂げなければならない、ということわざ。

主人公・十三妹は女侠で有名な人物。物語序盤の安公子は頭は良いが弱々しく、張成嶺と似ているところがある。成長が期待できそうだ。

5.温客行が周子舒を起こして言う

時を逃さず楽しむべきだ
有花堪折直須折

唐 杜秋娘『金縷衣』

劝君莫惜金缕衣 劝君惜取少年时
花开堪折直须折 莫待无花空折枝

金糸の衣など惜しむに足りない 青春の日をこそ惜しむべきだ
花が咲いて手折る頃合になったら、すぐに手折るがよい
花が散ってしまってから枝だけ折っても仕方がないでしょうに
松枝茂夫「中国名詩選 下」1986 岩波文庫

ちょっと色っぽい詩と深読みできなくもない。

6.高山流水の故事

高山流

すぐれて巧みな音楽、絶妙な演奏のたとえ。また自分を理解してくれる真の友人のたとえ。春秋・楚の伯牙と鐘子期の物語。

列子 湯問

伯牙善鼓琴 钟子期善听。伯牙鼓琴,志在高山 钟子期曰:“善哉 峨峨兮若泰山!”志在流水,钟子期曰:“善哉,洋洋兮若江河!”

伯牙は琴の演奏をよくし、鐘子期はよく聞き分けた。伯牙が高い山を思って琴を弾くと、鐘子期は「よいかな、峨々とした泰山のようだ!」と言い、川の流れを思うと、「よいかな、洋々たる長江・黄河のようだ!」と言った。

9話-漢詩13へつづく

7.悦樊楼で周子舒がつぶやく

知己に遇えば 山河も重からず
山河不足重 重在遇知己

中唐 鮑溶『壮士行』

西方太白高 壮士羞病死
心知报恩处 对酒歌易水
砂鸿嗥天末 横剑别妻子
苏武执节归 班超束书起
山河不足重 重在遇知己

西方の太白は高く
壮士が床で死ぬのは恥である
心は恩に報いるところを知りて
酒を前に易水を歌わん
砂漠の鸿嗥 辺境の地
剣を横たえ妻子と別れる
蘇武は符節を携えて帰国し
班超は文人であったが軍人になる
山河は重くはない
知己と巡り会うことが重要である

訳が見つからないので、なんとか訳してみました。
鸿嗥寺は古代中国で外国使節の接待や朝貢をつかさどったところ。
蘇武は前漢匈奴への使者で、長年抑留されるが帰順せず、帰国して官職に就く。逆境にあっても与せず符節(公式な使者を表す)を手放さなかった気概を詠じているのか。強い絆をもつ人との別れの詩も書いている。
班超は西域で活躍した武将。兄妹は漢書などを編集した班固と班昭。上奏して帰国を許された。

8.温客行が言う

天涯の浪客 ただ君と吾いれば足れり
天涯浪客 只君与吾足矣

三国志演義 21 曹操煮酒論英雄』。曹操に英雄を問われ、劉備が名を挙げていくが、曹操は各人をけちょんけちょんに評して言う。

下英雄 惟使君與操耳
今天下の英雄と言えるのは、貴殿(劉備)とわたしだけだ

温客行が英雄そのものを皮肉りながらも、周子舒に英雄を尋ねるのは、三国志の物語をなぞらえていて面白い。そして周子舒が温客行に「英雄と浪客どちらになりたい?」と問いかけ返しているのもよきよき。天下英雄を天涯浪客と言い換えており、原作小説のタイトルが『天涯客』であることを思うと、重要な語句と思われる。

 

9.屋根の上で温客行が言って酒を飲む

人生 意を得れば 歓を尽くすべし 金樽を空しく 月光にさらすなかれ
人生得意須尽歓 莫使金樽空対月

盛唐 李白『将進酒』

君不见 黄河之水天上来 奔流到海不复回
君不见 高堂明镜悲白发 朝如青丝暮成雪
人生得意须尽欢 莫使金樽空对月
天生我材必有用 千金散尽还复来(略)

見たまえ、黄河の水が天上から流れ来るのを
奔流して海に辿り着き、二度と戻ることはない
見たまえ、豪邸で鏡に映る白髪を嘆く者を
朝は黒糸のよう 夕べには雪となる
人生、思い満たされた時には、とことん喜ぼう
金の酒樽をむなしく月のもとに捨て置いてはならぬ
天がわたしに才を与えたのは使い道があるからに違いない
千金を使い果たしても金ならまた戻ってくる
川合康三「新編 中国名詩選 中」2015 岩波文庫

ひたすら酒を飲んで楽しもう、と言い連ねている詩。

10.月見酒でふたりが聞きいった挿入歌『無題

原来夢境之小 歳月潇潇 迷失了自己 若倦鳥無心 不如帰去

南宋 陶淵明『帰去来の辞』

无心以出岫 鸟倦飞而知还

無心の雲は山の洞から出て
疲れた鳥はねぐらに帰る時を心得ている
川合康三「新編 中国名詩選 上」2015 岩波文庫

ここから「倦鳥知還」という成語がある。陶淵明が県令を辞任して郷里へ帰った時の句。官人は自分の本性を損なうと帰隠し、やがて訪れる死にどう対処するかを問いかけている詩。

 

11.屋根の上から戦う様子を見て温客行が言う

天を衝く花香 岳陽に透り 満城ことどとく帯ぶ 瑠璃甲
沖天香陣透岳陽 満城尽是琉璃甲

唐末 黄巣『詠菊』『不第后賦菊』

待到秋来九月八 我花开后百花杀 
冲天香阵透长安 满城尽带黄金甲

待っていた秋が来て九月八日(重陽節前日)になり
わが菊花が咲いたら百花は絶え
天を衝くばかりに菊の香りが長安しみいり
城内は黄金の甲冑をまとった兵士でいっぱいになる

黄巣黄巣の乱を起こした人物。科挙に落ちた時に自分を遅咲きの菊にたとえた。チャン・イーモウ監督映画のタイトル名(邦題:王妃の紋章)にもなっている。温客行は偽瑠璃甲をばらまき江湖に乱を起こしたとも言える。

 

12.温客行が瑠璃甲を求めて争った亡骸を見て

天下は喜々として皆 利のために来たり 天下は入り乱れ 皆 利のために往く
天下熙熙 皆為利来 天下攘攘 皆為利往

史記巻129 列伝第69 貨殖列伝』。後段は7話で温客行が偽瑠璃甲をさげていた時に言った言葉。

 

13.四賢のひとり、杜殿が言う

我が知音は世を去った 琴など無用だ
世間再無知音 留你何用

呂史春秋 本味

鐘子期死 伯牙破琴絶絃 終身不復鼓琴

その後、鐘子期が亡くなった。すると伯牙は琴を壊し、弦を断ち切って、生涯二度と琴を演奏しなかった
鎌田正「漢文名作選6故事と語録」1999 大修館書店

知音の由来。

9話の感想

雄大会に集結する各派がまだまだ次から次へと出てくる中、温客行は遠慮なく周子舒の部屋に入ってくるし、悦樊楼同行をせがんでいる。で、結局根負けしたのね。調息する周子舒に、温客行は簫で気を送っているのかな。

安吉の四賢が風雅だなぁ、周子舒は残りの人生を「知己と江湖をさすらい無為に余生を送れたら」と思い始めて、ちょっと温客行に心許し始めたのかなぁ、月見酒しているなぁ、とほのぼのしていたら、温客行の複製品乱発を知り周子舒は去るし、安吉の四賢はえげつない展開になっているし、漢詩岩もがんがん出てくるし、9話でしばし休憩。温客行の置いてけぼりをくらった少年のような表情が印象に残る。

もう少し江湖的な人が多いと息つけるのだが、山河令では好ましい&そうでない人物も現れるやすぐに消えていき、少し気持ちの置き所(足場)が狭い思いになっている。

10話 狂気の果てまで

1.周子舒が四賢の亡骸を見ながら言う

江湖は悪に満ちており生きづらい
江湖風波悪 人間行路難

辛棄疾『鹧鸪天 送人』

唱彻阳关泪未干 功名馀事且加餐
浮天水送无穷树 带雨云埋一半山
今古恨 几千般 只应离合是悲欢?
江头未是风波恶 别有人间行路难

 

2.酔った周子舒が口ずさむ

この世に難事なし 凡庸なる人自ら騒ぐ
世上無難事 庸人自擾之

新唐書 列伝第41 陸象先伝
世上本无事 庸人自扰之

3話で温客行が周子舒と同じ意見だと言っていた時に引用した漢詩。「無事」が「難事」となっている。

 

3.周子舒が韓英に言う

時が経つのは早いものだ
如今已経去日苦多

曹操『短歌行』

对酒当歌 人生几何?
譬如朝露 去日苦多

酒を前に、さあ歌わん
人の命はいかほどもない
それはたとえば朝の露
過ぎゆきし日々の多さよ
川合康三「新編 中国名詩選 上」2015 岩波文庫

4話で温客行が周子舒に川のほとりで第一句(对酒~)を言っていた。

 

4.周子舒が温客行を評して言う

人を害するが己に益はない
老温做这損人不利己之事

魯迅『曹聚仁あて書簡』

只有损人不利己的事 我是反对的

「損人不利己」ということわざ。人に損を与えても自分の利にはならない。魯迅が西洋医学を学んでいた頃のことが綴られている。

 

5.酒をくらいながら温客行が言う

四季 花は常にあり 天下の事情を知り尽くす
四季花常在 九州事尽知

1話で静安群主や周子舒がつぶやいた言葉。

 

今回はいままで出てきた漢詩が再び出ていることが多かった。ふたりが呼応し始めた、ということなんだろか。

10話の感想

剣で墓穴を掘っている温客行(薄青衣裳)。周子舒に痛いところを突かれて、突き返す温客行。ショックだったのね。

周子舒は悦樊楼で「知己と思っていたのに」と呟いており、そう思っていたのか!ここで流れたのは挿入歌『孤夢』。

そしてふたりのヤケ酒場面では、周子舒は温客行に言われた漢詩を復唱しているのがなんだか雅。「地獄が空かずば」を介して、地獄の道行きを共にしているふたりが切ない。温客行が言っていた「あるものを願って手に入れたが無くしてしまった。見つからないと思っていたが何年も後になり再び現れた。だが時が移ろいそれをもはや得られない」がふたりの鍵か。

忠義モノ・韓英くんの健気さも救いだ。荘主の願い通り、最後まで生き抜いてね。死なないでね。

高小怜が好きだったのは、大師兄・鄧寛(杨万里)だったのか。

顧湘の流しへのリクエスト曲名「出会えた喜び」に自分に気があるのかと思っている曹尉寧くん、いや顧湘はそういうキャラではなさそうです。なごみは顧湘と曹尉寧。ワタシの気分も顧湘に再会した張成嶺のようである。

情にもろい顧湘がほのめかすけれど、温客行は本領発揮している。無心紫煞という名前なのか。温客行に異常かと聞かれて頷く正直な所もカワイイ。殺されて幽鬼になっても付き従うと言うコチラも健気な侍女だ。

そして召集を受けた鬼谷の鬼たち。温客行の書いたシナリオではないだけで、鏡湖派襲撃や西域の雑技は本当に鬼谷も噛んでいた仕業だったのか~~。圧倒的な弱肉強食でねじ伏せる緑衣裳の谷主・温客行。修羅の道を歩んできたんだな。

 

WOWOW放送:2021年9月9日深夜

 

 

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