29話感想・阿苑と
夷陵。阿苑が竹トンボを飛ばし、すっかり含光君になついている。「乳があれば母親で、銭があれば父親ってか?」と言う魏嬰。嬉しそうに粥を食べる阿苑は、含光君の教えにもすぐに従い、子供にも伝わる含光君の威厳……。魏嬰の「俺に会いに来たとか」に対して、阿苑が目線を向けるのが察しが良さげでいいな。
外の出来事を尋ねると、藍湛は蘭陵金氏と雲夢江氏の半月後の婚姻を伝える。「師姉が嫁ぐならこの世で一番の相手でないと」と熱弁する魏嬰、うんうんそうだよね。この時の藍湛の「うん」がいいのだ。
呪符が反応、乱葬崗で異変が生じたようだ。藍湛がお代を支払い、買ってあげたおもちゃを持ち、御剣の術で乱葬崗へ。と思われる。妙に母親みのある魏嬰……。
温寧復活・伏魔洞へ
伏魔洞(ふくま)前では黒いものが飛び交っていた。温寧がお札を付けたまま暴れている。はね飛ばされる魏嬰を受け止める藍湛。藍湛は崖の上に立って琴をかき鳴らし、魏嬰は術をすちゃすちゃ繰り出し、ふたりの共同作業で温寧が心と瞳を取りもどす。泣いて喜ぶ温情。温寧は泣きたいけれど涙が出ないと言う。
自分の部屋である伏魔洞へ藍湛を招待。江澄の時は散らかりまくりだったけれど、藍忘機の時には小綺麗な様子の対比感が面白い。「陰気が強い」「制御できるか」と案じる藍湛。咳き込む魏嬰を心配するが、はねのけられシュンとする含光君がカワイイ……。
温情があらわれ魏嬰の肩を叩くと、藍湛に倒れ込む。温情の針に魏嬰がすぐさま起き上がると、「ちぇっ」と思ったかのように腕を戻す含光君……。温寧が茶葉がなく水を出すと、「今度客が来た時は…」と思わず口走る魏嬰。
雪が積もっているのか寒そうな乱葬崗。魏嬰はお礼を言い「是非の尺度は己にあり、評価を他者に委ね損得にこだわらず」と。
すると阿苑が藍忘機の脚にすがりつき引き止める。阿苑は藍忘機のことを「お金持ちお兄ちゃん/有銭哥哥」呼び。「みんなが輝かしい道を歩もうと、俺は険しい道を突き進むのみ/熙熙攘攘阳关道,我偏要一条独木桥走到黑」最後の「ヘイッ」の言い方が好き。それを聞いて立ち去る藍忘機。
伏魔洞での宴会
伏魔洞に戻ると灯籠が灯っており、皆が集い肉まで用意されている。果実酒を味わい喜ぶ魏嬰。料理係は温寧で「墨のお兄ちゃん/黑炭哥哥」と言われている。温情と温寧の様子に、師姉を思い出す。
ほっぺを赤くさせ酔っている魏嬰がカワイイ。皆は酔いつぶれている。「この名を後世に残すより、今ここに美酒を味わわん」と。温情に飲みすぎを注意され、雲深不知処じゃあるまいしと言い、藍湛と出会った時のことを唐突に話し出す魏嬰、それはノロケなんでしょうか。藍湛の仏頂面を見せたかったって、温情はむしろそんな表情しか知らないと思うよ。「姑蘇の天子笑を飲む機会はあるのか、師姉の婚礼」との言葉に、温情の手も止まる。
雪の中、跪く藍忘機
雪景色の雲深不知処。藍忘機が戒尺を手にして跪いている。『忘羨』♪ 雪が降り鳥の姿に一昼夜経つ。「松風水月」は雅室。扉が開き子弟が出てきて「藍先生が下がれと」と伝えられると、藍忘機は立ち上がり戻っていく。一切説明されず空撮のショットで語られるこの場面、とても印象深く美しい。
偽の弟子あらわる
夷陵茶楼。夷陵老祖や温寧・鬼将軍の噂がされている。夷陵老祖は風邪盤や明火符を作り出したようだ。ついに偽・夷陵老祖門下首席の弟子が偽明火符を売る輩まで現われた。偽子弟は皆、赤いリボンに黒衣装なのがお約束のようだ。
そこへ温寧の引く台車に乗り、笛をくるくるさせ葉っぱをくわえる本物の夷陵老祖あらわる。乱葬崗入り口には、お供え物のように食べ物が置かれている。
怖い顔をした夷陵老祖の姿絵に「偽者」「不細工」と赤字で書きこまれている。魏無羨は楽しげに風邪盤を作っており、爆発も。大根も収穫の実りを迎えている。温寧を呼ぶと、温寧タクシーはすぐに参上。
(つづく)
WeTV特別版ではこの伏魔洞での魏嬰と、雲深不知処の藍湛が対になって編集されており、離れてもお互いの事を思っているのだと実感できた。ふたりの心情が重なり素敵な編集。「陳情令」Blu-ray第2巻の特典DVDに「酒と雪」として収録されている。大好きな回。
陳情令吹替版29話感想
かわいい3人のやり取り。藍湛の表情が雄弁だ。木村魏嬰の言う「江殿」って切ないわ……婚礼への思いもこもっている。
孤独だった魏無羨が、温氏の人達とも交流を持ち始めたのはこの頃なのか。
雲深不知処の「松風水月」前で跪く藍忘機の両脇にあるのは松なのかな。松と言うと常緑樹で、雪の中でも不変なイメージがある。
ドラマと小説・アニメとの違い
原作小説『魔道祖師』第3巻 第17章漢広
アニメ『魔道祖師』羨雲編第6話
雪降る雲深不知処で跪く藍忘機は陳情令オリジナル。原作ではこのあとの場面で、罰を受け跪いたと第4巻第21章にはある。
夷陵老祖への供え物や弟子入り志望は原作にあるが、パチモノはドラマオリジナル。ちょっと人気が出ると海賊版が続出するのを思わせる描写である。
<陳情令用語メモ>
・この名を後世に残すより、今ここに美酒を味わわん:使我徒有身后名、不如即時一杯酒。魏無羨キャラソン『曲尽陳情』の歌詞にもある。
『世説新語 第二十三 任誕 二十』
张季鹰纵任不拘,时人号为“江东步兵”。或谓之曰:“乡乃可纵适一时,独不为身后名邪?”答曰:“使我有身后名,不如即时一杯酒!”文士传曰:“翰任性自适,无求当世,时人贵其旷达。”張李鷹(張翰)は自由気ままに生き、世事にかかわらなかった。当時の人は、彼を「江東の歩兵(阮籍)」と呼んだ。ある人が彼に向かって言った。「きみはこのひとときを自由に楽しむのもいいが、死後の名声を思わないのか」答えて言った。「死後の名声を得ることなぞ、今このときの一杯の酒に及ばないさ」
井波律子「世説新語4」2014 平凡社
張李鷹(張翰)は呉の滅亡後、西晋の斉王冏に仕えていたが、江南のスープとなますが恋しいと言って辞任し帰郷、すると斉王冏が殺される事件が起き、危険を回避したという逸話(識鑒篇十)がある。
江南のスープというのが興味深く、どうやら【菰菜羹】で菰菜は茭白、マコモの新芽のスープのようである。
また張翰には、好んで琴を弾いていた顧栄という友がいた。これが鼓琴之悲(こきんのかなしみ)という親友の死に関する四字熟語の出典となっている。
『世説新語』の任誕と言えば、第10話の場面が思い出されるので、そちらもどうぞ。
・明火符:陰風でも消えない。
▼3:03辺りに「この名を後世に残すより~♪」
WOWOW字幕版放送:2020年5月7日(木)深夜
WOWOW吹替版放送:2022年7月21日(木)深夜
▼吹替版第1~12話まで感想
▼第3回のバーベキューで炭のお兄ちゃんしていた于斌。
外部サイト
▼吹替版のみならず中国語字幕も!
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▼幻の短編「漂舶」掲載。
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▼「メインストリート」が「輝かしい道」に思える歌詞。